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7. 夜空の少女 ~ようこそ、死なずの村――エリュシラーナへ~
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「うそ、さっきまではこんな場所、なかったのに……」
いつの間にか、違う世界に迷い込んでしまったのだろうか。
何処までつづいているのか分からない、むき出しの大地。
あちこちに瓦礫の山がある。
ヒヒーンと馬のいななきが聞こえ、イシュタは手綱の先をたどりほっとする。
「マルス、よかった……」
イシュタと長旅を共にした愛馬のマルスは、変わらずにイシュタのそばにいた。
「ここは……」
何処だろう、そう言おうとした時、
「お客さんなんて、いつぶりかしら……」
さきほど聞いた声がした。
イシュタは空を振り仰いだ。
しかし、声の主は空ではなく、高く積み上げられた瓦礫の山の上にいた。
「だ……れ……?」
「わたしはフェルル。ようこそ、死なずの村――エリュシラーナへ」
瓦礫に腰かけた少女は、にっこりと微笑んだ。
ふわりと飛び降り、音もなくイシュタの目の前に着地する。
「あなたはだれ?」
イシュタは慌てて答えた。
「あ、ごめんなさい。ぼくは、イシュタ」
「そう、イシュタっていうの。いい名前ね」
「あ、ありがとう。君……フェルルの名前もきれいだと思うよ」
「ほんと? うれしいわ」
フェルルは笑みをこぼした。
ふしぎな少女だった。
神殿の巫女が着るような、純白で光沢感のある衣装。
夜を思わせる深い瑠璃色の瞳に、星の光をつむいだような銀色の髪――
まるで、夜空のような少女だ。
「それより、ここが《死なずの村》って、どういうこと? だって……」
イシュタは瓦礫しかない景色を見渡した。
ふふ、とフェルルは笑う。
「だって、何もない?」
先に言われ、イシュタは口をつぐんだ。
フェルルはさびしそうに微笑むと、信じられないことを口にした。
「ええ、そう。何もないわ。だって、この村は滅んだのよ。遠い昔にね」
いつの間にか、違う世界に迷い込んでしまったのだろうか。
何処までつづいているのか分からない、むき出しの大地。
あちこちに瓦礫の山がある。
ヒヒーンと馬のいななきが聞こえ、イシュタは手綱の先をたどりほっとする。
「マルス、よかった……」
イシュタと長旅を共にした愛馬のマルスは、変わらずにイシュタのそばにいた。
「ここは……」
何処だろう、そう言おうとした時、
「お客さんなんて、いつぶりかしら……」
さきほど聞いた声がした。
イシュタは空を振り仰いだ。
しかし、声の主は空ではなく、高く積み上げられた瓦礫の山の上にいた。
「だ……れ……?」
「わたしはフェルル。ようこそ、死なずの村――エリュシラーナへ」
瓦礫に腰かけた少女は、にっこりと微笑んだ。
ふわりと飛び降り、音もなくイシュタの目の前に着地する。
「あなたはだれ?」
イシュタは慌てて答えた。
「あ、ごめんなさい。ぼくは、イシュタ」
「そう、イシュタっていうの。いい名前ね」
「あ、ありがとう。君……フェルルの名前もきれいだと思うよ」
「ほんと? うれしいわ」
フェルルは笑みをこぼした。
ふしぎな少女だった。
神殿の巫女が着るような、純白で光沢感のある衣装。
夜を思わせる深い瑠璃色の瞳に、星の光をつむいだような銀色の髪――
まるで、夜空のような少女だ。
「それより、ここが《死なずの村》って、どういうこと? だって……」
イシュタは瓦礫しかない景色を見渡した。
ふふ、とフェルルは笑う。
「だって、何もない?」
先に言われ、イシュタは口をつぐんだ。
フェルルはさびしそうに微笑むと、信じられないことを口にした。
「ええ、そう。何もないわ。だって、この村は滅んだのよ。遠い昔にね」
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