炎の国の王の花

明樹

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看病 2

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「カナデ?どうしたの、大丈夫?」
「…うん、大丈夫…。ちょっと、目が回るだけ…」


目を閉じて荒い息を吐く俺に気づいて、リオが大きな声を出す。


「お、君も少しまずいな。こっちは包帯を巻いたら終わりだから、もう少し頑張れ」


俺は仰向けになり、腕を額に乗せて、深呼吸を繰り返した。
俺は、腕を少し切られて、蹴られただけなんだ。ハマトに比べたら、とても軽傷だ。なのに、起き上がれないほどの目眩を起こして、苦しんでるなんて情けない。
あんなに魔法や剣の練習をした所で、結局は自分の身すら守れなかった。ハマトに守ってもらって、俺の代わりに傷ついた。


俺は本当にこの世界にいてもいいのかなぁ…とネガティブなことを考えて、思考がどんどんと落ちていく。
遂には目と鼻の奥がツンと痛んで、熱い雫がこめかみを伝って耳の穴へと流れ落ちた。


「ごめんごめん。今から君の手当をしてあげるからね。あれ?泣くほど辛かったの?大丈夫だよ。すぐに治してあげるからね」


傍に来た医者に泣いてることを指摘されて、俺は慌てて涙を拭う。
リオに見られたかもと思うと恥ずかしくて、チラリと目を向けると、リオが優しい目をして俺の頭を撫でた。
俺はまた泣きそうになり、慌てて目を瞬かせる。
その間に、医者は手際よく腕の傷に薬を塗りこみ、シャツの裾をめくって横腹を見ていた。


「うわぁ…、ここ、かなり強く殴られるか蹴られるかしたんだね。紫色になってる。んー…、どう?痛い?」
「いっ!痛いです…」


いきなり掌で強く押されて、俺は思わず声を上げる。医者が、少しずつずらしながら数回押さえて様子を見ると、戸棚からさっきとは別の容器を取り出した。


「君、運がいいよ。これだけ強く殴られるか蹴られるかしたら、骨が折れて内臓が傷ついてもおかしくないんだけど、ひどい打撲と骨にヒビが入ったくらいで、内臓は大丈夫だよ。この薬で痛みが和らぐから塗っておこうね」
「…はい。ありがとうございます…。え!骨…ヒビ入ってるんですかっ?」
「うん、一、二本、入ってるね。寝てろとは言わないけど、しばらくは激しく動いたらダメだよ」
「はあ…」


俺は気の抜けた返事をして、天井をぼんやりと眺めた。


ーー力一杯に蹴られて、蹴られた瞬間嫌な音がして、『骨折れてるかも』とは思ったけど、まさか本当に折れて(ヒビだけ)るとは…。ん?でもこれ、治癒の魔法や泉の水で治せないの?


俺は、俺の横腹に薬を塗って包帯を巻き終わり、シャツを元に戻してくれている医者に話しかける。


「あの…、ヒビって、治癒の魔法や泉の水で治せないのですか?」
「うん、無理」


俺の期待も虚しく、医者が即答した。
医者が言うことには、「治癒の魔法は、切られた傷を塞いだりは出来るけど、身体の中までは治せない。泉の水も似たような効果で、傷を塞いだり、飲めば熱を下げたりは出来るけど、身体の中の傷は治せない」のだそうだ。


完治するまでは十日以上かかるし、最初の三、四日は大人しくしてるようにと言われて、俺は大きな溜息を吐いた。
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