283 / 432
番外編 角ぐむ
しおりを挟む
「つまんない」
俺はそう呟いて、長い廊下をとぼとぼと歩いた。
俺は、この炎の国エンの王子だ。
そしてこの国の一番偉い人が、俺の父さまだ。
誰もが父さまに会うと、身体を固くして頭を下げる。
だって王様の父さまは、身体が大きくて怖くて、燃えるような赤い髪できれいな顔をして、ほんとうにかっこいいんだ。
俺は父さまのようになりたい。
だけど俺が似ているのは緑の目と顔だけで、後は母さまに似ている。
俺は、自分の髪の毛を引っぱって、また「つまんない」と呟いた。
母さまもきれいだけど、男なのに小柄で色白で、まるで女の人みたいだ。
そしてめずらしい黒い髪をしている。
その母さまに似て、俺も髪が黒い。
父さまやリオは、「黒はとても尊い色だ。その尊い黒を受け継いだことを誇りに思え」といつも言う。
だけど俺は、こんな地味な黒よりは、父さまのような明るい赤がよかったんだ。
いつも考えてることをまた考えて、ただでさえ面白くなかった気持ちが、もっといやなものになる。
俺はリオの部屋の前で足を止めて、少しは練習の相手になるリオに魔法を見てもらおうと、部屋の扉を開けた。
「リオー!いるー?」
中に入りながら声をかける。
だけど返事がない。それもそのはず、部屋には誰もいない。
「なんだよう、遊んでもらおうと思ったのにっ。もしかしてうんこ?」
部屋を走って横切り、トイレのドアを開ける。
でも誰もいなくて、部屋の中のドアというドアを全部開けたけど、リオはいなかった。
「もうっ、つまんないっ」
俺は、これでもかというくらい、ほっぺをふくらませて怒った。
そしてふと、机の上に大きくて丸いパンがあることに気づいた。
俺は、面白くない気持ちをてのひらに込めて、パンに向かって力を飛ばした。
俺のてのひらから赤い玉が出て、見えない速さでパンに向かって飛んだ。
瞬きをして目を開けると、パンが真っ黒に焦げて、細く白い煙が出ていた。
「こんなんじゃあ、すっきりしない」
またほっぺをふくらませて部屋を出ようとすると、ちょうど戻って来たリオとぶつかった。
「いたっ」
「うおっ!あっ、カエン様。俺に用事ですか?」
「つまんないからもういい」
「はあ…、あっ!おっ、おっ、俺のっ、パンがあ…っ!まさかカエン様っ!」
「知らないっ!」
リオが伸ばした手をすり抜けて、俺は思いっきり走った。
俺はそう呟いて、長い廊下をとぼとぼと歩いた。
俺は、この炎の国エンの王子だ。
そしてこの国の一番偉い人が、俺の父さまだ。
誰もが父さまに会うと、身体を固くして頭を下げる。
だって王様の父さまは、身体が大きくて怖くて、燃えるような赤い髪できれいな顔をして、ほんとうにかっこいいんだ。
俺は父さまのようになりたい。
だけど俺が似ているのは緑の目と顔だけで、後は母さまに似ている。
俺は、自分の髪の毛を引っぱって、また「つまんない」と呟いた。
母さまもきれいだけど、男なのに小柄で色白で、まるで女の人みたいだ。
そしてめずらしい黒い髪をしている。
その母さまに似て、俺も髪が黒い。
父さまやリオは、「黒はとても尊い色だ。その尊い黒を受け継いだことを誇りに思え」といつも言う。
だけど俺は、こんな地味な黒よりは、父さまのような明るい赤がよかったんだ。
いつも考えてることをまた考えて、ただでさえ面白くなかった気持ちが、もっといやなものになる。
俺はリオの部屋の前で足を止めて、少しは練習の相手になるリオに魔法を見てもらおうと、部屋の扉を開けた。
「リオー!いるー?」
中に入りながら声をかける。
だけど返事がない。それもそのはず、部屋には誰もいない。
「なんだよう、遊んでもらおうと思ったのにっ。もしかしてうんこ?」
部屋を走って横切り、トイレのドアを開ける。
でも誰もいなくて、部屋の中のドアというドアを全部開けたけど、リオはいなかった。
「もうっ、つまんないっ」
俺は、これでもかというくらい、ほっぺをふくらませて怒った。
そしてふと、机の上に大きくて丸いパンがあることに気づいた。
俺は、面白くない気持ちをてのひらに込めて、パンに向かって力を飛ばした。
俺のてのひらから赤い玉が出て、見えない速さでパンに向かって飛んだ。
瞬きをして目を開けると、パンが真っ黒に焦げて、細く白い煙が出ていた。
「こんなんじゃあ、すっきりしない」
またほっぺをふくらませて部屋を出ようとすると、ちょうど戻って来たリオとぶつかった。
「いたっ」
「うおっ!あっ、カエン様。俺に用事ですか?」
「つまんないからもういい」
「はあ…、あっ!おっ、おっ、俺のっ、パンがあ…っ!まさかカエン様っ!」
「知らないっ!」
リオが伸ばした手をすり抜けて、俺は思いっきり走った。
3
お気に入りに追加
1,656
あなたにおすすめの小説
俺が総愛される運命って誰得ですか?
もふもふ
BL
俺が目覚めた時そこは、武器庫だった。あれ?ここどこだ?と思いつつドアを開けると...そこには見たことも無い光景があった。
無自覚主人公とイケメン騎士達の物語
※はR18要素含みます
【注】不定期更新です!
転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
僕が玩具になった理由
Me-ya
BL
🈲R指定🈯
「俺のペットにしてやるよ」
眞司は僕を見下ろしながらそう言った。
🈲R指定🔞
※この作品はフィクションです。
実在の人物、団体等とは一切関係ありません。
※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨
ので、ここで新しく書き直します…。
(他の場所でも、1カ所書いていますが…)
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
嫌われ者は異世界で王弟殿下に愛される
希咲さき
BL
「もう、こんなとこ嫌だ…………」
所謂王道学園と呼ばれる学校に通っていた、ごく普通の高校生の仲谷枢(なかたにかなめ)。
巻き込まれ平凡ポジションの彼は、王道やその取り巻きからの嫌がらせに傷つき苦しみ、もうボロボロだった。
いつもと同じく嫌がらせを受けている最中、枢は階段から足を滑らせそのままーーー……。
目が覚めた先は………………異世界だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
自分の生まれた世界で誰にも愛されなかった少年が、異世界でたった1人に愛されて幸せになるお話。
*第9回BL小説大賞 奨励賞受賞
*3/15 書籍発売しました!
現在レンタルに移行中。3話無料です。
【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。
天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。
成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。
まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。
黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。
マッチョな料理人が送る、異世界のんびり生活。 〜強面、筋骨隆々、とても強い。 でもとっても優しい男が異世界でのんびり暮らすお話〜
かむら
ファンタジー
【ファンタジー小説大賞にて、ジョブ・スキル賞受賞しました!】
身長190センチ、筋骨隆々、彫りの深い強面という見た目をした男、舘野秀治(たてのしゅうじ)は、ある日、目を覚ますと、見知らぬ土地に降り立っていた。
そこは魔物や魔法が存在している異世界で、元の世界に帰る方法も分からず、行く当ても無い秀治は、偶然出会った者達に勧められ、ある冒険者ギルドで働くことになった。
これはそんな秀治と仲間達による、のんびりほのぼのとした異世界生活のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる