炎の国の王の花

明樹

文字の大きさ
上 下
169 / 432

王の花 7

しおりを挟む
軽く合わせた唇が、アルファムに後頭部を寄せられて深くなる。激しく舌を絡ませて吸われ、久しぶりの熱い刺激に、俺は目を潤ませて口端から飲み込めなかった唾液をたらす。


「ふぁ…、んっ、んぅ…」


どれくらいの時間そうしていたのか、ようやくアルファムの顔が離れた時には、俺の唇は熱をもって痺れていた。


「ん…っ、はぁ。…アル、激しい…」
「ん、カナが可愛いから仕方がない。が、まだまだ足りない。おまえが大丈夫なら、今夜、抱いていいか?」


俺の頬を指の背で撫でながら、アルファムがそう囁く。
俺がこの世界に来た頃なんて、俺の意見を聞かないで何でも進めてたのに…、と胸がキュンと鳴った。


「うん、して…。俺も、アルが足りない」
「やはりおまえは、堪らなく可愛いな。では夜の為に少し眠れ。宴まではまだ時間がある。あ、その前に、傷痕を見せてくれ」


俺は頷くと、Tシャツの裾を持ち上げた。


「ほら、治ってるだろ?」


アルファムが無言で、お腹の傷痕を指でなぞる。その直後に、ヒリヒリとした熱さを感じて、思わず声を上げた。


「あっ!…な、に?」


顔を上げてアルファムに触れられているお腹を見ると、縫った痕が残っていた傷痕が、綺麗に消えていた。


「カナ…、これは、かなり痛かっただろう?よく耐えたな。俺は、腹の傷痕は治せても腹の中までは治せない。ちゃんと、治ってるのか?」
「うん、治ってるよ。医者の先生が言ってた。止血がしてあったから、助かったんだって。だから、アルのおかげで俺は助かったんだよ。アル、ありがとう」


心配そうに俺を覗き込むアルファムの頬に手を当てて、俺はニコリと笑う。
でも、アルファムは渋い顔のまま、今度は俺の右手を握りしめた。


「カナに礼を言われる資格はない。あの時、おまえを守ってやれなかったのだからな…。それどころか、おまえに辛い思いをさせてしまった。絶対に守ると誓っていたのに…。カナ、すまない。俺を怒っていいぞ?だが、今度こそ、何があっても絶対にカナを守る」
「アル…。怒られるなら俺の方だよ。あの時、勝手なことをしてごめん。でも、アルと、アルがいるこの世界が大好きだったから、どうしても守りたかったんだ。あいつの思い通りにはさせたくなかったんだ」
「…そうか」
「うん。でも、もう無茶はしない。アルと離れるのは嫌だもん」
「そうだな、そうしてくれ。俺も、もう二度とあんな辛い思いはしたくない。この手も、痛かっただろ?元通り、白く綺麗な手に治してやるぞ」


アルファムが、俺の右手を持ち上げて唇をつける。そして、両手で俺の右手を包むと、綺麗な緑色の目で俺を見た。
その瞬間、包まれた右手が熱くなり、俺は唇を噛んで耐える。
「カナ」と呼ばれて顔を上げると、噛んだ唇をペロリと舐められた。
チュッチュと啄まれている間に、熱さが引いてアルファムの手が離れる。


「カナ、治ったぞ」


お互いの鼻先を触れさせながら囁かれて、右手を持ち上げて見ると、赤く引きつった痕が綺麗に消えていた。
前よりも綺麗になったんじゃないかと思う程の白い手に、俺は感嘆の声を上げた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

主人公の兄になったなんて知らない

さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を レインは知らない自分が神に愛されている事を 表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!

をち。
BL
公爵家の3男として生まれた俺は、家族からうとまれていた。 母が俺を産んだせいで命を落としたからだそうだ。 生を受けた俺を待っていたのは、精神的な虐待。 最低限の食事や世話のみで、物置のような部屋に放置されていた。 だれでもいいから、 暖かな目で、優しい声で俺に話しかけて欲しい。 ただそれだけを願って毎日を過ごした。 そして言葉が分かるようになって、遂に自分の状況を理解してしまった。 (ぼくはかあさまをころしてうまれた。 だから、みんなぼくのことがきらい。 ぼくがあいされることはないんだ) わずかに縋っていた希望が打ち砕かれ、絶望した。 そしてそんな俺を救うため、前世の俺「須藤卓也」の記憶が蘇ったんだ。 「いやいや、サフィが悪いんじゃなくね?」 公爵や兄たちが後悔した時にはもう遅い。 俺には新たな家族ができた。俺の叔父ゲイルだ。優しくてかっこいい最高のお父様! 俺は血のつながった家族を捨て、新たな家族と幸せになる! ★注意★ ご都合主義。基本的にチート溺愛です。ざまぁは軽め。 ひたすら主人公かわいいです。苦手な方はそっ閉じを! 感想などコメント頂ければ作者モチベが上がりますw

愛などもう求めない

白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。 「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」 「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」 目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。 本当に自分を愛してくれる人と生きたい。 ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。  ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。 最後まで読んでいただけると嬉しいです。

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

俺が総愛される運命って誰得ですか?

もふもふ
BL
俺が目覚めた時そこは、武器庫だった。あれ?ここどこだ?と思いつつドアを開けると...そこには見たことも無い光景があった。 無自覚主人公とイケメン騎士達の物語 ※はR18要素含みます 【注】不定期更新です!

公爵家の五男坊はあきらめない

三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。 生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。 冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。 負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。 「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」 都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。 知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。 生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。 あきらめたら待つのは死のみ。

【完】僕の弟と僕の護衛騎士は、赤い糸で繋がっている

たまとら
BL
赤い糸が見えるキリルは、自分には糸が無いのでやさぐれ気味です

処理中です...