383 / 432
21
しおりを挟む
俺は、もう一度男の腕を掴むと「馬に乗れ」と言う。
男は「嫌だ」と言い、いきなり俺の身体に火をつけた。
俺は、瞬時に全身から大きな炎を出して、炎で炎を消す。
男が感嘆の声を上げながら、次々と炎を飛ばしてくる。
俺は全ての炎を弾き飛ばすが、男の炎はかなり威力が強くて、防ぐのが面倒だ。
「わあっ!君すごいよっ!」
男が楽しそうに、ひっきりなしに炎を飛ばしてくる。
このままじゃあ埒が明かないと、俺は黄色い炎を掌に出した。
「え?なにそれっ。なんでそんな色してるのっ?」
俺は、無言で炎を男の足元に投げた。
男の足元の地面が崩れ、大きな穴が開く。
「うわあっ!」
男の身体が穴に落ちる。人の背丈ほどの深さの穴の底に尻もちをついて、男が「痛い…」と情けない声を出した。
「観念したか?諦めて大人しくついてこい」
「君…本当にすごいね!さすが王様だ。わかったよ。行くからここから出るの手伝って」
男が服についた土を払いながら立ち上がり、手を伸ばす。
俺がその手を掴もうと屈んだ瞬間、強く手を引かれて穴に落ちた。
「ぐっ…!何するんだっ!」
「えー?これでお互い様だろ?俺だけ落ちて君が落ちないのは不公平じゃん」
「おまえ…っ」
「それと、さすがにこの距離じゃ避けれないよね?」
「はっ?」
男が、膝をついた状態の俺の胸に手を当てて、炎を出した。
男の言う通り、この距離では防げない。
まずい!と俺は身体を硬直させた。その瞬間、穴の中にバチバチと嫌な音が響き渡り、男の動きが止まった。
「え…なにそれ…すごい!てか痛いっ!」
俺の身体から、無数の黒い雷が出ている。黒い雷が、男の腕を突き刺している。
男が慌てて俺から離れ、穴の端に逃げた。
「え?君、雷も出せるの?すごい!刺された腕が痛いし痺れてる!」
俺は、男を見て苦笑いをする。
やられて嬉しそうに興奮している奴を、初めて見た。本当に変な奴だ。
でも…それよりも……俺が…変だ。
まだ身体の周りでバチバチと鳴っている黒い雷を、収められない。
そして…なんだ?この嫌な気持ちは…。
俺の中に、嫌な感情が湧き上がってくる。
いらないものは排除しろ。ついてくるものだけを従えろ。おまえは最強だ。おまえは優れている。世界はおまえのものだ。
「ああっ!うるさいっ!」
「え?なに、どうしたの?俺なんか言った?」
男が何かを言っている。
違う、おまえじゃない。俺の中から声が聞こえる。俺の中がドス黒く染まっていく。
固く目を閉じて唇を噛んでいると、ようやく黒い雷が消えた。でもまだ嫌な感情が残っており、俺は胸を押さえて、うずくまる。
俺の背中に、そっと手が当てられた。
「ねえ…大丈夫?」
汗で濡れた顔を上げると、男が心配そうに俺を覗き込んでいる。
つい先程まで俺を殺そうとしてたくせに、なんでそんな顔が出来るんだ?
俺は可笑しくなって、表情を弛めて「変な奴…」と呟いた。
男は「嫌だ」と言い、いきなり俺の身体に火をつけた。
俺は、瞬時に全身から大きな炎を出して、炎で炎を消す。
男が感嘆の声を上げながら、次々と炎を飛ばしてくる。
俺は全ての炎を弾き飛ばすが、男の炎はかなり威力が強くて、防ぐのが面倒だ。
「わあっ!君すごいよっ!」
男が楽しそうに、ひっきりなしに炎を飛ばしてくる。
このままじゃあ埒が明かないと、俺は黄色い炎を掌に出した。
「え?なにそれっ。なんでそんな色してるのっ?」
俺は、無言で炎を男の足元に投げた。
男の足元の地面が崩れ、大きな穴が開く。
「うわあっ!」
男の身体が穴に落ちる。人の背丈ほどの深さの穴の底に尻もちをついて、男が「痛い…」と情けない声を出した。
「観念したか?諦めて大人しくついてこい」
「君…本当にすごいね!さすが王様だ。わかったよ。行くからここから出るの手伝って」
男が服についた土を払いながら立ち上がり、手を伸ばす。
俺がその手を掴もうと屈んだ瞬間、強く手を引かれて穴に落ちた。
「ぐっ…!何するんだっ!」
「えー?これでお互い様だろ?俺だけ落ちて君が落ちないのは不公平じゃん」
「おまえ…っ」
「それと、さすがにこの距離じゃ避けれないよね?」
「はっ?」
男が、膝をついた状態の俺の胸に手を当てて、炎を出した。
男の言う通り、この距離では防げない。
まずい!と俺は身体を硬直させた。その瞬間、穴の中にバチバチと嫌な音が響き渡り、男の動きが止まった。
「え…なにそれ…すごい!てか痛いっ!」
俺の身体から、無数の黒い雷が出ている。黒い雷が、男の腕を突き刺している。
男が慌てて俺から離れ、穴の端に逃げた。
「え?君、雷も出せるの?すごい!刺された腕が痛いし痺れてる!」
俺は、男を見て苦笑いをする。
やられて嬉しそうに興奮している奴を、初めて見た。本当に変な奴だ。
でも…それよりも……俺が…変だ。
まだ身体の周りでバチバチと鳴っている黒い雷を、収められない。
そして…なんだ?この嫌な気持ちは…。
俺の中に、嫌な感情が湧き上がってくる。
いらないものは排除しろ。ついてくるものだけを従えろ。おまえは最強だ。おまえは優れている。世界はおまえのものだ。
