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束の間の休息 2
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しばらくは平穏な日々が続いた。
清忠とは、あれ以来もっと仲良くなって、俺の家に時々泊まりにも来た。俺が清忠の家に行ってもよかったんだけど、「嫌な事を思い出すだろ」と、銀ちゃんと清忠に止められた。
浅葱もちょくちょく来るようになった。彼は俺より少しだけ背が高く、茶髪で目が大きくて可愛らしい顔立ちをしている。
主に銀ちゃんの用事で来るんだけど、その後に必ず俺の所へ寄るんだ。
ある日に清忠がいる時に浅葱も来たから、同い年同士で夜遅くまで騒いで、二人共泊まっていく事になった。
俺の部屋に布団を敷いて三人で寝る準備をしていると、浅葱が「凛はここじゃないだろ」と俺を部屋から追い出そうとする。
「えっ、なんで?」
「銀様が寂しがるから。ほら、早く下へ行って。おやすみ~」
そう言って、バタンとドアを閉めてしまった。
俺は慌ててドアを開けようとしたけど、どんな術をかけてるのか、全く開ける事が出来ない。
仕方なく一階へ降りて銀ちゃんの部屋の前に立つ。どうしようかと迷ってると、扉がすっと引かれて浴衣姿の銀ちゃんが出て来た。
「凛?どうした…」
俺は眉尻を下げて銀ちゃんを見上げる。そんな俺を見て微笑むと、銀ちゃんは身体を横に避けて、俺を部屋に入れてくれた。
「浅葱に…俺は銀ちゃんの部屋で寝ろって言われて追い出された…。ごめん銀ちゃん…、俺、邪魔…」
「いいよ、一緒に寝よう。ほら、こっちにおいで」
優しく腕を引かれるけど、俺は躊躇ってしまう。
「あ…、じゃあ布団取って来なきゃ…」
「大丈夫だ。俺の布団はかなり大きいから二人でも寝れる。ほら…」
「え…、う、ん…。お邪魔します…」
俺は抗うのを諦めて、そっと畳に敷かれた布団の端に横たわる。銀ちゃんも俺の方に身体を向けて寝転んだ。
俺は、恥ずかしくなって銀ちゃんにごろりと背中を向ける。すると俺の背中から銀ちゃんが腕を回してきて、びくりと肩が跳ねてしまった。
銀ちゃんの身体に触れる背中が熱くて、どきどきと胸がうるさく鳴り響く。銀ちゃんが俺の髪に顔を埋めて「凛…」と囁いた。
「…なに…?」
「…おまえは昔から甘くていい匂いがするな…。とても落ち着く。凛…、来週から大学が夏休みになる。休みに入ったら、俺はしばらく実家に帰らないといけないのだが、一人でも大丈夫か?」
「えっ。しばらくって…どれくらい?」
俺は急に不安になって、身体を返して銀ちゃんに向かい合うと、整った顔を見上げた。
銀ちゃんは俺の前髪をそっと撫で付けながら、優しく俺を見つめ返す。
「十日か二週間か…。少し長くなる。すまない。清忠や浅葱、織部におまえの事を頼んでおくから。契約の事も確認してくるよ。大丈夫だ、おまえの誕生日までには間に合わせる…」
「ん…、わかった。ごめんね…」
「なんで凛が謝る?男と結婚の約束をしてるなど嫌だろう…、早くなんとかしないとな…」
「ん…」
銀ちゃんの言葉に、ずきんと大きく胸が痛んだ。その言葉を返せば、銀ちゃんが、男の俺と結婚の約束をしてるのが嫌だと言ってるようなものだ…。
そう思ったら、鼻の奥かツンとして目の奥が熱くなり、涙がじわりと滲んできた。
俺は、それを銀ちゃんに見られたくなくて、そっと銀ちゃんの胸に顔を寄せる。
