117 / 432
日の国ディエス 8
しおりを挟む
ゆっくりと街を見て周り、昼をかなり過ぎた頃に城に戻って来た。
花の鉢植えや服、小物類などを買って、気分が浮き立つ俺の足取りは軽かった。
服や小物類も、サッシャに「護衛に持ってもらえば?」と言われたけど、あまり人を使い慣れてない俺は、首を横に振った。
第一そんなに重くないものだし、俺とアルファムの大事なものだし。
嬉しそうに頻繁に袋の中を覗く俺を、サッシャが少し呆れた様子で見ていた。
本当は鉢植えも自分で持ちたかった。だけど、あのまま持っていたら、腕が痺れて早々に城へと戻る羽目になっていただろう。
長い時間、一人で持ってくれた彼には感謝しかない。
城に着いてすぐにお礼を言って鉢植えを受け取ろうとすると、男に拒否された。
「重いのにずっと持ってくれてありがとう。こっちに渡してくれる?」
「こんなのは重いうちに入りません。それにまだダメです。あなたの部屋はどこですか?そちらまで持って行きます」
「え?いやいや…っ、そこまでしてもらうのは悪いよっ。もう自分で運ぶから貸して」
「ダメです。こちらですか?」
手を差し出す俺の横をすり抜けて、男が廊下をドンドンと進んで行く。
困ってサッシャを見ると、サッシャも困った顔をして、男について行けという風に俺に手を振った。
俺は、仕方なく男の後ろを歩き始める。
リオがついてこようとしたので、俺は「疲れただろ?部屋で休んでいいよ」と笑って言う。
リオは、何か考えている風に無言で頷くと、他の護衛の人達にも、部屋で休むように伝え始めた。
その様子を見て顔を前に戻すと、男が廊下の先の角で待っているのが見えた。
俺は慌てて駆け寄り、今度は俺が先になって歩き出す。
「そちらもお持ちしましょうか?」
「え?ああ、大丈夫だよ。これは軽いから」
「軽いも重いも関係なく、持てと命令してくれていいのに」
「…俺は日の国の者ではないから、あなたに命令は出来ない。それに、人に命令をする立場でもないし…。自分で出来ることは自分でするよ。それでもどうしても出来ない時は、お願いして人の力を借りるけど」
「あなたは…カナデ様はお優しい。カナデ様、俺の名前はハマトと言います。俺は喜んであなたを手伝いますよ。どうか、困った時は俺の名前を呼んで下さい」
「…ハマト…」
颯人とハマト。顔や姿だけでなく、名前まで似てるのかと、また俺の胸が苦しくなる。
彼は、ハマトはとても優しい人のようだ。まるで、出会った頃の颯人みたいだ。
俺が困っていると、どこからともなく現れて助けてくれた颯人。
ハマトも俺を助けてくれると言う。そんなハマトを、どうしても颯人と重ねて見てしまう。
日の国での滞在期間は1週間。今日はまだ2日目だ。
俺は、平常心を保っていられるだろうか…。
俺は今、全身でアルファムを愛している。ここ最近は、颯人のことなんて微塵も思い出さなかった筈だ。なのに、颯人にそっくりなハマトを目の前にして、なんで心を乱してしまうのだろう。
いや、違う。思いがけず颯人にそっくりな人を見て、単に動揺しただけだ。
しっかりしろ、俺っ!
