炎の国の王の花

明樹

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ハオランが話した内容は、真実かどうかはわからない。本当のことは、ハオランしか知らないのだから。
でも俺は、ハオランを信じたい。出会いは最悪だったけど、どちらかというとハオランは、善人だと思う。

ハオランが説明した街を燃やした理由とは…。

自分が誰かもなぜこんな所にいるのかもわからずに、ふらふらと歩いていた。
森を抜けると街に着いた。誰かに会えば何かわかるかもと歩いていると、何人かが話しかけてきた。
話しかけてきた人は、自分のことを「王様だ」と言った。
「そうか…俺は王様なんだ」と納得しかけていると、また別の人が「王様じゃない」と言う。

「同じ黒髪だけど、王様はもっと綺麗だった。俺は即位式の時に拝顔したんだ」

そう自慢げに話すのを聞いて、周りに集まった人も頷いていた。

なんだ…違うのか。なら俺は誰なんだ?

俺は気落ちして溜息を吐いた。その時、嫌な気配を感じて身体に悪寒が走った。
嫌な気配を感じた方を見ると、すぐ傍の家の壁に、もやっとした白い模様が浮かび上がった。
俺は、それが何かわからなかったけど、本能でとても良くないものだということがわかった。
何も考えられず、咄嗟に手を突き出した。
すると、俺の手から炎が出たんだ。
俺は驚いた。自分にこんな力があったことも忘れていた。
一度炎を出すと、要領がわかった。
俺が炎を出したことで、周りにいた人達が逃げた。でもその方がいい。白い模様も怪しいし、俺の炎も危ない。
家に火をつけてしまったことを申し訳ないと思いながらまた歩く。
白い模様は、まるで俺を追いかけているかのように、先々に現れる。その都度、俺は白い模様を炎で燃やした。
そのせいで街を燃やしてしまった。怪しい白い模様を消すことに夢中で、大変なことをしてしまった。
どうすればよいかわからなくなって、俺は森に隠れた。
その時に、俺と同じ黒髪の、この国の王様のカエンに会ったんだ。



俺は、黙ってハオランの話を最後まで聞いた。話し終わった後も、しばらく無言でハオランを見ていた。
ハオランは、俺の視線に耐えきれずに俯いた。
街を燃やしたハオランには、必ず償ってもらう。
でも話の中に出てきた白い模様が何なのか、とても気になる。
俺は、ようやく静かに口を開いた。

「その白い模様…、思い出した今なら何かわかる?」
「うん…。あれは、俺を殺そうとした、義母の一族の…毒霧だ」

ハオランが顔を上げて、まっすぐに俺を見た。



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