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番外編 芽吹き 35
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アルファムにベッドに運ばれて降ろしてもらいながら、アルファムのシャツを引っ張る。
「アル…、アルの王様としての立場もわかるけど、自分の気持ちに素直に従ってもいいと思う」
「…そんなことは許され…」
「許されないって言うのもわかるよ。でも、俺が許す。被害者の俺が許すって言ってるんだから、ローラントのこと、兄として考えてあげてよ」
「カナ…、とにかくその話は後だ。顔色が悪いぞ」
「そうかなあ。吐いたからすっきりしてるよ?」
その時「失礼します」と声がして、リオが戻って来た。
俺は、リオからコップに注がれた水を手渡されると、ごくごくと飲み干す。
そして、ふぅと息を吐いて横になった。
「アル、起きたら散歩の続きしよ。だから、どこにも行かないでこの部屋にいて」
「ああ。ここで書類の山を片付けておく。安心して休め」
「うん。リオも、心配させてごめんね」
「気にすんな。して欲しいことがあれば遠慮なく言えよ?」
「うん、ありがとう」
俺は二人に微笑むと、ゆっくりと目を閉じた。
気がつくと、俺は真っ白な空間に立っていた。
上も下も左右も周り全てが真っ白で、まるで宙に浮いてるみたいだ。
不安になって、アル…と呼ぼうとしたけど、声が出ない。
ーーなんだろ、ここ?え?もしかして俺、死んじゃった?……いやいや、ちょっと気分が悪くなって吐いただけだし。どこも痛くも痒くもないし。あっ、そっか。これは夢だ。でも…どういう夢だろ?
首を傾けて考えていると、目の端に赤いものが映った。
不思議に思ってそちらに顔を向ける。
綺麗な女の人が、立っていた。
その人が、鋭く光る目で、俺を見ている。
「だれ?」
尋ねても返事がない。
目の端に映った赤いものは、女の人の明るい朱色の髪の毛だ。
それと、女の人が上に向けた掌にある赤い炎だ。
ーーあの朱色の髪は、ついさっきも見た。ローラントと同じ色だ。顔も似てる。そして、掌の炎。炎を使えるということは、位の高い者だ。
「もしかして…あなたは、ローラントの母親の、ベアトリクス…さん?」
恐る恐る聞くけど、やっぱり返事がない。
俺は困って、女の人に近づこうと足を前に出した。
その瞬間、女の人が手を大きく振る。
女の人の掌から辺り一面に炎が飛び散り、見る見る間に俺の周囲が炎に包まれた。
「アル…、アルの王様としての立場もわかるけど、自分の気持ちに素直に従ってもいいと思う」
「…そんなことは許され…」
「許されないって言うのもわかるよ。でも、俺が許す。被害者の俺が許すって言ってるんだから、ローラントのこと、兄として考えてあげてよ」
「カナ…、とにかくその話は後だ。顔色が悪いぞ」
「そうかなあ。吐いたからすっきりしてるよ?」
その時「失礼します」と声がして、リオが戻って来た。
俺は、リオからコップに注がれた水を手渡されると、ごくごくと飲み干す。
そして、ふぅと息を吐いて横になった。
「アル、起きたら散歩の続きしよ。だから、どこにも行かないでこの部屋にいて」
「ああ。ここで書類の山を片付けておく。安心して休め」
「うん。リオも、心配させてごめんね」
「気にすんな。して欲しいことがあれば遠慮なく言えよ?」
「うん、ありがとう」
俺は二人に微笑むと、ゆっくりと目を閉じた。
気がつくと、俺は真っ白な空間に立っていた。
上も下も左右も周り全てが真っ白で、まるで宙に浮いてるみたいだ。
不安になって、アル…と呼ぼうとしたけど、声が出ない。
ーーなんだろ、ここ?え?もしかして俺、死んじゃった?……いやいや、ちょっと気分が悪くなって吐いただけだし。どこも痛くも痒くもないし。あっ、そっか。これは夢だ。でも…どういう夢だろ?
首を傾けて考えていると、目の端に赤いものが映った。
不思議に思ってそちらに顔を向ける。
綺麗な女の人が、立っていた。
その人が、鋭く光る目で、俺を見ている。
「だれ?」
尋ねても返事がない。
目の端に映った赤いものは、女の人の明るい朱色の髪の毛だ。
それと、女の人が上に向けた掌にある赤い炎だ。
ーーあの朱色の髪は、ついさっきも見た。ローラントと同じ色だ。顔も似てる。そして、掌の炎。炎を使えるということは、位の高い者だ。
「もしかして…あなたは、ローラントの母親の、ベアトリクス…さん?」
恐る恐る聞くけど、やっぱり返事がない。
俺は困って、女の人に近づこうと足を前に出した。
その瞬間、女の人が手を大きく振る。
女の人の掌から辺り一面に炎が飛び散り、見る見る間に俺の周囲が炎に包まれた。
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