俺の目から零れ落ちた一粒が、ゆっくりと銀ちゃんの浴衣に吸い込まれていくのが見えた。
清忠とは、あれ以来もっと仲良くなって、俺の家に時々泊まりにも来た。俺が清忠の家に行ってもよかったんだけど、「嫌な事を思い出すだろ」と、銀ちゃんと清忠に止められた。
浅葱もちょくちょく来るようになった。彼は俺より少しだけ背が高く、茶髪で目が大きくて可愛らしい顔立ちをしている。
主に銀ちゃんの用事で来るんだけど、その後に必ず俺の所へ寄るんだ。
ある日に清忠がいる時に浅葱も来たから、同い年同士で夜遅くまで騒いで、二人共泊まっていく事になった。
俺の部屋に布団を敷いて三人で寝る準備をしていると、浅葱が「凛はここじゃないだろ」と俺を部屋から追い出そうとする。
「えっ、なんで?」
「銀様が寂しがるから。ほら、早く下へ行って。おやすみ~」
そう言って、バタンとドアを閉めてしまった。
俺は慌ててドアを開けようとしたけど、どんな術をかけてるのか、全く開ける事が出来ない。
仕方なく一階へ降りて銀ちゃんの部屋の前に立つ。どうしようかと迷ってると、扉がすっと引かれて浴衣姿の銀ちゃんが出て来た。
「凛?どうした…」
俺は眉尻を下げて銀ちゃんを見上げる。そんな俺を見て微笑むと、銀ちゃんは身体を横に避けて、俺を部屋に入れてくれた。
「浅葱に…俺は銀ちゃんの部屋で寝ろって言われて追い出された…。ごめん銀ちゃん…、俺、邪魔…」
「いいよ、一緒に寝よう。ほら、こっちにおいで」
優しく腕を引かれるけど、俺は躊躇ってしまう。
「あ…、じゃあ布団取って来なきゃ…」
「大丈夫だ。俺の布団はかなり大きいから二人でも寝れる。ほら…」
「え…、う、ん…。お邪魔します…」
俺は抗うのを諦めて、そっと畳に敷かれた布団の端に横たわる。銀ちゃんも俺の方に身体を向けて寝転んだ。
俺は、恥ずかしくなって銀ちゃんにごろりと背中を向ける。すると俺の背中から銀ちゃんが腕を回してきて、びくりと肩が跳ねてしまった。
銀ちゃんの身体に触れる背中が熱くて、どきどきと胸がうるさく鳴り響く。銀ちゃんが俺の髪に顔を埋めて「凛…」と囁いた。
「…なに…?」
「…おまえは昔から甘くていい匂いがするな…。とても落ち着く。凛…、来週から大学が夏休みになる。休みに入ったら、俺はしばらく実家に帰らないといけないのだが、一人でも大丈夫か?」
「えっ。しばらくって…どれくらい?」
俺は急に不安になって、身体を返して銀ちゃんに向かい合うと、整った顔を見上げた。
銀ちゃんは俺の前髪をそっと撫で付けながら、優しく俺を見つめ返す。
「十日か二週間か…。少し長くなる。すまない。清忠や浅葱、織部におまえの事を頼んでおくから。契約の事も確認してくるよ。大丈夫だ、おまえの誕生日までには間に合わせる…」
「ん…、わかった。ごめんね…」
「なんで凛が謝る?男と結婚の約束をしてるなど嫌だろう…、早くなんとかしないとな…」
「ん…」
銀ちゃんの言葉に、ずきんと大きく胸が痛んだ。その言葉を返せば、銀ちゃんが、男の俺と結婚の約束をしてるのが嫌だと言ってるようなものだ…。
そう思ったら、鼻の奥かツンとして目の奥が熱くなり、涙がじわりと滲んできた。
俺は、それを銀ちゃんに見られたくなくて、そっと銀ちゃんの胸に顔を寄せる。
俺の目から零れ落ちた一粒が、ゆっくりと銀ちゃんの浴衣に吸い込まれていくのが見えた。
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