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第五章
あ!これドラマで良くあるやつ②
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定時を告げるチャイムが鳴り、美亜と香苗は綾乃に見送られエレベーターへ向かう。
フロアを出る際に課長をチラッと見たけれど、彼はしかめっ面でパソコンと睨めっこをしていた。言外に今日のボランティア活動は無いと告げられたようで、美亜はがっくりと肩を落とす。
「……あーあ、ビールでも飲もっかな」
ここ最近、課長のおかげで家の飲みをする機会がめっきり減った。
一人でも充実した時間を過ごすのが美亜のイメージするキラキラ女子ではあるが、今はちょっと難しい。この週末は、さぞ味気ないものになるだろう。
ならいっそ給料日前だけれど、金ラベルを解禁してテンションをあげようか。
ただうっかり寂しさから深酒をして兄に連絡しないよう、ほどほどの量にしようと美亜はひっそりと誓いを立てる。
そんなこんなでブツブツ呟く美亜を見て、香苗は不思議そうな顔をした。
「あら星野さん、週末は一人なの?」
絶賛リア充中の香苗だけれど、世界中の人間が週末を楽しむものだと決めつけているわけではない。
博の噂の真相を伝えたから、てっきり彼と良い関係になっていると思い込んでいるのだ。
「一人ですよー。ロンリーですよー。ぼっちですよーだ」
半ばやけくそ気味に返せば、香苗はクスクスと笑う。
もともとクール美人な彼女は恋人のおかげで更に美しさに磨きがかかっている。でも持ち前の姉御肌は健在だ。
「拗ねない、拗ねない。きっと彼から連絡あるわよ。ビール飲みながら、お肌の手入れでもしてなさいよ」
「ははは」
そりゃあ博から連絡が来たら嬉しいけれど、現在美亜が望んでいるのは課長からの連絡だ。
でも素直にそれを伝えれば超が付くほど、ややこしい話になる。だから美亜は笑って誤魔化す。と、同時にエレベーターホールに到着した。
タイミング良く到着したエレベーターは、既に激混み状態。そこにスルリと二人は体を滑り込ませ、息を潜めて1階に到着するのを待った。
1階のエントランスホールから流れるように右に左にと思い思いの方向に進む社員と歩調を合わせて、美亜と香苗も外に出る。
しかし歩道に出た途端、思わず立ち止まってしまった。
「うわっ、すごい人!」
美亜たちの職場は市内の交通拠点でもあり、オフィスビルやデパートが聳える最も活気あふれるエリアに自社ビルを構えている。
特にクリスマス間近のこの季節、周辺は華やかなイルミネーションで飾られているため、カップル達にとっては格好のデートスポットになっている。
とはいえ美亜たちにとっては、ただの通勤路。シャンシャンと弾むクリスマスソングと煌びやかな灯りに浮かれるより、歩きにくさの方が勝ってしまう。
「あーあ、うちの職場ってさ、わざわざ見に来なくても毎日このイルミを堪能できるのは役得だけど、新鮮さに欠けるのが難点よね」
「確かにそうですよね」
パールカンパニーで派遣社員として働き始めて二年半の美亜は、香苗の発言に激しく同意する。
「ま、でも好きな人と見たら新鮮なんだけどね。ってことで、お疲れ。また来週ね」
「はーい。お疲れ様でした」
駅とは逆方向に向かう香苗は、この後デートなのだろう。ヒールの音がクリスマスソングより弾んでいる。
それをぼんやりと見つめる美亜だが、香苗が人混みに消えたのを機に身体を駅の方へと向けた。
「デパ地下でも寄ってみるか」
普段は節約生活を己に課しているが、たまには贅沢も良いだろう。
そうでもしなきゃ、週末を乗り切れない。っていうか、こんな時に散財しないでいつするんだ。
などと自分に言い訳をしながら、駅に直結しているデパートに足を向けた途端、背後から声を掛けられた。
フロアを出る際に課長をチラッと見たけれど、彼はしかめっ面でパソコンと睨めっこをしていた。言外に今日のボランティア活動は無いと告げられたようで、美亜はがっくりと肩を落とす。
「……あーあ、ビールでも飲もっかな」
ここ最近、課長のおかげで家の飲みをする機会がめっきり減った。
一人でも充実した時間を過ごすのが美亜のイメージするキラキラ女子ではあるが、今はちょっと難しい。この週末は、さぞ味気ないものになるだろう。
ならいっそ給料日前だけれど、金ラベルを解禁してテンションをあげようか。
ただうっかり寂しさから深酒をして兄に連絡しないよう、ほどほどの量にしようと美亜はひっそりと誓いを立てる。
そんなこんなでブツブツ呟く美亜を見て、香苗は不思議そうな顔をした。
「あら星野さん、週末は一人なの?」
絶賛リア充中の香苗だけれど、世界中の人間が週末を楽しむものだと決めつけているわけではない。
博の噂の真相を伝えたから、てっきり彼と良い関係になっていると思い込んでいるのだ。
「一人ですよー。ロンリーですよー。ぼっちですよーだ」
半ばやけくそ気味に返せば、香苗はクスクスと笑う。
もともとクール美人な彼女は恋人のおかげで更に美しさに磨きがかかっている。でも持ち前の姉御肌は健在だ。
「拗ねない、拗ねない。きっと彼から連絡あるわよ。ビール飲みながら、お肌の手入れでもしてなさいよ」
「ははは」
そりゃあ博から連絡が来たら嬉しいけれど、現在美亜が望んでいるのは課長からの連絡だ。
でも素直にそれを伝えれば超が付くほど、ややこしい話になる。だから美亜は笑って誤魔化す。と、同時にエレベーターホールに到着した。
タイミング良く到着したエレベーターは、既に激混み状態。そこにスルリと二人は体を滑り込ませ、息を潜めて1階に到着するのを待った。
1階のエントランスホールから流れるように右に左にと思い思いの方向に進む社員と歩調を合わせて、美亜と香苗も外に出る。
しかし歩道に出た途端、思わず立ち止まってしまった。
「うわっ、すごい人!」
美亜たちの職場は市内の交通拠点でもあり、オフィスビルやデパートが聳える最も活気あふれるエリアに自社ビルを構えている。
特にクリスマス間近のこの季節、周辺は華やかなイルミネーションで飾られているため、カップル達にとっては格好のデートスポットになっている。
とはいえ美亜たちにとっては、ただの通勤路。シャンシャンと弾むクリスマスソングと煌びやかな灯りに浮かれるより、歩きにくさの方が勝ってしまう。
「あーあ、うちの職場ってさ、わざわざ見に来なくても毎日このイルミを堪能できるのは役得だけど、新鮮さに欠けるのが難点よね」
「確かにそうですよね」
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「ま、でも好きな人と見たら新鮮なんだけどね。ってことで、お疲れ。また来週ね」
「はーい。お疲れ様でした」
駅とは逆方向に向かう香苗は、この後デートなのだろう。ヒールの音がクリスマスソングより弾んでいる。
それをぼんやりと見つめる美亜だが、香苗が人混みに消えたのを機に身体を駅の方へと向けた。
「デパ地下でも寄ってみるか」
普段は節約生活を己に課しているが、たまには贅沢も良いだろう。
そうでもしなきゃ、週末を乗り切れない。っていうか、こんな時に散財しないでいつするんだ。
などと自分に言い訳をしながら、駅に直結しているデパートに足を向けた途端、背後から声を掛けられた。
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