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謎の男 13
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男がそう言い終わると、振り向きながら大きく手を振った。
ドン!という音と共に、サッシャやミケ、リオや兵達の足元から黒い雷が伸びて、全員が一斉に倒れた。
「なっ…!サッシャ!リオ!!」
「あれぐらいでは死なぬ。多少の火傷や身体の痺れで、しばらくは動けないだろう。ただ心の臓にまで雷が浸透していたら、どうなるかわからないがな」
男がそう言いながら、つ…と俺の首に指先を触れさせて「今度こそ終わりだ」と静かに言う。
俺は、短剣を固く握りしめていた手に力を込めて突き出した。微弱な魔法をまとった短剣は、男の脇腹を掠めた。
男は、チラリと血のにじむ脇腹を見て、すぐに視線を戻し指先から雷を出す。
「あ…っ!いっ…」
「カナっ!」
俺は短剣を落として、赤く焼けただれた右手を左手で庇って身体を丸めた。
「よくもカナを傷つけたな!!」
アルファムが叫んで、腰の剣を抜きざまに振る。
軽く剣を避けた男が、今度はアルファムの肩を雷で貫いた。
「ぐっ!くそ…っ」
「アル!」
俺は、慌ててアルファムを守るように抱き着く。
ーーダメだ…。俺、自分の身を自分で守れてない…。それに、俺の為にアルが傷ついてる。アルだけじゃない。リオやサッシャ、他の皆んなも…。こいつ、なんでこんなに強いんだよ。もうどうしたら…。
俺の首の後ろに、男が指先を近付けたのがわかった。
ーーもう…このまま男に殺される?でも、そうしたらこの世界はこの男のものに…。やっぱりそんなのダメだ。この世界の人達には、平和に暮らして欲しい。
その時、アルファムの腕が動いてカチャリと剣の擦れる音がした。
ーーあ…そっか。こいつに殺される前にいっそのこと…。
頭の後ろから、バチバチと雷の鳴る音がする。
俺の首が焼き切られる前に、俺はアルファムの剣をアルファムの手ごと両手で掴むと、自分の腹に突き立てた。
「え…?カナ?な、にを…している…」
大きく目を見開いたアルファムが、この世の終わりのような顔をした。
いつも自信過剰のアルファムのそんな顔が珍しくて、思わずふ…と顔が綻ぶ。
「アル…、うっ…ゴフッ」
アルファムへ手を伸ばそうとした俺は、血を吐き出してアルファムへと倒れ込んだ。
「カナっ!しゃ、喋るなっ。すぐっ、すぐに治癒の魔法を…っ!」
俺の腹に炎を当てながら、アルファムが剣をゆっくりと引き抜く。
更に傷に炎を当てようとするアルファムの手を掴んで、俺は首を左右に振った。
「ダメ…、治しちゃ…。アルの剣で、俺…が死なないと。俺…、アルに、世界の王になって欲しい…。その為なら、俺の命、喜んで…あげるよ…」
「な、なにを…何を言ってる!カナが、おまえがいない世界などっ!!」
「…アル、ごめん…。絶対に、あいつの思う通りには…させたく、なか…っ」
「いらぬことをしてくれる…」
ふと顔を上げると、男が怒りの表情をして身体を震わせていた。
ドン!という音と共に、サッシャやミケ、リオや兵達の足元から黒い雷が伸びて、全員が一斉に倒れた。
「なっ…!サッシャ!リオ!!」
「あれぐらいでは死なぬ。多少の火傷や身体の痺れで、しばらくは動けないだろう。ただ心の臓にまで雷が浸透していたら、どうなるかわからないがな」
男がそう言いながら、つ…と俺の首に指先を触れさせて「今度こそ終わりだ」と静かに言う。
俺は、短剣を固く握りしめていた手に力を込めて突き出した。微弱な魔法をまとった短剣は、男の脇腹を掠めた。
男は、チラリと血のにじむ脇腹を見て、すぐに視線を戻し指先から雷を出す。
「あ…っ!いっ…」
「カナっ!」
俺は短剣を落として、赤く焼けただれた右手を左手で庇って身体を丸めた。
「よくもカナを傷つけたな!!」
アルファムが叫んで、腰の剣を抜きざまに振る。
軽く剣を避けた男が、今度はアルファムの肩を雷で貫いた。
「ぐっ!くそ…っ」
「アル!」
俺は、慌ててアルファムを守るように抱き着く。
ーーダメだ…。俺、自分の身を自分で守れてない…。それに、俺の為にアルが傷ついてる。アルだけじゃない。リオやサッシャ、他の皆んなも…。こいつ、なんでこんなに強いんだよ。もうどうしたら…。
俺の首の後ろに、男が指先を近付けたのがわかった。
ーーもう…このまま男に殺される?でも、そうしたらこの世界はこの男のものに…。やっぱりそんなのダメだ。この世界の人達には、平和に暮らして欲しい。
その時、アルファムの腕が動いてカチャリと剣の擦れる音がした。
ーーあ…そっか。こいつに殺される前にいっそのこと…。
頭の後ろから、バチバチと雷の鳴る音がする。
俺の首が焼き切られる前に、俺はアルファムの剣をアルファムの手ごと両手で掴むと、自分の腹に突き立てた。
「え…?カナ?な、にを…している…」
大きく目を見開いたアルファムが、この世の終わりのような顔をした。
いつも自信過剰のアルファムのそんな顔が珍しくて、思わずふ…と顔が綻ぶ。
「アル…、うっ…ゴフッ」
アルファムへ手を伸ばそうとした俺は、血を吐き出してアルファムへと倒れ込んだ。
「カナっ!しゃ、喋るなっ。すぐっ、すぐに治癒の魔法を…っ!」
俺の腹に炎を当てながら、アルファムが剣をゆっくりと引き抜く。
更に傷に炎を当てようとするアルファムの手を掴んで、俺は首を左右に振った。
「ダメ…、治しちゃ…。アルの剣で、俺…が死なないと。俺…、アルに、世界の王になって欲しい…。その為なら、俺の命、喜んで…あげるよ…」
「な、なにを…何を言ってる!カナが、おまえがいない世界などっ!!」
「…アル、ごめん…。絶対に、あいつの思う通りには…させたく、なか…っ」
「いらぬことをしてくれる…」
ふと顔を上げると、男が怒りの表情をして身体を震わせていた。
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