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一部 おいとまさせていただきますが......何か?

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 ☆ご注意です☆

 今回のお話と、次の話(?)は、R15ギリギリの残酷な描写となります。ぶっちゃけ、これまで以上……いや多分MAXで不快な気持ちになると思います。

 なので残酷描写が苦手な方は、読み飛ばしを推奨させていただきます。※あとで、どんなことがあったのかはわかるようにします。

 そういうのもOK!っていうか、予測してたわ。だってこの世界クズしかいないしねーっと思っていただける方のみ、↓↓↓(続き)をお読みくださいm(_ _"m)


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 
 力任せにアルビスを突き飛ばしたのに、彼は硬い岩のようにびくともしなかった。とても悲し気な表情を浮かべるだけ。

(この人はいつもそうだ。自分だけが辛くて哀しい思いをしてると思い込んでいる!)

 悔しくて佳蓮は顔を歪めれば、アルビスは更に悲しい表情になる。まるで佳蓮のせいだと責め立てるかのように。

「もう、うんざりなのっ。嫌なの!!」

 佳蓮は窓のガラスが揺れる程の大声で叫んだ。
 
 もうアルビスがどんな顔をしているかなんて、どうでも良かった。

「私を帰してっ。元の世界に戻らせてっ」

 アルビスの胸倉を掴んで、佳蓮は全身全霊を込めて叫んだ。

 その悲痛な訴えは、使う言語が違って言葉が通じ合わなくても、言葉を扱うことができない獣だったとしても、届けることができるほど強いものだった。

 けれど、アルビスだけには届かなかった。

「何度も同じことを言わせるな。お前は元の世界には戻れない」

 ──パシンッ

 あまりのアルビスの言葉に、佳蓮はその顔を叩いていた。

「黙りなさいよ。この犯罪者っ」
「犯罪者?随分な物言いだな」

 アルビスは平手を受けたことより、罪人扱いされたことの方が気にくわないようだ。

 ほんの少し赤くなった頬に意識を向けることなく、佳蓮の顎を乱暴に掴んだ。

「さすがにそれは、聞き捨てることはできないな」
「じゃあ何?皇帝陛下さまと崇め奉ればご満足いただけるわけ?」
「……そんなことは言ってはいないだろう」
「はっ」

 佳蓮は思いっきり鼻で笑った。

 途端にアルビスの目が細くなる。深紅がさらに深みを増し、まるで血の色のようだった。

「……青い血の色をしているくせに。人間ぶっちゃって。大っ嫌いっ」

 ギリギリと歯ぎしりせんばかりに睨みながら佳蓮は吐き捨てると、あからさまに怒りの表情を浮かべたアルビスに煽り言葉を投げつける。

「ご立腹ですか?なら、私も独房に入れてよ。あんたは気に入らないことがあれば、誰にも文句を言わせずに好き勝手なことができる人間なんでしょ?!」
「なっ」

 予想もしなかった佳蓮の言葉に、アルビスは息を呑んだ。

「……カレン、君はずっと私のことをそんなふうに思っていたのか?」
「だとしたらどうするの?」

 質問を質問で返す佳蓮に、アルビスはカッとなる。しかし額に手を当て、息を吐く。怒りを抑えこんでいるようだ。

「カレン。君が感情的になっているのはわかった。だから、私はここまでの君の暴言はすべて忘れることにする。リュリュのことも君が望むなら、すぐに出す。だから一つだけ教えてほしい。実は……ずっと聞きたいことがあった」
「な、なによ」

 真剣な口調で問われ、佳蓮はたじろぎながらも続きを促した。

「君が元の世界に戻りたいのは、他の男に逢いに行きたいからなのか?」
「……」

 なんて低俗なことを聞くのだろうと心底呆れ果て、佳蓮は半目になった。

 5人も愛人を抱え込んでいるこの男の脳内は、この程度なのか。心底馬鹿馬鹿しい。

「だとしたら、どうするの?素直に連れてってくれ──んっ」

 いっそ傷付いて壊れてしまえばいいのにという思いから口にしたその言葉は、アルビスの唇によって塞がれてしまった。

 しかもそれは、互いの唇を触れ合わせるだけのものではなかった。

 突然の出来事に佳蓮が驚いて声を上げた拍子に、ぬるっとした生暖かいものが口内に侵入してきた。アルビスは己の舌を使って、佳蓮の口の中を縦横無尽に蹂躙する。

 佳蓮は何をされているのか最初はわからなかった。けれどすぐに気付く。アルビスが自分に激しい口づけをしていることを。

(嫌だ!気持ち悪い、苦しい。どいて!!)

