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校外学習 2
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「清、俺の事は気にしないで行ってくれて良かったのに…」
「いいんだよ、俺もゆっくりしたかったし。それにまあ…、一ノ瀬さんから『絶対に凛の傍を離れずに守れ』と命令……頼まれてるから」
頬をぴくぴくと震わせて、清忠が苦笑いをする。
「えっ、銀ちゃんそんなこと清に言ったの?ごめんっ。ほんと俺の事は放っておいていいからっ」
「だからいいんだって!一ノ瀬さんに言われなくても、俺が凛ちゃんの傍にいたいんだよ、なっ。だから、凛ちゃんは必ず俺と行動を共にすること。一人でふらふらしたら駄目だよ」
「ん…わかった。清、ありがと」
俺が笑って清忠にお礼を言うと、清忠がこの話は終わりとばかりに顔を外に向けた。
「それより見ろよ。ここから見える景色、なかなか良いな。なあ、あそこの山には蛇の妖がいるって聞くぜ。凛ちゃんは気を付けような。今の凛ちゃんには、一ノ瀬さんの匂いが濃く付いてるから、興味を持って近付いて来るかもしれない」
「……へび…?」
清忠の話を聞いて、背筋に冷たいものがぞくりと走る。
ーー俺は蛇が苦手だ。出来れば会うのは遠慮したい。
俺は身体を起こして、秋に近付こうとしている山を見る。俺の胸に微かな不安がちらりとよぎった。
前日にゆっくりと休めたので、やっと普通に歩けるようになった。
今日は半日、山をトレッキングする予定になっていたから、なんとか足手まといにならなくて済みそうで、ほっと安心する。
不安があるとすれば、昨日清忠が言っていた蛇の妖のこと。
ーーほんとにいるのかな…。
山をじっと見つめる俺の隣に清忠が来て、肩にぽんと手を乗せる。
「凛ちゃん、昨日俺が言ったこと気にしてる?大丈夫だって。俺がいるし、悪い妖だという話も聞いた事ないから。第一、そんな悪いのがいる所に、一ノ瀬さんが黙って凛ちゃんを行かせるわけないじゃん」
朗らかに笑う清忠を見ていたら、俺の中の不安も払拭されて、だんだんと気持ちが晴れてきた。
「そうだよな。俺、山を歩くの結構好きだから、ほんとは今日、楽しみだったんだ。清、頑張ろうなっ」
「おうっ」
せっかく、景色と空気の綺麗な所に来たんだし、いろんなものを見て、帰ったら銀ちゃんに話してあげたい。
俺は大きく伸びをして、身体を軽くほぐし始めた。
ちらほらと色付く葉っぱもあって、信州の朝の空気はひんやりとして冷たい。でも日中は、動くと汗ばみそうだったので、俺は、長袖Tシャツにパーカーを羽織り、怪我や草にかぶれたりしないように、下はジーンズを履いていた。
「いいんだよ、俺もゆっくりしたかったし。それにまあ…、一ノ瀬さんから『絶対に凛の傍を離れずに守れ』と命令……頼まれてるから」
頬をぴくぴくと震わせて、清忠が苦笑いをする。
「えっ、銀ちゃんそんなこと清に言ったの?ごめんっ。ほんと俺の事は放っておいていいからっ」
「だからいいんだって!一ノ瀬さんに言われなくても、俺が凛ちゃんの傍にいたいんだよ、なっ。だから、凛ちゃんは必ず俺と行動を共にすること。一人でふらふらしたら駄目だよ」
「ん…わかった。清、ありがと」
俺が笑って清忠にお礼を言うと、清忠がこの話は終わりとばかりに顔を外に向けた。
「それより見ろよ。ここから見える景色、なかなか良いな。なあ、あそこの山には蛇の妖がいるって聞くぜ。凛ちゃんは気を付けような。今の凛ちゃんには、一ノ瀬さんの匂いが濃く付いてるから、興味を持って近付いて来るかもしれない」
「……へび…?」
清忠の話を聞いて、背筋に冷たいものがぞくりと走る。
ーー俺は蛇が苦手だ。出来れば会うのは遠慮したい。
俺は身体を起こして、秋に近付こうとしている山を見る。俺の胸に微かな不安がちらりとよぎった。
前日にゆっくりと休めたので、やっと普通に歩けるようになった。
今日は半日、山をトレッキングする予定になっていたから、なんとか足手まといにならなくて済みそうで、ほっと安心する。
不安があるとすれば、昨日清忠が言っていた蛇の妖のこと。
ーーほんとにいるのかな…。
山をじっと見つめる俺の隣に清忠が来て、肩にぽんと手を乗せる。
「凛ちゃん、昨日俺が言ったこと気にしてる?大丈夫だって。俺がいるし、悪い妖だという話も聞いた事ないから。第一、そんな悪いのがいる所に、一ノ瀬さんが黙って凛ちゃんを行かせるわけないじゃん」
朗らかに笑う清忠を見ていたら、俺の中の不安も払拭されて、だんだんと気持ちが晴れてきた。
「そうだよな。俺、山を歩くの結構好きだから、ほんとは今日、楽しみだったんだ。清、頑張ろうなっ」
「おうっ」
せっかく、景色と空気の綺麗な所に来たんだし、いろんなものを見て、帰ったら銀ちゃんに話してあげたい。
俺は大きく伸びをして、身体を軽くほぐし始めた。
ちらほらと色付く葉っぱもあって、信州の朝の空気はひんやりとして冷たい。でも日中は、動くと汗ばみそうだったので、俺は、長袖Tシャツにパーカーを羽織り、怪我や草にかぶれたりしないように、下はジーンズを履いていた。
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