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俺の王様 4
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昨夜泊まった白い建物に着くと、すぐに部屋に入って手を洗う。
すでに料理が用意されているテーブルの前に座り、手を合わせてパンを掴むとパクリと齧り付いた。
「カナ」
「ふぁひ?」
「ふっ、そのまま食事を続けていい。ちょっと痛いが我慢しろよ?」
パンを咀嚼しながら、俺の横に立つアルファ厶を見上げる。
アルファ厶は、笑いながら俺の頭に手を置いて顔を前に向かせると、俺の耳に冷たい布を当てた。
布の冷たい感触と、レオナルトに噛まれた箇所のピリリとした痛みに、思わず肩を跳ねさせる。
耳に触れようと上げた手をアルファ厶に握られてしまい、俺は俯いて痛みに耐えた。
「我慢しろと言っただろ。怪我の治癒だ。これはアイツにやられたのか?」
「うん…。俺が文句ばかり言ってうるさいって噛まれた…」
「アイツ…やはりあそこで殺るべきだったか…」
「え?殺るっ?ダ、ダメだよっ。そんなこと、絶対にしたらダメだからなっ」
アルファ厶の方を見ようと動かした顔を、アルファ厶にぐいと押されてまた前を向かされる。
「まだ治癒の途中だ。カナは食事を続けていろ。…なんでダメなのだ?アイツはカナを攫おうとした悪人だぞ。しかも傷をつけた。悪人には罰を与えねばならない」
「…でも…」
俺は自分の意見を言おうとして、俯いて口を噤んだ。
俺がいた世界とこの世界では、きっと価値観が違うのだ。
悪人に罰を与えるのは当たり前。俺がいた世界でもそうだった。
ただここでは、アルファ厶の口調からすると、どうやら悪人をその場で成敗してもいいらしい。それが常識なのかもしれない。
だから俺が言うことは、たぶんおかしいと捉えられてしまうかもしれない。
俺は静かに息を吐くと、自分の意見を押し付けることを止めて、目の前の料理を順番に平らげることに集中した。
俺の耳の治癒を終えたアルファ厶も食事をして、すぐに出るのかと思っていたら、「少し待て」と言う。
俺のせいで出発が遅れたのに、悠長にしてていいのかとアルファ厶を見つめていると、アルファ厶が俺に綺麗な笑顔を見せた。
「カナ、そこのベッドにうつ伏せに寝ろ。また尻が痛いのだろう?」
「えっ!い、いや…大丈夫だからっ。いいから早く行こうよっ」
「いいのか?このまま行くと、尻を痛めたおまえを心配して、皆の歩みも遅くなる。となれば当然、もっと遅れることになるな…」
「そっ…!れは嫌だ…」
「じゃあ大人しく寝てくれ。なるべく早く治してやるから」
「あんまり…見ないでよ…」
俺は渋々ベッドにうつ伏せになり、顔をアルファ厶の反対側に向ける。
俺の頭上でクスリと笑う気配がして、アルファ厶がズボンと下着に手をかけた。
途端に俺はズボンを掴んで身体を起こす。
アルファ厶が、驚いた顔で俺を見た。
「やっぱり無理っ。こんな明るい所で見られるの、恥ずかし過ぎて無理…」
「…仕方がないな…。カナ、ここにおいで」
アルファ厶がベッドに上がってきて、俺の身体を抱えると、向かい合わせで膝の上に乗せた。
「え?こ?え…っ?」
「カナ、膝で立って俺の首に抱きついてろ」
「…こ、こう?」
アルファ厶に言われた通りに、首に腕を回して顔を寄せる。
ーーあ~、アルファ厶の匂い、やっぱり好きだなぁ…。
ぼんやりとそんなことを考えていると、俺の下着の中に手が突っ込まれて、お尻をスルリと撫でられた。
「なっ、なにすんだよっ…!」
「なにって治癒だろ」
「だって…俺のお尻…お尻に…あ!」
アルファ厶の温かい手が触れたお尻に、今度は冷たいものが当てられて、俺はビクンと腰を震わせた。
「ひゃあ?つ、冷たっ」
「大人しくしてろ。すぐに終わる」