フッと短く息を吐き出すと、俺は前だけを見て歩き出した。
花の鉢植えや服、小物類などを買って、気分が浮き立つ俺の足取りは軽かった。
服や小物類も、サッシャに「護衛に持ってもらえば?」と言われたけど、あまり人を使い慣れてない俺は、首を横に振った。
第一そんなに重くないものだし、俺とアルファムの大事なものだし。
嬉しそうに頻繁に袋の中を覗く俺を、サッシャが少し呆れた様子で見ていた。
本当は鉢植えも自分で持ちたかった。だけど、あのまま持っていたら、腕が痺れて早々に城へと戻る羽目になっていただろう。
長い時間、一人で持ってくれた彼には感謝しかない。
城に着いてすぐにお礼を言って鉢植えを受け取ろうとすると、男に拒否された。
「重いのにずっと持ってくれてありがとう。こっちに渡してくれる?」
「こんなのは重いうちに入りません。それにまだダメです。あなたの部屋はどこですか?そちらまで持って行きます」
「え?いやいや…っ、そこまでしてもらうのは悪いよっ。もう自分で運ぶから貸して」
「ダメです。こちらですか?」
手を差し出す俺の横をすり抜けて、男が廊下をドンドンと進んで行く。
困ってサッシャを見ると、サッシャも困った顔をして、男について行けという風に俺に手を振った。
俺は、仕方なく男の後ろを歩き始める。
リオがついてこようとしたので、俺は「疲れただろ?部屋で休んでいいよ」と笑って言う。
リオは、何か考えている風に無言で頷くと、他の護衛の人達にも、部屋で休むように伝え始めた。
その様子を見て顔を前に戻すと、男が廊下の先の角で待っているのが見えた。
俺は慌てて駆け寄り、今度は俺が先になって歩き出す。
「そちらもお持ちしましょうか?」
「え?ああ、大丈夫だよ。これは軽いから」
「軽いも重いも関係なく、持てと命令してくれていいのに」
「…俺は日の国の者ではないから、あなたに命令は出来ない。それに、人に命令をする立場でもないし…。自分で出来ることは自分でするよ。それでもどうしても出来ない時は、お願いして人の力を借りるけど」
「あなたは…カナデ様はお優しい。カナデ様、俺の名前はハマトと言います。俺は喜んであなたを手伝いますよ。どうか、困った時は俺の名前を呼んで下さい」
「…ハマト…」
颯人とハマト。顔や姿だけでなく、名前まで似てるのかと、また俺の胸が苦しくなる。
彼は、ハマトはとても優しい人のようだ。まるで、出会った頃の颯人みたいだ。
俺が困っていると、どこからともなく現れて助けてくれた颯人。
ハマトも俺を助けてくれると言う。そんなハマトを、どうしても颯人と重ねて見てしまう。
日の国での滞在期間は1週間。今日はまだ2日目だ。
俺は、平常心を保っていられるだろうか…。
俺は今、全身でアルファムを愛している。ここ最近は、颯人のことなんて微塵も思い出さなかった筈だ。なのに、颯人にそっくりなハマトを目の前にして、なんで心を乱してしまうのだろう。
いや、違う。思いがけず颯人にそっくりな人を見て、単に動揺しただけだ。
しっかりしろ、俺っ!
フッと短く息を吐き出すと、俺は前だけを見て歩き出した。
1
お気に入りに追加
1,656
あなたにおすすめの小説
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!
をち。
BL
公爵家の3男として生まれた俺は、家族からうとまれていた。
母が俺を産んだせいで命を落としたからだそうだ。
生を受けた俺を待っていたのは、精神的な虐待。
最低限の食事や世話のみで、物置のような部屋に放置されていた。
だれでもいいから、
暖かな目で、優しい声で俺に話しかけて欲しい。
ただそれだけを願って毎日を過ごした。
そして言葉が分かるようになって、遂に自分の状況を理解してしまった。
(ぼくはかあさまをころしてうまれた。
だから、みんなぼくのことがきらい。
ぼくがあいされることはないんだ)
わずかに縋っていた希望が打ち砕かれ、絶望した。
そしてそんな俺を救うため、前世の俺「須藤卓也」の記憶が蘇ったんだ。
「いやいや、サフィが悪いんじゃなくね?」
公爵や兄たちが後悔した時にはもう遅い。
俺には新たな家族ができた。俺の叔父ゲイルだ。優しくてかっこいい最高のお父様!
俺は血のつながった家族を捨て、新たな家族と幸せになる!
★注意★
ご都合主義。基本的にチート溺愛です。ざまぁは軽め。
ひたすら主人公かわいいです。苦手な方はそっ閉じを!
感想などコメント頂ければ作者モチベが上がりますw
愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
もふもふ獣人転生
*
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。
ちっちゃなもふもふ獣人と、騎士見習の少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。
異世界に来たのでお兄ちゃんは働き過ぎな宰相様を癒したいと思います
猫屋町
BL
仕事中毒な宰相様×世話好きなお兄ちゃん
弟妹を育てた桜川律は、作り過ぎたマフィンとともに異世界へトリップ。
呆然とする律を拾ってくれたのは、白皙の眉間に皺を寄せ、蒼い瞳の下に隈をつくった麗しくも働き過ぎな宰相 ディーンハルト・シュタイナーだった。
※第2章、9月下旬頃より開始予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる