141 / 432
謎の男 6
しおりを挟む
「カナデ様を襲った男のことなのですが…。申し訳ありません。まだ何も聞き出せてなく…」
「そうか。ならこれからも用心をした方が良いな」
特にミケを責めることも無く、アルファムが静かに言う。そして俺の肩を抱いて、サッシャに顔を向けた。
「では、これで失礼する。世話になったな。サッシャ王子、またいつでもカナデに会いに来てやってくれ」
「はい。ぜひに行かせてもらいます。犯人のことも、わかったらすぐにご連絡します。カナデ、またね。気をつけて」
サッシャが、笑って俺に手を振る。
俺も、予定より早く帰ることになって申し訳なく思いながら、笑って手を振った。
「うん。また会おうね。サッシャとミケも気をつけて帰ってね。色々とありがとう」
お互いに笑い合って背を向ける。
それぞれの国へと二三歩進んたその時、ザパン!と大きな音と共に、橋の上より高く水柱が上がった。
「なっ、なに!?」
「カナ、下がってろ」
驚いて振り向く俺を、アルファムが背中に隠す。
アルファムの後ろから覗くと、俺達とサッシャを挟んで、橋の真ん中に、全身ずぶ濡れの男が立っていた。
アルファムよりも背が高そうな大きな身体。黒いマントを羽織り、フードを深く被っているからどんな表情かは分からない。
全身ずぶ濡れなのは、さっきの音と水柱から、きっと川から出てきたのだろう。
その姿はまるで、よく小説とかに出てくる死神みたいだと思った。
「なんだ、おまえ」
アルファムが低い声を出す。
ピリリとした声に顔を上げると、アルファムの身体から、薄らと赤い炎が立ち上がっているように見える。その様子から、かなりの危険な状況なのだと、思わず身体に力が入る。
「カナデ…、大丈夫だよ」
リオが俺の隣に並んで、そっと囁く。
俺は、ペンダントの先の石を握りしめて、深く頷いた。
向こう側に目をやると、サッシャとミケの身体も、黄色く光っているように見える。戦闘態勢に入っているのだろうか。
決して友好的ではない男の雰囲気に、せめて皆んなの邪魔にはならないようにと、俺も身構えた。
男が俯いていた顔を上げて、ゆっくりと首を動かす。まずはサッシャとミケを見て、次にアルファム、リオと見ていく。そして、アルファムの後ろから覗く俺と目が合うと、ニィッと口端を上げた。
「見つけた。おまえだ」
男の声に、俺の全身に鳥肌が立った。
ーーなに?また俺が狙われてんの?もういい加減にして欲しい…っ!
思わずアルファムの服をギュッと掴んだ。
アルファムが、後ろ手に俺の手を握ると、「俺がついてるから大丈夫だ」と、前を見たまま言った。
「そうか。ならこれからも用心をした方が良いな」
特にミケを責めることも無く、アルファムが静かに言う。そして俺の肩を抱いて、サッシャに顔を向けた。
「では、これで失礼する。世話になったな。サッシャ王子、またいつでもカナデに会いに来てやってくれ」
「はい。ぜひに行かせてもらいます。犯人のことも、わかったらすぐにご連絡します。カナデ、またね。気をつけて」
サッシャが、笑って俺に手を振る。
俺も、予定より早く帰ることになって申し訳なく思いながら、笑って手を振った。
「うん。また会おうね。サッシャとミケも気をつけて帰ってね。色々とありがとう」
お互いに笑い合って背を向ける。
それぞれの国へと二三歩進んたその時、ザパン!と大きな音と共に、橋の上より高く水柱が上がった。
「なっ、なに!?」
「カナ、下がってろ」
驚いて振り向く俺を、アルファムが背中に隠す。
アルファムの後ろから覗くと、俺達とサッシャを挟んで、橋の真ん中に、全身ずぶ濡れの男が立っていた。
アルファムよりも背が高そうな大きな身体。黒いマントを羽織り、フードを深く被っているからどんな表情かは分からない。
全身ずぶ濡れなのは、さっきの音と水柱から、きっと川から出てきたのだろう。
その姿はまるで、よく小説とかに出てくる死神みたいだと思った。
「なんだ、おまえ」
アルファムが低い声を出す。
ピリリとした声に顔を上げると、アルファムの身体から、薄らと赤い炎が立ち上がっているように見える。その様子から、かなりの危険な状況なのだと、思わず身体に力が入る。
「カナデ…、大丈夫だよ」
リオが俺の隣に並んで、そっと囁く。
俺は、ペンダントの先の石を握りしめて、深く頷いた。
向こう側に目をやると、サッシャとミケの身体も、黄色く光っているように見える。戦闘態勢に入っているのだろうか。
決して友好的ではない男の雰囲気に、せめて皆んなの邪魔にはならないようにと、俺も身構えた。
男が俯いていた顔を上げて、ゆっくりと首を動かす。まずはサッシャとミケを見て、次にアルファム、リオと見ていく。そして、アルファムの後ろから覗く俺と目が合うと、ニィッと口端を上げた。
「見つけた。おまえだ」
男の声に、俺の全身に鳥肌が立った。
ーーなに?また俺が狙われてんの?もういい加減にして欲しい…っ!
思わずアルファムの服をギュッと掴んだ。
アルファムが、後ろ手に俺の手を握ると、「俺がついてるから大丈夫だ」と、前を見たまま言った。
1
お気に入りに追加
1,656
あなたにおすすめの小説
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!
をち。
BL
公爵家の3男として生まれた俺は、家族からうとまれていた。
母が俺を産んだせいで命を落としたからだそうだ。
生を受けた俺を待っていたのは、精神的な虐待。
最低限の食事や世話のみで、物置のような部屋に放置されていた。
だれでもいいから、
暖かな目で、優しい声で俺に話しかけて欲しい。
ただそれだけを願って毎日を過ごした。
そして言葉が分かるようになって、遂に自分の状況を理解してしまった。
(ぼくはかあさまをころしてうまれた。
だから、みんなぼくのことがきらい。
ぼくがあいされることはないんだ)
わずかに縋っていた希望が打ち砕かれ、絶望した。
そしてそんな俺を救うため、前世の俺「須藤卓也」の記憶が蘇ったんだ。
「いやいや、サフィが悪いんじゃなくね?」
公爵や兄たちが後悔した時にはもう遅い。
俺には新たな家族ができた。俺の叔父ゲイルだ。優しくてかっこいい最高のお父様!
俺は血のつながった家族を捨て、新たな家族と幸せになる!
★注意★
ご都合主義。基本的にチート溺愛です。ざまぁは軽め。
ひたすら主人公かわいいです。苦手な方はそっ閉じを!
感想などコメント頂ければ作者モチベが上がりますw
愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
もふもふ獣人転生
*
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。
ちっちゃなもふもふ獣人と、騎士見習の少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。
異世界に来たのでお兄ちゃんは働き過ぎな宰相様を癒したいと思います
猫屋町
BL
仕事中毒な宰相様×世話好きなお兄ちゃん
弟妹を育てた桜川律は、作り過ぎたマフィンとともに異世界へトリップ。
呆然とする律を拾ってくれたのは、白皙の眉間に皺を寄せ、蒼い瞳の下に隈をつくった麗しくも働き過ぎな宰相 ディーンハルト・シュタイナーだった。
※第2章、9月下旬頃より開始予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる