炎の国の王の花

明樹

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謎の男 14

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「ふ…、俺を殺せば、世界を…手に出来るんだっけ…?残念だったな…。この世界の…神に…俺を捧げた、のは…アルだ。炎の国の、王だ。あんたじゃ、ない…」
「カナ!喋るなっ」


尚も俺のお腹に掌を当てて治癒を続けるアルファムの頬に手を添えると、俺は首を伸ばしてキスをした。
  

「あ…ふ…ぅ」


アルファムの唇は、とても熱かった。
でもそれは、俺の唇が冷たいからそう感じたのかもしれない。
だって、もう手足の先が冷えて痺れてきてるんだ。


「アル…愛してるよ…」
「カナっ?!」


俺は大きく息を吸い込むと、渾身の力を振り絞って、ゆっくりと立ち上がった。


「カナ!動いたらダメだっ!」


「くっ…」と呻いて、アルファムが顔を歪める。
男が、さっき貫いたのとは反対側の肩も、雷で貫いた。


「あんた、悪あがきは…やめ…ろ。あんたが何者か…結局は、わからなかったけど…、俺と同じで、この世界の者じゃない気がする。
なぁ…余所者の俺達は消えて、この世界を元の姿に…」
「は?何を言ってる?おまえに何がわかる?俺は、俺の力を認めない奴らに世界を追い出されたんだ。だから、新たな世界で王になって俺の居場所を作らねばならない。その為におまえを呼び寄せたのに。生贄は大人しく始末されれば良かったのに。おまえのせいで俺は…っ!」
「カナ!くそっ…、カナを、離せっ!」


男が片手で俺の首を掴んで持ち上げた。
アルファムが叫んで何とか立ち上がろうともがく。
俺の首が絞まって息が苦しい。だけど、アルファムにもういいよの意味を込めて微かに頷くと、静かに目を閉じた。


ーーこいつに何があってこんなことしたのかわからないけど、俺を呼んでくれたことは、感謝する。だって、ここに来て、俺は心から愛する喜びと愛される幸せを知ったから。…あの時、崖から落ちて死ななくて良かった。アルや皆んなに会えて良かった。


俺は細く息を吸い込み、力の入らない両腕を上げて、男の胸に掌をつける。
身体中の力を掌に集中させると、一気に力を放出させた。


「な…ぐっ!」
「カナっ!」


俺の掌が光り、男の身体が、俺を掴んだまま後ろへと大きく飛んだ。そのまま橋の欄干を越えて、川へと落ちる。
落ちて行く俺の目に、橋の上から大きな手の形の赤い炎が伸びてきて、俺を掴もうとする。
フラフラと伸ばした俺の手が炎に触れた瞬間、ドボン!と身体が水中に沈んだ。


男が俺から離れて、水の上に出ようと泳いでいたけど、激しい渦に飲まれて川底へと姿が消えた。


ーー…この川、結構深いな…。俺もすぐに渦に飲まれる。…アル、平和な世界を作って。それと、俺のこと…忘れないで。


水の上を明るく照らす赤い炎を眺めていると、何人かの兵やリオが飛び込んできた。
リオが俺を見つけて手を伸ばす。その手を掴もうと手を動かした瞬間、俺の身体がグイッと引っ張られて渦に巻き込まれる。
慌てて俺の方に来ようとしたリオに、大きく首を左右に振ると、俺はゆっくりと目を閉じた。




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