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王の花
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「あれ?なあ、あんた。この世界には、俺と同じ黒い髪の人がいっぱいいただろ?なんでその人達を、代わりに生贄に選ばなかったの?」
「は?おまえはバカか?生贄は、誰でもいい訳では無い。おまえでないとダメなのだ。だから幾日も、イライラしながらここで待っていたのではないかっ」
「あ、そうなんだ…」
男の言葉を聞いて、何だか嬉しくなる。
だって、生贄になる条件が、黒髪であれば誰でも良かったなら、もしかして、アルファムと出会うのが俺じゃなかったかもしれない。
でも、生贄は俺じゃないとダメだったんだ。アルファムと出会うのも、俺じゃないとダメだったんだ。あれ?この考え方、おかしいかな?でも、何だかアルファムに選ばれたような気がして、アルファムと出会うことが運命だった気がして、嬉しくなったんだ。
「おまえ、何を笑ってる?ああ…そうか。ついに観念したのだな。さあ、今度こそ俺の為に死んでくれっ」
男はそう言うと、俺に向かって突進し、俺の身体に抱き着いて崖から大きく飛んだ。
「アルっ!今から戻るからっ。アルの元へ、帰るからっ!俺を受け止めてっ!」
眼前に広がる空に向かって、大きく叫ぶ。
途端にフッと目の前が真っ暗になり、ゆっくりと目を閉じる。閉じてすぐに瞼の向こう側が赤く染まり、慌てて目を開けると、すぐ目の前に、赤い炎の手が俺に向かって伸びていた。
俺は、両手を伸ばしてその手を掴む。
俺の身体に男の腕が巻きついていたけど、横から目映い白い玉が飛んできて、男の目にぶつかった。
「うわっ!な、なんだ!?」
男が、咄嗟に片手を離して目を押さえる。次に凄まじい勢いの水流が飛んできて、男の身体を弾き飛ばした。
「あっ!くそっ!」
男の手が、俺の身体から離れて落ちていく。男が必死で手を伸ばして、俺の足を掴もうとするけど、俺の身体は、力強く握られた炎の手によって、崖上へと引き上げられた。
男の身体が水流に押されて、海へと叩きつけられる。そして、落ちた場所にあった大きな渦に、あっという間に飲まれて消えた。
「あ…。沈んだ?それとも、またどこかの世界へ飛ばされた?」
小さくなっていく渦を見て、ポツリと呟いた俺の身体が、背後から力強い腕に抱きしめられた。
懐かしい温もりに大好きな匂い。俺の頬をくすぐる長い髪が、赤い色をしている。
ちゃんと、俺を受け止めてくれた。
夢で約束した通りに、俺、戻って来たよ。
俺は、大好きな腕の中で身体を反転させると、逞しい胸に顔を押し当てて、声を上げて泣き出した。
「は?おまえはバカか?生贄は、誰でもいい訳では無い。おまえでないとダメなのだ。だから幾日も、イライラしながらここで待っていたのではないかっ」
「あ、そうなんだ…」
男の言葉を聞いて、何だか嬉しくなる。
だって、生贄になる条件が、黒髪であれば誰でも良かったなら、もしかして、アルファムと出会うのが俺じゃなかったかもしれない。
でも、生贄は俺じゃないとダメだったんだ。アルファムと出会うのも、俺じゃないとダメだったんだ。あれ?この考え方、おかしいかな?でも、何だかアルファムに選ばれたような気がして、アルファムと出会うことが運命だった気がして、嬉しくなったんだ。
「おまえ、何を笑ってる?ああ…そうか。ついに観念したのだな。さあ、今度こそ俺の為に死んでくれっ」
男はそう言うと、俺に向かって突進し、俺の身体に抱き着いて崖から大きく飛んだ。
「アルっ!今から戻るからっ。アルの元へ、帰るからっ!俺を受け止めてっ!」
眼前に広がる空に向かって、大きく叫ぶ。
途端にフッと目の前が真っ暗になり、ゆっくりと目を閉じる。閉じてすぐに瞼の向こう側が赤く染まり、慌てて目を開けると、すぐ目の前に、赤い炎の手が俺に向かって伸びていた。
俺は、両手を伸ばしてその手を掴む。
俺の身体に男の腕が巻きついていたけど、横から目映い白い玉が飛んできて、男の目にぶつかった。
「うわっ!な、なんだ!?」
男が、咄嗟に片手を離して目を押さえる。次に凄まじい勢いの水流が飛んできて、男の身体を弾き飛ばした。
「あっ!くそっ!」
男の手が、俺の身体から離れて落ちていく。男が必死で手を伸ばして、俺の足を掴もうとするけど、俺の身体は、力強く握られた炎の手によって、崖上へと引き上げられた。
男の身体が水流に押されて、海へと叩きつけられる。そして、落ちた場所にあった大きな渦に、あっという間に飲まれて消えた。
「あ…。沈んだ?それとも、またどこかの世界へ飛ばされた?」
小さくなっていく渦を見て、ポツリと呟いた俺の身体が、背後から力強い腕に抱きしめられた。
懐かしい温もりに大好きな匂い。俺の頬をくすぐる長い髪が、赤い色をしている。
ちゃんと、俺を受け止めてくれた。
夢で約束した通りに、俺、戻って来たよ。
俺は、大好きな腕の中で身体を反転させると、逞しい胸に顔を押し当てて、声を上げて泣き出した。
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