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風の国の男
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俺は、レオナルトの腕の中でもぞもぞと動き、身体の向きを前に戻そうとする。
だけどレオナルトが、自身の胸にピタリと俺を押し付けているから、ビクとも動くことが出来ない。
「ちょ…っ、レオン。手、離して。俺、もう眠くないからっ。大丈夫だから…っ」
「眠くなくてもこのままでいい。カナデのつむじを見ているのも愉しいが、こうしていれば顔が見れるからな」
「はあ?俺を見てないで前を見ろよ。てか、暑いからっ。ただでさえフードが暑くて息が苦しいんだから、離せって!」
ギュウギュウと強く抱きしめられて、本当に息が苦しくなって来た俺は、思わずフードを脱いだ。空気に晒された顔がスッキリとして、ふぅ~と大きく息を吐いたその時、横から大きな声が聞こえた。
「おおっ…!なんと珍しい髪の色だ!とても美しい…」
いきなり街道から声をかけられて、反射的にそちらを見る。
アルファムやレオナルトと同じくらい背の高い男が、腕を組み片方の手を顎に当てて立っていた。
少しつり上がった二重の中の青い瞳が、まっすぐに俺を見ている。そして肩より長く伸びた金色の髪が、グレーの上着の上で揺れていた。
レオナルトが素早く俺にフードを被せて、腕の中に隠す。
男を無視して去ろうとするレオナルトの背中に、後ろからよく通る声がかけられた。
「待てっ。その子は何者だ。とても尊い髪色をしているではないか」
「おまえの見間違いだ。それに、この子は俺の大切な恋人だ。決して近づくな」
「へぇ…」
全く納得していない様子の男を一瞥すると、レオナルトはますます強く俺を抱きしめて、少しだけラルクの速度を速めて、その場から離れた。
「ねぇ、レオン。…レオンってば!苦しいんだけど」
「あ、ああ…、悪かった」
いつまでも俺を抱きしめて離さないレオナルトの胸を叩いて、文句を言う。
レオナルトは何か考え事をしているのか、ジッと前を見つめていたけど、ラルクの歩みを止めると、俺に視線を移してフードの上から頭を撫でた。
「先程のあいつに、黒髪を見られてしまったな」
「え?ちょっと見られただけだし大丈夫だよ。変わった髪色をしてるなぁ~って、思うぐらいだろ?」
「カナデはわかっていない。この世界にとって、黒色がどれほど尊いのかを」
「だって、俺がいた世界では、黒髪の人なんていっぱいいたよ?」
「なんと!カナデは神の国から来たのかっ?」
「……いや」
この手の話になると、この世界の人は、とても現実離れしたことを言い出す。
まあ、魔法とかの不思議な力がある世界だから、そう思われてしまうのも仕方がないのかもしれないけど…。
俺は、レオナルトの面倒な質問を無視して、ふと気になったことを聞いた。
「レオン。この世界では、赤系の髪の人はエン国、青系の髪の人はスイ国じゃん。じゃあ、さっきの金髪の人は、どこの国?」
「え?ああ…。金色の髪は、風の国、ウィン国だ。ウィン国のあいつ、商人の身なりをしていたけど、目付きと立ち姿が只者ではなかった…」
「何か気になるの?」
俺は身体を前に向けて、ラルクのたてがみを撫でる。滑らかな手触りが気持ち良くて何度も撫でていると、ラルクが気持ちよさそうに鼻を鳴らした。
だけどレオナルトが、自身の胸にピタリと俺を押し付けているから、ビクとも動くことが出来ない。
「ちょ…っ、レオン。手、離して。俺、もう眠くないからっ。大丈夫だから…っ」
「眠くなくてもこのままでいい。カナデのつむじを見ているのも愉しいが、こうしていれば顔が見れるからな」
「はあ?俺を見てないで前を見ろよ。てか、暑いからっ。ただでさえフードが暑くて息が苦しいんだから、離せって!」
ギュウギュウと強く抱きしめられて、本当に息が苦しくなって来た俺は、思わずフードを脱いだ。空気に晒された顔がスッキリとして、ふぅ~と大きく息を吐いたその時、横から大きな声が聞こえた。
「おおっ…!なんと珍しい髪の色だ!とても美しい…」
いきなり街道から声をかけられて、反射的にそちらを見る。
アルファムやレオナルトと同じくらい背の高い男が、腕を組み片方の手を顎に当てて立っていた。
少しつり上がった二重の中の青い瞳が、まっすぐに俺を見ている。そして肩より長く伸びた金色の髪が、グレーの上着の上で揺れていた。
レオナルトが素早く俺にフードを被せて、腕の中に隠す。
男を無視して去ろうとするレオナルトの背中に、後ろからよく通る声がかけられた。
「待てっ。その子は何者だ。とても尊い髪色をしているではないか」
「おまえの見間違いだ。それに、この子は俺の大切な恋人だ。決して近づくな」
「へぇ…」
全く納得していない様子の男を一瞥すると、レオナルトはますます強く俺を抱きしめて、少しだけラルクの速度を速めて、その場から離れた。
「ねぇ、レオン。…レオンってば!苦しいんだけど」
「あ、ああ…、悪かった」
いつまでも俺を抱きしめて離さないレオナルトの胸を叩いて、文句を言う。
レオナルトは何か考え事をしているのか、ジッと前を見つめていたけど、ラルクの歩みを止めると、俺に視線を移してフードの上から頭を撫でた。
「先程のあいつに、黒髪を見られてしまったな」
「え?ちょっと見られただけだし大丈夫だよ。変わった髪色をしてるなぁ~って、思うぐらいだろ?」
「カナデはわかっていない。この世界にとって、黒色がどれほど尊いのかを」
「だって、俺がいた世界では、黒髪の人なんていっぱいいたよ?」
「なんと!カナデは神の国から来たのかっ?」
「……いや」
この手の話になると、この世界の人は、とても現実離れしたことを言い出す。
まあ、魔法とかの不思議な力がある世界だから、そう思われてしまうのも仕方がないのかもしれないけど…。
俺は、レオナルトの面倒な質問を無視して、ふと気になったことを聞いた。
「レオン。この世界では、赤系の髪の人はエン国、青系の髪の人はスイ国じゃん。じゃあ、さっきの金髪の人は、どこの国?」
「え?ああ…。金色の髪は、風の国、ウィン国だ。ウィン国のあいつ、商人の身なりをしていたけど、目付きと立ち姿が只者ではなかった…」
「何か気になるの?」
俺は身体を前に向けて、ラルクのたてがみを撫でる。滑らかな手触りが気持ち良くて何度も撫でていると、ラルクが気持ちよさそうに鼻を鳴らした。
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