俺はアルファ厶の首元に顔を埋めたまま、「早くして…」と震えながら呟いた。
すでに料理が用意されているテーブルの前に座り、手を合わせてパンを掴むとパクリと齧り付いた。
「カナ」
「ふぁひ?」
「ふっ、そのまま食事を続けていい。ちょっと痛いが我慢しろよ?」
パンを咀嚼しながら、俺の横に立つアルファ厶を見上げる。
アルファ厶は、笑いながら俺の頭に手を置いて顔を前に向かせると、俺の耳に冷たい布を当てた。
布の冷たい感触と、レオナルトに噛まれた箇所のピリリとした痛みに、思わず肩を跳ねさせる。
耳に触れようと上げた手をアルファ厶に握られてしまい、俺は俯いて痛みに耐えた。
「我慢しろと言っただろ。怪我の治癒だ。これはアイツにやられたのか?」
「うん…。俺が文句ばかり言ってうるさいって噛まれた…」
「アイツ…やはりあそこで殺るべきだったか…」
「え?殺るっ?ダ、ダメだよっ。そんなこと、絶対にしたらダメだからなっ」
アルファ厶の方を見ようと動かした顔を、アルファ厶にぐいと押されてまた前を向かされる。
「まだ治癒の途中だ。カナは食事を続けていろ。…なんでダメなのだ?アイツはカナを攫おうとした悪人だぞ。しかも傷をつけた。悪人には罰を与えねばならない」
「…でも…」
俺は自分の意見を言おうとして、俯いて口を噤んだ。
俺がいた世界とこの世界では、きっと価値観が違うのだ。
悪人に罰を与えるのは当たり前。俺がいた世界でもそうだった。
ただここでは、アルファ厶の口調からすると、どうやら悪人をその場で成敗してもいいらしい。それが常識なのかもしれない。
だから俺が言うことは、たぶんおかしいと捉えられてしまうかもしれない。
俺は静かに息を吐くと、自分の意見を押し付けることを止めて、目の前の料理を順番に平らげることに集中した。
俺の耳の治癒を終えたアルファ厶も食事をして、すぐに出るのかと思っていたら、「少し待て」と言う。
俺のせいで出発が遅れたのに、悠長にしてていいのかとアルファ厶を見つめていると、アルファ厶が俺に綺麗な笑顔を見せた。
「カナ、そこのベッドにうつ伏せに寝ろ。また尻が痛いのだろう?」
「えっ!い、いや…大丈夫だからっ。いいから早く行こうよっ」
「いいのか?このまま行くと、尻を痛めたおまえを心配して、皆の歩みも遅くなる。となれば当然、もっと遅れることになるな…」
「そっ…!れは嫌だ…」
「じゃあ大人しく寝てくれ。なるべく早く治してやるから」
「あんまり…見ないでよ…」
俺は渋々ベッドにうつ伏せになり、顔をアルファ厶の反対側に向ける。
俺の頭上でクスリと笑う気配がして、アルファ厶がズボンと下着に手をかけた。
途端に俺はズボンを掴んで身体を起こす。
アルファ厶が、驚いた顔で俺を見た。
「やっぱり無理っ。こんな明るい所で見られるの、恥ずかし過ぎて無理…」
「…仕方がないな…。カナ、ここにおいで」
アルファ厶がベッドに上がってきて、俺の身体を抱えると、向かい合わせで膝の上に乗せた。
「え?こ?え…っ?」
「カナ、膝で立って俺の首に抱きついてろ」
「…こ、こう?」
アルファ厶に言われた通りに、首に腕を回して顔を寄せる。
ーーあ~、アルファ厶の匂い、やっぱり好きだなぁ…。
ぼんやりとそんなことを考えていると、俺の下着の中に手が突っ込まれて、お尻をスルリと撫でられた。
「なっ、なにすんだよっ…!」
「なにって治癒だろ」
「だって…俺のお尻…お尻に…あ!」
アルファ厶の温かい手が触れたお尻に、今度は冷たいものが当てられて、俺はビクンと腰を震わせた。
「ひゃあ?つ、冷たっ」
「大人しくしてろ。すぐに終わる」
俺はアルファ厶の首元に顔を埋めたまま、「早くして…」と震えながら呟いた。
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