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謎の男 11
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俺がアルファムを見ると、アルファムも俺を見て、俺の大好きな太陽のように眩しい笑顔になった。
思わずつられて、俺もニコリと笑う。
そんな俺達を見て、驚いた顔をしたサッシャだったけど、サッシャもミケと顔を見合わせて笑った。
「こんな緊迫した中で何でそんな余裕があるんだよ。ふふ、カナデ達を見てたら何だか気が抜けた。あいつ、いかにも怪しい風体だからさ、緊張して力が入っちゃってたけど、今ので余裕が持てたよ」
サッシャが笑顔のまま俺を見て、剣を鞘に納めた。そして両腕をグルグルと回しながら「本気出すか…」と言った。
アルファムが俺の髪を撫でて、「無理はするなよ?」と少しだけ渋い顔をする。
「うん、わかってる。皆んなの足でまといにならないようにするから。アルも無茶はしないでよ」
「ふっ、大丈夫だ」
そう言って、アルファムも剣を鞘に納める。不思議に思って首を傾げた俺に、アルファムが「魔法を使うには両手が空いてた方がいい」と教えてくれた。
「へぇ…。そうなんだ」
「カナは自分のやり方でいいぞ」
「うん」
アルファムに頷いて、俺は剣を握り直す。
剣と魔法の練習をしている時に、気がついたんだ。
俺の場合、物を介した方が魔法の威力が少しだけ強い。
炎の国の兵達もジリジリと動き、男を囲う。
周りを囲まれて逃げ場のなくなった男が、右手の人差し指で俺達を順番に指しながら、とても楽しそうに笑った。でも、それは口元だけで、赤い目は笑っていない。
「楽しくなってきたなぁ。ここでおまえとおまえを始末すれば、炎と日の国は手に入れられるか?まあ、黒髪の奴を先に始末できればいいんだが、簡単にさせてくれそうもないしなぁ。邪魔するまわりの奴を先に片付けるか…」
男の様子が、少しおかしい気がする。たぶん、簡単に始末出来ると思っていた俺が、アルファムやサッシャの助けもあって、中々思うようにいかないことにイラついてるのかもしれない。
男は、恐ろしい魔法を使うけど、俺達と同じ人間だ。何とか取り押さえて、俺を殺して世界を手に入れるなどという巫山戯た真似は、止めなければ。
男が、上げていた右腕を、横に薙ぎ払うように振った。男の周りを囲う俺達に向かって、また黒い雷が飛んでくる。
それぞれが魔法で弾き返したり飛び退いて避けたりする。
俺も避けようとする前に、アルファムが炎の壁を作って防いでくれた。
「あ、ありがとう…アル」
「もう二度と、カナを傷つけないと誓ったからな。俺が、おまえを守る」
「アル…」
アルファムがとてもかっこいい。
本当の王様が、俺を悪者から守ってくれている。まるで、俺は物語の中のお姫様になった気分だ。
アルファムの大きな背中を見つめて、戦いの最中だというのに、そんな呑気なことを考えてる自分がおかしくなって、思わずクスリと笑いが漏れた。
思わずつられて、俺もニコリと笑う。
そんな俺達を見て、驚いた顔をしたサッシャだったけど、サッシャもミケと顔を見合わせて笑った。
「こんな緊迫した中で何でそんな余裕があるんだよ。ふふ、カナデ達を見てたら何だか気が抜けた。あいつ、いかにも怪しい風体だからさ、緊張して力が入っちゃってたけど、今ので余裕が持てたよ」
サッシャが笑顔のまま俺を見て、剣を鞘に納めた。そして両腕をグルグルと回しながら「本気出すか…」と言った。
アルファムが俺の髪を撫でて、「無理はするなよ?」と少しだけ渋い顔をする。
「うん、わかってる。皆んなの足でまといにならないようにするから。アルも無茶はしないでよ」
「ふっ、大丈夫だ」
そう言って、アルファムも剣を鞘に納める。不思議に思って首を傾げた俺に、アルファムが「魔法を使うには両手が空いてた方がいい」と教えてくれた。
「へぇ…。そうなんだ」
「カナは自分のやり方でいいぞ」
「うん」
アルファムに頷いて、俺は剣を握り直す。
剣と魔法の練習をしている時に、気がついたんだ。
俺の場合、物を介した方が魔法の威力が少しだけ強い。
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「楽しくなってきたなぁ。ここでおまえとおまえを始末すれば、炎と日の国は手に入れられるか?まあ、黒髪の奴を先に始末できればいいんだが、簡単にさせてくれそうもないしなぁ。邪魔するまわりの奴を先に片付けるか…」
男の様子が、少しおかしい気がする。たぶん、簡単に始末出来ると思っていた俺が、アルファムやサッシャの助けもあって、中々思うようにいかないことにイラついてるのかもしれない。
男は、恐ろしい魔法を使うけど、俺達と同じ人間だ。何とか取り押さえて、俺を殺して世界を手に入れるなどという巫山戯た真似は、止めなければ。
男が、上げていた右腕を、横に薙ぎ払うように振った。男の周りを囲う俺達に向かって、また黒い雷が飛んでくる。
それぞれが魔法で弾き返したり飛び退いて避けたりする。
俺も避けようとする前に、アルファムが炎の壁を作って防いでくれた。
「あ、ありがとう…アル」
「もう二度と、カナを傷つけないと誓ったからな。俺が、おまえを守る」
「アル…」
アルファムがとてもかっこいい。
本当の王様が、俺を悪者から守ってくれている。まるで、俺は物語の中のお姫様になった気分だ。
アルファムの大きな背中を見つめて、戦いの最中だというのに、そんな呑気なことを考えてる自分がおかしくなって、思わずクスリと笑いが漏れた。
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