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41. 魅了……?
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「え、あれ……?」
柚姫の思考が、突如揺らぐ。
眠いような、宙に浮いているような感覚に、柚姫の足がふらふらと地面を彷徨う。
「柚姫!」
ぼーっと何も考えられなくなる柚姫を、トワの声が正気に戻した。
はっと我に返った柚姫は、きょろきょろと辺りを見回す。
「え、今、私……?」
「お前は今、こいつの魅了にかかりかけてた」
「魅了……?」
「そうだ。相手の心、記憶を意のままにできる、吸血鬼の能力だ」
意のまま? 操るってこと……?
混乱しながら、けれど今の感覚には何となく覚えがあった。
チトセさんと一緒にいるとき。今みたいに不思議な感覚に陥ったことが、あったような気がする……。
チトセは、悪戯を見抜かれた子供のように笑った。
「ああ、気づかれてしまいましたね。でも、そうでもしないと柚姫は中々靡いてくださらないので」
見るからに淋しそうな表情を浮かべ、迫るように顔を近づけてきた。
「わわわ、もういいですよ。あ、いえ、あんまり良くはないですけど!」
慌てる柚姫を見て、チトセは離れてくれた。と思ったら、トワが猫の首根っこを捕まえるように、チトセの身体を柚姫から引き離していた。
「柚姫に近づくな、狼」
「全く、無骨な方ですね」
先ほどの悲しげな表情は何処へやら、チトセは楽しげな笑みを浮かべながら、トワに触れられた首をこれ見よがしにはらってみせる。
「ふん、魔力で柚姫の心をどうにかしようとする不作法者に、言われたくはないな」
「私はどんな手を使っても、柚姫を手に入れて見せますよ。そう言うわけですので、覚悟なさい、柚姫」
「え……」
再びチトセの関心が柚姫へと戻ってきて、柚姫はびくっとする。向けられた銀色の瞳に危さを感じ、さっと顔を背けた。
あれ、でも……?
チトセさんがその気になれば、私の心なんて簡単に支配して、思い通りにできた筈なのに、何でそうしなかったんだろう……
チトセの顔色を窺うようにして恐る恐る顔をあげると、彼は手に提げている大きな紙袋を、柚姫に差し出した。
「ああ、そうでした。これはお近づきの印です。良かったら」
「え? えっと……」
眉間にしわを寄せるトワが気になって、なかなか受け取れずにいると、
「あ……」
チトセは柚姫の手をとり、袋を握らせた。
「それでは良い夜を、柚姫」
チトセはふぁさっと尻尾を揺らし、以前とは反対方向の部屋へと戻って行った。
柚姫の思考が、突如揺らぐ。
眠いような、宙に浮いているような感覚に、柚姫の足がふらふらと地面を彷徨う。
「柚姫!」
ぼーっと何も考えられなくなる柚姫を、トワの声が正気に戻した。
はっと我に返った柚姫は、きょろきょろと辺りを見回す。
「え、今、私……?」
「お前は今、こいつの魅了にかかりかけてた」
「魅了……?」
「そうだ。相手の心、記憶を意のままにできる、吸血鬼の能力だ」
意のまま? 操るってこと……?
混乱しながら、けれど今の感覚には何となく覚えがあった。
チトセさんと一緒にいるとき。今みたいに不思議な感覚に陥ったことが、あったような気がする……。
チトセは、悪戯を見抜かれた子供のように笑った。
「ああ、気づかれてしまいましたね。でも、そうでもしないと柚姫は中々靡いてくださらないので」
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「わわわ、もういいですよ。あ、いえ、あんまり良くはないですけど!」
慌てる柚姫を見て、チトセは離れてくれた。と思ったら、トワが猫の首根っこを捕まえるように、チトセの身体を柚姫から引き離していた。
「柚姫に近づくな、狼」
「全く、無骨な方ですね」
先ほどの悲しげな表情は何処へやら、チトセは楽しげな笑みを浮かべながら、トワに触れられた首をこれ見よがしにはらってみせる。
「ふん、魔力で柚姫の心をどうにかしようとする不作法者に、言われたくはないな」
「私はどんな手を使っても、柚姫を手に入れて見せますよ。そう言うわけですので、覚悟なさい、柚姫」
「え……」
再びチトセの関心が柚姫へと戻ってきて、柚姫はびくっとする。向けられた銀色の瞳に危さを感じ、さっと顔を背けた。
あれ、でも……?
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「ああ、そうでした。これはお近づきの印です。良かったら」
「え? えっと……」
眉間にしわを寄せるトワが気になって、なかなか受け取れずにいると、
「あ……」
チトセは柚姫の手をとり、袋を握らせた。
「それでは良い夜を、柚姫」
チトセはふぁさっと尻尾を揺らし、以前とは反対方向の部屋へと戻って行った。
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