炎の国の王の花

明樹

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ハオランが消えてから半年が過ぎた。彼は未だ戻ってこない。でも俺は諦めていない。三日に一度にはなったけど、今も変わらずハオランを捜しに森へ行ってる。



「カエン様、今日は俺も行きます」

厩舎からオルタナを連れ出して門に向かっているとリオが追いかけてきた。
俺は足を止めてリオが追いつくのを待つ。

「いいのか?二日後に水の国の王子が来る。その準備で忙しいだろうに」
「大丈夫です!もう準備は終えましたから」
「へぇ、リオにしては早いね」
「聞き捨てなりませんねぇ。俺はいつもこんなんですよっ」
「…まあそういうことにしておこう」
「あっ、待って待って…っ」

まだ話を続けようとするリオを置いて、先を行く。
リオが慌てて俺の隣に並び、眩しそうに見てくる。

「なに?」
「いえ、髪が伸びましたね。陽の光に反射してとても美しいですよ」
「そうかなぁ。風の国や月の国の王のような金髪や銀髪の方がきれいだと思うよ」

俺の言葉を聞いて、リオが渋い顔をする。
風と月の国のことを、リオはよく思っていない。
昔に母さまが、風の国の王子と月の国の王に拐われそうになったり拐われたりしたからだ。

「あの国の全ての人がそうとは限りませんが性格が悪い。髪が美しいからといって騙されてはなりません」
「ははっ!それでいえば、リオが言う美しい黒髪の俺も性格が悪いことになるけど?」
「カエン様やカナデは別格です。ハオランは…少し悪い…と思う」
「おい、ハオランの悪口を言うな」
「すいません…」

リオは正直だ。リオに注意をしたけど、俺も話を聞いてから風の国と月の国のことをよくは思っていない。それにハオランと出会った時は、悪いやつだと思っていたし。ハオランを知れば知るほど、最初の印象は消えて惹かれてしまったのだけど。
俺は頭を下げる門番に手を上げて門をくぐりオルタナに乗る。ゆっくりと進みながら「そういえば」と後ろを振り返る。

「水の国のアレン王子って、子供の頃に一度会ったっきりだけど、どんな人?」
「はあ…、噂ではレオナルト王に似てたいそうな美少年らしいですよ」
「ふーん、確かにレオナルト王はきれいだったね。でも父さまとよく揉めてたような…」
「あー…、カナデを取り合ってましたからね」
「母さまは本当にモテてたんだね」
「尊い黒髪をしてましたから。あなたもですよ、カエン様」
「でも俺は母さまみたいにモテないよ」
「何をおっしゃる。あなたの妃の座を国中の貴族のご令嬢が狙ってますよ」
「え?そうなの?初めて聞いた…」
「ふふっ、でもカエン様はハオランが帰ってくるのを待ってる…。ご令嬢方は残念でしたね」
「そうだな。俺の気持ちは変わらない」

俺はハオランの顔を思い浮かべる。
今日こそは手掛りが見つかってほしいと願いながら。
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