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海にかえった人

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快晴の月曜日。
僕の心と裏腹に空は眩しい。
「はあ...。」
休みを挟んでの出社はホントにだるいし、寝たからといって疲れが取れた気もしない。
肩こりがひどいので腕を何度か回してストレッチをする。
その後、慣れた手つきで目玉焼きを作りトーストに乗せてマヨネーズを絞る。
月曜日の朝は決まってコレ。
僕は別に金には困っていないし、出社までまだ余裕はあるし、コレが大好物というわけでもないのだからやっぱり、この手抜き料理は気力の無さのあらわれなんだと思う。
「なにが楽しくてこんな生活してるんだか」
できた目玉焼きトーストを頬張りながらポツリと口にすると、余計に気分はどんよりとした。
僕は気を紛らわすために手元の赤いボタンを押す。
目の前の液晶画面に、陽気な音楽と共に柔らかな笑顔を浮かべるキャスターの姿が映し出された。
「モーモーテレビが午前7時をお伝えします」
言い終わるとすかさずキャスターは何枚かの紙の束を受け取って、表情を変化させた。
「ここで速報です。」
いいニュースではなさそうだ。
僕は熱いコーヒーを口にして顔をしかめる。
「今日の午前6時30分頃、愛知県××市○○港沿岸にて1人の女性の遺体が発見されました。遺体が発見された〇〇港では女性の靴と見られるものと共に遺書のようなものも発見されており、そこから女性が高校生の波際カナタさんであり、自殺の疑いがあるとして警察は捜査を続けています。」
なんだ、ほらやっぱり。
キャスターが真剣な表情をしたら十中八九こうゆうことだ。
まあ、大規模な事故とかじゃなくてよかった、かな。
今の「安堵」という感情に少し罪悪感を覚えてもう一度コーヒーを口にする。
「しかし、なんというか歯切れが悪いなあ。遺書があったなら自殺で間違いないはずなのになんで「疑い」なんだろ。いや、殺されたかもしれんのか、、、?犯人が偽造した、とか。いやでもなあ。だったら遺体になんらかの外傷があったりしない?まあ、どうでもいいけど」
テレビ画面には死亡時刻だと思われる昨夜の海の様子が映し出されている。
最近台風が来た影響もあり、海はかなり荒れていた。
(にしても愛知県かー。名古屋からは遠いんだろうな、そんな港しらないし)
僕は名古屋暮らしをしているが市はかろうじて知っていれどただ名前だけ覚えているようなものだった。
「あ、確か××市って。ウチの社員にそこから出社してる奴おったな」
新人採用の時ある男に、かなり遠くに家があるようだったから引っ越しをするのかと聞いたことがあるのだが、彼ははっきりと断っていた。
とても印象的だった。
確かその男、「柏出透」は今も××市に暮らしているはずだ。
なんだか彼に同情を覚えた。
透は真面目ゆえに時事を知るためにと言って、ニュースもよく見る。
きっと彼の目と耳にはもうすでに、この事件が入っているのだろう。
彼自身「月曜から不吉だな」とか思っているかもしれない。
「ご愁傷様っ。ごちそうさま。」
立ち上がって食べカスを集めたお皿とコーヒーカップを持ち上げる。
テレビは次の話題にうつっていて、華やかな音楽と共にカフェのご当地モーニングの紹介をしていた。


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