1 / 208
第1章
第1話 そうですか。ではさようなら
しおりを挟む
「つまり、王族から追放ということですか」
「誰もそんなことは言っておらんだろう!?」
「分かりました。では出ていきます。今までお世話になりました」
「ちょ、ちょっと待ちなさい!」
きびすを返したわたしに、お父様が慌てて声を掛けてきます。
ですがわたしは無視をして、お父様の執務室を出て行こうとしましたが、お父様の側近に行く手を阻まれてしまいました。
わたしは仕方なく振り返ると言いました。
「今さらなんのご用でしょう? わたしはすでに勘当された身だというのに」
「だから、追放とか勘当とか言ってないだろう!? なぜそうなるのだ!」
「わたしにとっては言われたも同然ですが?」
「ぜんぜん違う! わしは『ちょっと外の世界を見てきなさい』と言っただけだろうが!」
「カルヴァン王国第一王位継承者にして王家唯一の嫡女であり、おまけに超絶天才美少女であるわたしが──」
「いやお前、自分で超絶天才美少女とか」
「──そ・ん・な・わたしが、外の世界を見る必要などありません。ゆえに王族追放だと判断したわけですが?」
「ほんと……そういうところなんだよ、まぢで……」
お父様は盛大にため息をついてから言ってきました。
「確かに、お前が文武両道の天才だということは認める」
「美少女をお忘れですよ?」
「いやだから……そういうことを自分でいうものじゃないんだよ……」
「謙虚とは、行きすぎると嫌みになるものです」
「そういう話をしたいのではない! とにかく、お前が天才なのは認めるが、だからこそなのだ」
「と、言いますと?」
「お前は……天才であるがゆえに、臣民は元より王侯貴族の感情というものがまるで分かっておらぬ」
「そうですか。ではさようなら」
「おい待たぬか!?」
わたしは再び退室しようとしたのですが、やはり執務室の扉は閉ざされたまま。側近が三人も、両開き扉の前で立ちはだかります。
彼らを蹴散らして出ていってもよかったのですが、王族追放された身では誰も庇ってくれないでしょう。そうなると、追っ手を巻くのがいささか面倒ですね。
冷静なわたしはそう判断すると、やむを得ず、再びお父様と対峙しました。
「お父様は、いったい何をおっしゃりたいのです?」
「いや……もうぶっちゃけるよ……」
お父様は、なぜか疲れ果てた感じで言ってきます。疲れているのはわたしのほうだというのに、優しいわたしは文句一つ言わずに耳を傾けました。
「お前、人の気持ちがぜんぜん分かってないから、王宮を出て見聞を広めてこい」
「それで?」
「え……?」
わたしの問いに、しかしお父様は言葉を詰まらせます。
仕方なく、わたしはため息交じりに補足しました。
「つまり結論としては、わたしがこの王宮から出て行くことに変わりないわけでしょう?」
「ま、まぁ……そうだが……」
「だからお世話になりました、と言ったのですが?」
「いやだからその物言いでは、お前はもう二度と帰って来ないかのような──」
「ええ、二度と帰ってくるつもりはありませんよ? 勘当の上、王族追放なのですから」
「な、なぁ……もしかして、怒ってる?」
「何をおっしゃってるのです? 人の気持ちが分からず無神経でデリカシーのないKY娘と罵られたくらいで、わたしが怒るとでも?」
「怒ってるよねそれ! しかもそこまで言ってないが!?」
「というわけでお父様。これまでお世話になりました。もう二度とお会いすることもないでしょうけれどもお元気で」
そうしてわたしは三度きびすを返すと、通せんぼしていた側近に睨みをきかせます。
さすがに三度目の顔は持ち合わせていないですよ? という気迫を放つと、側近達は青ざめて道を空けました。
「お、おい! 待つんだ!!」
背後からお父様……いえ、かつてお父様だった国王が声を掛けてきますが、わたしは無視を決め込み執務室を出ます。
こうしてこの日──カルヴァン王国第一王女として国のために尽力してきたわたしは、理不尽にも王族追放されたのでした。
超絶天才美少女であるわたしを追放したことにより、元父親は、有史以来もっとも無能な駄王として、後世に語り継がれることになるのでしょうが、それはまた別のお話なのです。
「誰もそんなことは言っておらんだろう!?」
「分かりました。では出ていきます。今までお世話になりました」
「ちょ、ちょっと待ちなさい!」
きびすを返したわたしに、お父様が慌てて声を掛けてきます。
ですがわたしは無視をして、お父様の執務室を出て行こうとしましたが、お父様の側近に行く手を阻まれてしまいました。
わたしは仕方なく振り返ると言いました。
「今さらなんのご用でしょう? わたしはすでに勘当された身だというのに」
「だから、追放とか勘当とか言ってないだろう!? なぜそうなるのだ!」
