ふれたら消える

明樹

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 青と仲が良い俺はおかしいのだろうかという思いが、常に胸の中に重たくのしかかったまま二年が過ぎて、青も中学生になった。
 この頃には青の方が身体が大きくなっていて、二人並ぶと青が兄だとよく間違われた。
 それに青の顔つきが精悍せいかんなものになってきて、とてもかっこいいと人気で女子にモテていた。


 朝は青と一緒に登校し、帰りも青が教室まで迎えに来るから一緒に帰る。
 そのせいで、クラスの女子に「弟を紹介して」としつこく頼まれて俺は困った。
 あまりにもしつこかったので、そのことを青に伝えると、青はなぜか怒ってしまった。
 怒って自分の部屋に入った青を追いかけて、俺も青の部屋に入る。
 ベッドに寝転んでスマホを触る青は、俺をチラリと見ただけで、またスマホを触り始めた。

「青…ごめん。俺、何かまずいこと言った?」
「…わかんねぇの?」
「うん…わからない」

 青は大きく息を吐きながら起き上がってベッドの端に座り、俺を手招きする。
 俺が青の隣に座ると、青が俺の腕を掴んだ。

「俺はいろいろ昊に怒ってるよ」
「…え?そんなに?ごめん、言ってくんないとわかんねぇよ」
「はあっ…、そうゆう所も可愛いんだけどさ…」

 兄に向かって可愛いはないだろうと不満に思ったけど、顔に出さずに青の次の言葉を待つ。
 俺の腕を握る青の手に、力がこもる。

「一つは、中学に入ったからって、なんで一緒に寝るの止めるの?俺は昊の傍じゃないと眠れない」
「え…だって、男同士だしベッドに二人は狭くない?」
「姉や妹と一緒に寝たらまずいけど、男同士は全然いいと思うけど。それに昊も俺も寝相がいいから狭くない」
「う…そう…?」
「あと、女の話を昊の口から聞きたくない。てか何?その昊のクラスの奴ら。話したいなら昊に頼まずに自分で直接話しかければいいじゃん。まあ話しかけられたところで俺は興味ねぇ奴とは話さないけどな!」
「青…」

 青はいつもそうだ。
 俺と話す時は、いつも優しい顔をする。
 青の友達と話す時は、楽しそうにしている。
 俺の友達と話す時は、少しにらみつけながら。
 その他の、特に青に群がる女子達には、とても冷たい顔をする。
 そんな、俺だけが特別みたいな態度は困るんだ。勘違いしそうで困るんだ。
 だって、この頃にはもう、俺は青が特別だって自覚してたから。
 でもたぶん、青が生まれた瞬間から青は俺の特別だった。ずっと良い兄でいなきゃと頑張ったけど、ダメだった。
 俺は、青が好きだ。
 こんなよこしまな想いを抱いていることを、青に知られてはいけない。
 青の中で優しい兄の俺が、気持ち悪い兄になってしまう。青が離れてしまう。

 俺の想いは届かなくてもいいんだ。
 青に嫌われさえしなければ、それでいい。
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