「ああっ!うるさいっ!」
「え?なに、どうしたの?俺なんか言った?」
男が何かを言っている。
違う、おまえじゃない。俺の中から声が聞こえる。俺の中がドス黒く染まっていく。
固く目を閉じて唇を噛んでいると、ようやく黒い雷が消えた。でもまだ嫌な感情が残っており、俺は胸を押さえて、うずくまる。
俺の背中に、そっと手が当てられた。
「ねえ…大丈夫?」
汗で濡れた顔を上げると、男が心配そうに俺を覗き込んでいる。
つい先程まで俺を殺そうとしてたくせに、なんでそんな顔が出来るんだ?
俺は可笑しくなって、表情を弛めて「変な奴…」と呟いた。
0
お気に入りに追加
1,656
あなたにおすすめの小説
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!
をち。
BL
公爵家の3男として生まれた俺は、家族からうとまれていた。
母が俺を産んだせいで命を落としたからだそうだ。
生を受けた俺を待っていたのは、精神的な虐待。
最低限の食事や世話のみで、物置のような部屋に放置されていた。
だれでもいいから、
暖かな目で、優しい声で俺に話しかけて欲しい。
ただそれだけを願って毎日を過ごした。
そして言葉が分かるようになって、遂に自分の状況を理解してしまった。
(ぼくはかあさまをころしてうまれた。
だから、みんなぼくのことがきらい。
ぼくがあいされることはないんだ)
わずかに縋っていた希望が打ち砕かれ、絶望した。
そしてそんな俺を救うため、前世の俺「須藤卓也」の記憶が蘇ったんだ。
「いやいや、サフィが悪いんじゃなくね?」
公爵や兄たちが後悔した時にはもう遅い。
俺には新たな家族ができた。俺の叔父ゲイルだ。優しくてかっこいい最高のお父様!
俺は血のつながった家族を捨て、新たな家族と幸せになる!
★注意★
ご都合主義。基本的にチート溺愛です。ざまぁは軽め。
ひたすら主人公かわいいです。苦手な方はそっ閉じを!
感想などコメント頂ければ作者モチベが上がりますw
愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
俺が総愛される運命って誰得ですか?
もふもふ
BL
俺が目覚めた時そこは、武器庫だった。あれ?ここどこだ?と思いつつドアを開けると...そこには見たことも無い光景があった。
無自覚主人公とイケメン騎士達の物語
※はR18要素含みます
【注】不定期更新です!
転生先のぽっちゃり王子はただいま謹慎中につき各位ご配慮ねがいます!
梅村香子
BL
バカ王子の名をほしいままにしていたロベルティア王国のぽっちゃり王子テオドール。
あまりのわがままぶりに父王にとうとう激怒され、城の裏手にある館で謹慎していたある日。
突然、全く違う世界の日本人の記憶が自身の中に現れてしまった。
何が何だか分からないけど、どうやらそれは前世の自分の記憶のようで……?
人格も二人分が混ざり合い、不思議な現象に戸惑うも、一つだけ確かなことがある。
僕って最低最悪な王子じゃん!?
このままだと、破滅的未来しか残ってないし!
心を入れ替えてダイエットに勉強にと忙しい王子に、何やらきな臭い陰謀の影が見えはじめ――!?
これはもう、謹慎前にののしりまくって拒絶した専属護衛騎士に守ってもらうしかないじゃない!?
前世の記憶がよみがえった横暴王子の危機一髪な人生やりなおしストーリー!
騎士×王子の王道カップリングでお送りします。
第9回BL小説大賞の奨励賞をいただきました。
本当にありがとうございます!!
※本作に20歳未満の飲酒シーンが含まれます。作中の世界では飲酒可能年齢であるという設定で描写しております。実際の20歳未満による飲酒を推奨・容認する意図は全くありません。
公爵家の五男坊はあきらめない
三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。
生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。
冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。
負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。
「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」
都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。
知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。
生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。
あきらめたら待つのは死のみ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる