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【夜の治験 初級編】 そうして始まるメイドとしての日々 

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(何?……今の……なんだったの??)

 ビクン、ビクンと身体を痙攣させながら、今しがた己の身体に起こったことが理解できず、ファルナは激しく混乱する。

 ただついさっきの嵐のような刺激は止まり、身体の中心にいたグリジットの指がゆっくりと引き抜かれていくのをなすすべも無く見送ることしかできない。

 一抹の寂しさを覚えたファルナは、ゆっくりと目を開ける。

 開けた視界には、微笑むグリジットがいた。

「上手に達しイケたようだね」
「……いけた?」
「女性が気持ち良い感覚の限界を超えると、さっきみたいになるんだ。怖かったかい?」

 グリジットの問いかけに、ファルナはちょっと悩んで……でも、こくりと頷く。 

「……そうか。お手伝い初日だったのに、無理をさせてしまったね。悪かった」
「いいえ」

 申し訳なさそうに眉を下げるグリジットを見たくなくて、ファルナは即座に首を振った。

 そして、何かを言いかけたグリジットを遮るように、慌てて口を開く。

「ねえ、先生。聞いても良いですか?」
「なんだい?」
「私、ちゃんとお手伝いできましたか?」
「……っ」

 無邪気に尋ねたファルナに、グリジットは虚を突かれたように目を丸くした。

 けれども、すぐにふわりと笑う。その笑みはどう見ても使用人に向けるものでもなく、また治験者に向けるそれでもなかった。

「ああ、できたよ。君のおかげで助かった」
「へへっ。ありがとうございます」
「お礼を言うのは私の方なんだけれどな」

 苦笑を浮かべるグリジットに、ファルナは照れくさそうに口元を覆って笑い声を立てる。

 ただその無邪気さと無防備さは、今のグリジットにはあまりに毒だった。

「……ファルナ、今日はこのまま休みなさい」
「え?でも、ここは先生の」
「いいから。そんなことは気にしなくて良い」
「……でも」
「私はまだやることがあるから仕事部屋に戻る。だから気兼ねなく休むと良い。部屋の明かりも落としておこう」

 そう言いながらグリジットは乱れたファルナの衣類を整え、毛布をそっとかける。

 次いで、トントンと幼子をあやすように毛布の上を軽く叩いて、空いている方の手でファルナの瞼を覆った。

「良い子だから、もう寝なさい」
「……はい」

 頷いた傍から、ふぁーとあくびをしたファルナに、グリジットはくすりと笑う。

 そして、そのままファルナが深い眠りへと落ちるのをずっと待った。
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