「わたしにとっては言われたも同然ですが?」
「ぜんぜん違う! わしは『ちょっと外の世界を見てきなさい』と言っただけだろうが!」
「カルヴァン王国第一王位継承者にして王家唯一の嫡女であり、おまけに超絶天才美少女であるわたしが──」
「いやお前、自分で超絶天才美少女とか」
「──そ・ん・な・わたしが、外の世界を見る必要などありません。ゆえに王族追放だと判断したわけですが?」
「ほんと……そういうところなんだよ、まぢで……」
お父様は盛大にため息をついてから言ってきました。
「確かに、お前が文武両道の天才だということは認める」
「美少女をお忘れですよ?」
「いやだから……そういうことを自分でいうものじゃないんだよ……」
「謙虚とは、行きすぎると嫌みになるものです」
「そういう話をしたいのではない! とにかく、お前が天才なのは認めるが、だからこそなのだ」
「と、言いますと?」
「お前は……天才であるがゆえに、臣民は元より王侯貴族の感情というものがまるで分かっておらぬ」
「そうですか。ではさようなら」
「おい待たぬか!?」
わたしは再び退室しようとしたのですが、やはり執務室の扉は閉ざされたまま。側近が三人も、両開き扉の前で立ちはだかります。
彼らを蹴散らして出ていってもよかったのですが、王族追放された身では誰も庇ってくれないでしょう。そうなると、追っ手を巻くのがいささか面倒ですね。
冷静なわたしはそう判断すると、やむを得ず、再びお父様と対峙しました。
「お父様は、いったい何をおっしゃりたいのです?」
「いや……もうぶっちゃけるよ……」
お父様は、なぜか疲れ果てた感じで言ってきます。疲れているのはわたしのほうだというのに、優しいわたしは文句一つ言わずに耳を傾けました。
「お前、人の気持ちがぜんぜん分かってないから、王宮を出て見聞を広めてこい」
「それで?」
「え……?」
わたしの問いに、しかしお父様は言葉を詰まらせます。
仕方なく、わたしはため息交じりに補足しました。
「つまり結論としては、わたしがこの王宮から出て行くことに変わりないわけでしょう?」
「ま、まぁ……そうだが……」
「だからお世話になりました、と言ったのですが?」
「いやだからその物言いでは、お前はもう二度と帰って来ないかのような──」
「ええ、二度と帰ってくるつもりはありませんよ? 勘当の上、王族追放なのですから」
「な、なぁ……もしかして、怒ってる?」
「何をおっしゃってるのです? 人の気持ちが分からず無神経でデリカシーのないKY娘と罵られたくらいで、わたしが怒るとでも?」
「怒ってるよねそれ! しかもそこまで言ってないが!?」
「というわけでお父様。これまでお世話になりました。もう二度とお会いすることもないでしょうけれどもお元気で」
そうしてわたしは三度きびすを返すと、通せんぼしていた側近に睨みをきかせます。
さすがに三度目の顔は持ち合わせていないですよ? という気迫を放つと、側近達は青ざめて道を空けました。
「お、おい! 待つんだ!!」
背後からお父様……いえ、かつてお父様だった国王が声を掛けてきますが、わたしは無視を決め込み執務室を出ます。
こうしてこの日──カルヴァン王国第一王女として国のために尽力してきたわたしは、理不尽にも王族追放されたのでした。
超絶天才美少女であるわたしを追放したことにより、元父親は、有史以来もっとも無能な駄王として、後世に語り継がれることになるのでしょうが、それはまた別のお話なのです。
3
お気に入りに追加
368
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜
むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。
幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。
そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。
故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。
自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。
だが、エアルは知らない。
ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。
遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。
これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる