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4-2.冬の嵐(後編)

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「えっと……ごめん、今の言葉もう一度最初から言ってくれる?」
「はい!?……や、えっと……申し訳無いですが……できません」

 ものすごい覚悟で語ったのに、それをぶった切られたのだ。もう一度話すことなど、モニカはどうあっても無理だった。

 なのにリックは「そこを何とか」と言ってくる。

 そんな無茶ぶりを超えた要求に、モニカはいっそ死ねと言われた方がまだマシだとすら思ってしまう。

「じゃあさぁ、モニカちゃんは本気でクラウディオさんの妹になるつもりだったかどうかだけ答えてよ」
「……っ」

 最大の譲歩をしてやると言いたげなリックに、モニカは彼が王族だというのも忘れてジト目で睨んでしまう。

 けれど、リックはじっと返事を待っている。あと1分沈黙し続けていたら、強行手段を取るよとでも言いたげに。

「私……領主様に娘にだけはしないでくれとお願いしました。だから、家族という定義に当てはめるなら、残るは妹としかないと思っています」

 ─── ガッシャン。

 リックから目を逸らしてモニカが答えた瞬間、なぜか廊下の方で、何かが落ちたような物音が聞こえた。

 確かエバが廊下を掃除中だったから、モップでも滑り落としてしまったのだろうか。
 
 珍しいこともあるものだと、モニカがそこに意識を向けようとしたが、それよりも早くリックがずいっと前屈みになって両肩を掴まれてしまった。

「ねえ……モニカちゃん、それ本気で言ってるの?」

 どうか間違いであれと目で訴えているリックに、モニカは唇を噛んだ。

(妹にも相応しくないって思われているのは流石にキツイなぁ)

 モニカは、クラウディオが自分を受け入れる覚悟を持ってくれたように、せめて彼が後ろ指を刺されるようなことがないようにと、ファネーレ邸ではこっそり寝る間を惜しんでマナーブックを読み漁っていたのだ。

 もちろん、そんなことは付け焼き刃でしかないことはわかっている。
 
 でも努力しないと進まないと思ったから、人知れず頑張っていたのだ。

 なのに、他人の……しかも、雲の上の存在から否定されてしまうと、心がポッキリと折れてしまいそうになる。

「……領主様が私を憐れんで家族になろうと提案してくれたこと、私はちゃんと弁えています。あのっ、貴族の家族という認識は庶民とは基準が違うんですよね?……無知故に身の程を弁えず、妹などと口に出してしまっていたこと、どうかお許しください。─── も、もちろん領主様が奥様をお迎えになる際は出しゃばったりしませんし、奥様を不快な気持ちにさせたりもしないと誓います。なので……えっと、……下働きということで、このままファネーレ邸に居させていただければ嬉しいと……いえ、それすら過ぎたることですよね?ああ……本当に申し訳なく思っています」

 どんどん渋面になるリックに怯え切ったモニカは、顔面蒼白になりながらクラウディオと距離を置く発言を続けていたが、

「うん、ちょっとモニカちゃん落ち着こう」

 見るに見かねたリックは、モニカに対して本日2度目の待ったをかけた。
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