天狗の花嫁

明樹

文字の大きさ
上 下
107 / 221

壊れる身体 2

しおりを挟む
清忠が泊まったあの日から、頻繁に、胸の印から熱が広がり身体の奥が疼くようになった。


我慢できずに、俺は自分の性器を触るが、それだけではイくことが出来ない。
後ろの孔に数本指を入れて動かし、目を閉じて、銀ちゃんに触られている事を想像しながら、同時に乳首も摘む。銀ちゃんのパジャマを顔に押し当てて、指で感じる所を押しながら数回出し入れすると、すぐに熱い飛沫を吐き出した。


そんな夜を何日か繰り返し、何度目かの自慰の後にふと思った。いつも身体が疼き出すのは、銀ちゃんの布団の中で、銀ちゃんの匂いに包まれている時だ。


匂いに反応して疼く身体が辛い。我慢できなくて自身で慰めるとすぐに果てるんだけど、全然物足りない。銀ちゃんの硬く大きな屹立で奥を突いてもらわなければ、少しも満たされない。


そうやって銀ちゃんの事を考えていると、思い出さないようにしようとしているのに、宗忠さんから聞いた話が頭の中でぐるぐると渦巻き出すのだ。
心は寂しさでぎしぎしと痛み、身体は銀ちゃんを求めてずくずくと熱く震えて、とても辛かった。


ーー冬休みの終わりに神社で会った神使が言った『印がおまえを苦しめる』とはこの事なのかな…。『どうにもならぬ時は来い。印を消してやる』とも言ってたけど、この胸の印は消したくない。今はこの印でしか、銀ちゃんと繋がっていないのだから…。


だけど、俺の全身が辛いと悲鳴を上げている。


ーーもういっその事、この世界から消えてしまった方が幸せなんじゃないかーー。


ついにはそんな事を考えてしまう自分が悲しくなった。



身体が熱を持たないように、銀ちゃんの部屋で寝る事をやめればいいのだけど、銀ちゃんの匂いが無いのはあまりにも寂しくて、俺の心が保たない。


だから結局は、毎晩銀ちゃんの布団の上で自慰を繰り返し、虚しさを募らせ、ただでさえ食欲が落ちて力の入らない身体を、ますます疲れさせていた。


銀ちゃんがいなくなってどれくらいの日が過ぎたのだろう。
ぼんやりと学校に行って帰って来るだけの毎日を過ごしている俺には、日にちの感覚がわからない。


最近では、自分で自身を慰める虚しさに耐えきれなくなって、自慰をやめている。その為、疼く身体に耐える辛い夜を繰り返さなければならなくなった。





この日も眠れない夜を過ごし、朝方少しだけ微睡んで、寒さに震えて起き出した。
カーテンを開けて外を見ると、辺り一面真っ白になっている。


ーー雪…。冷えると思ったら夜のうちに積もったんだ。世界が白に包まれてきれい…。


少し窓を開けて冷たい空気を吸い込む。すべての音が雪に覆われて、とても静かだ。
まだ、しんしんと降り続く雪をぼーっと眺めていると、俺の耳に『バサッ』と微かに羽音が聞こえた気がした。


「銀ちゃんっ?」


俺は大きな声を上げて立ち上がり、慌てて部屋を出る。裸足のまま靴を履き、玄関扉を開けて雪の中へ飛び出した。
辺りを見ても銀ちゃんの姿はなく、勢いよく屋根を見上げる。屋根の上にも姿は見えなくて、苦痛に顔を歪めて振り返ると、神社がある方角の空に、小さな影が見えた。


「銀ちゃんっっ!」


その影を追いかけて、俺は静かな雪の世界の中へ駆け出した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

壁穴奴隷No.19 麻袋の男

猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。 麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は? シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。 前編・後編+後日談の全3話 SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。 ※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。 ※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

【完結】虐げられオメガ聖女なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました(異世界恋愛オメガバース)

美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

【完結】僕の大事な魔王様

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。 「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」 魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。 俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/11……完結 2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位 2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位 2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位 2023/09/21……連載開始

新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~

焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。 美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。 スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。 これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語… ※DLsite様でCG集販売の予定あり

処理中です...