 佳蓮はこれまで異性から口づけをされたことは、一度もなかった。アルビスとのこれが、初めての経験だった。

「──っん……はぁ」

 酸欠で視界が狭まり意識すら遠退きかけた頃、ようやっとアルビスは唇を離した。

 佳蓮はアルビスの唇が離れるや否や、荒い息を繰り返しながら必死に手の甲で自分の唇を拭う。

「最低」

 低く呟いたそれは、アルビスがギリギリ保っていた理性を奪うのには十分なものであった。

「そこまで、私を拒むのか……っ……!」

 荒々しく佳蓮の肩を掴もうとした大きな手は、寸前のところで止まり、何かに耐えるかのように握りこぶしに変わった。

 佳蓮が、泣いていたのだ。

 大粒の涙を溢しながら、佳蓮は手の甲で何度も唇を擦り続けていた。その姿を見て、アルビスは自分の中に潜む雄の部分をなんとか散らす。

「手荒なことをしてしまった。すまない……こうされるのは、初めてだったようだな」

 これ以上無いほど申し訳ない口調で言ったアルビスの言葉には、とても余計なものが含まれていた。

 佳蓮が恥辱で顔を歪める。アルビスが涙で濡れた頬を拭おうと手を伸ばすが、それを乱暴に振り払う。

 そしてに憎しみに満ちた視線を向けながら、こう言った。

「と……冬馬は、こ、こんなことなんてしないもん!」

 佳蓮の言葉は、この場においてもっとも口にしてはいけないものだった。

 アルビスの理性が外れる。自分の中に潜む衝動を、もう抑え込むことができなかった。

「二度と、その名を口にするな。他の男の名を呼ぶことは許さない」
「はっ、馬鹿じゃないの──いやっ、放してっ」

 鼻で笑って一蹴しようとした佳蓮だったけれど、今回はそうはできなかった。
 
 気づけばアルビスに抱き上げられていた。暴れる間もなくベッドに投げ捨てられる。

 慌てて身を起こそうとするけれど、すぐにアルビスの大きな身体が覆い被さってきて逃げ出すことができない。
 
「君は私の妻になる人間だ。金輪際、他の男の名を紡ぐことができないよう、その魂に刻み込む必要があるな」

 力づくで組み敷かれ、耳元でぞっとするような低い声が聞こえた瞬間、目に映る光景が変わった。

 天井も壁もない、真っ白な空間。しかしベッドはあり、そこでアルビスに組み敷かれている状況は変わらない。

「……な、なに、ここ」
「邪魔が入らぬよう、二人だけの空間を作った。どれだけ叫んでも、暴れても、君はどこにも逃げられない」

 クツクツと喉の奥で笑うアルビスは、雄の匂いをまき散らしている。

 清い身体の佳蓮とて、この男が何をしたいのかなど容易に想像がつく。

「や、やだ……やめ、やめて……」

 カチカチと歯を鳴らしながら佳蓮が懇願しても、アルビスはローブを脱ぎ捨てシャツのボタンを外していく。

 アルビスの鍛え抜かれた身体が露わになる。

「それでは、始めようか」

 獲物を追い込む獰猛な野獣のように目をギラギラさせながら、アルビスはカレンのアンダードレスに手をかけた。

 それからアルビスが作り上げた真っ白な織の中で、佳蓮は初めての苦痛に泣き叫び、やがてその声はか細い糸のようなすすり泣きに変わった。
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