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一部 おいとまさせていただきますが......何か?(修正終わってます)

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 セリオスの口調は語尾が震えていて、保身を取るかどうかで葛藤しているのがありありとわかる。

 佳蓮は、勇気を出してセリオスに一歩近づいた。
 
「デマカセ?ねえ、それって誰が証明してくれるの?」
「だ、誰がって……それは……」

 セリオスはあからさまに狼狽えているが、リュリュの拘束を解いてはくれない。

(ちっ。しぶといな、この人)

 心の中で舌打ちした佳蓮は、更にセリオスを追い込んでいく。

「いっそどっちの証言を信じてもらえるか試してみよっか?でもね、言っておくけど、ここには私とリュリュさんと、あんたの3人だけ。ぶっちゃけ2対1の証言で、どっちの証言が信用されるのかなぁ?私、どうやら結構な位置にいるらしいし……ねぇ、リュリュさん、皇帝陛下のお気に入りに手を出しちゃったら、どうなるの?」
「極刑でございます」

 間髪入れずに、リュリュは佳蓮の欲しい言葉を紡いでくれた。瞬間、セリオスは屈辱で顔を歪めた。

(よし!あとちょっとで、この人は保身に走る)

 確信を持った佳蓮は、セリオスを追い詰める。 

「ねーえー、セリオスさぁーん。極刑って怖いよね?しかも冤罪で首を切られちゃうなんて、嫌だよねぇー」
「……っ」
「私さぁ、別にあなたが死ねばいいと思っているわけじゃないの。見逃して欲しいって言っているだけなんだけどなぁー」
「……あ、あなたという人は……」

 飴と鞭の要領で、佳蓮は今度は柔らかい口調でセリオスを諭す。

「今の地位、大事なんでしょ?守りたいんでしょ?私、あなたのそれになんか興味ないの。そんなの奪ったところで何の得にもならないし。勘違いしないでほしいんだけど、こっちがお願いしてるのは一つだけ。見なかったことにして。それだけだよ。……ねぇ、お祈りしてたんでしょ?今すぐ神殿に戻って続けてよ」

 佳蓮は膝を折り、セリオスと目を合わせた。でも彼は頷かなかった。

「……む、無理です。できません。どうか離宮にお戻りください」

 苦渋の決断をしたセリオスの顔を、佳蓮はそのまま蹴り付けたい衝動に駆られた。だがそうしたところで、ほんの僅かな鬱憤が晴れるだけだ。

 佳蓮は感情を押さえ込むために、あからさまにため息を吐く。

「そう。ウザいほど頑固者なんだね。あっそれとも、そうやってなぶられるのが好きなだけだったりして……このクソ変態、やっぱ極刑だわ」

 その瞬間、ぷっとリュリュが噴き出した。

 セリオスはというと、これ以上にないほど屈辱で歪んでいたけれど、絶対に意志は曲げないと強く瞳が訴えている。

 佳蓮とて引くに引けない状況なのだ。なら、もうとことん突っ走るしかない。

「じゃあ、そうやって意地を張り続ければいいよ……できるかどうかは時間の問題だと思うけどさ」 

 軽い口調でそう言うと、佳蓮はすくっと立ち上がった。

 次いで、身体に引っ掛かっているだけのドレスを脱ぎ捨てて、今度はアンダードレスに手を掛ける。

 今度はさっきより慎重に背中のボタンを一つ飛ばし、二つ目のボタンに手をかけたその時──

「やめなさいっ」

 今までとは違う切羽詰まった表情を浮かべて、セリオスが叫んだ。

 それを聞いた佳蓮は、やっと観念する気になったかとほっと胸をなでおろす。けれど、セリオスの続く言葉で、それは大きなる間違いであったことを知る。

「今すぐ服を着てくださいっ。陛下が後ろにいるんです!!」
「っ……!?」

 嘘かどうか真偽を確かめるよりも前に、セリオスが紡いだその名に体がびくりと反応してしまう。

 だがすぐ、いやいやまさかと不安を打ち消そうとするが、リュリュは餌を与えてもらっていない肉食獣と同じ檻に入れられてしまったかのような表情を浮かべていた。

 いやいやまさかが、一気に現実を帯びる。同時に、背筋に戦慄が走った。

 ──カツン。

 たったそれだけの靴音が、背後からやけに大きく響いた。

 振り返ったらいけないとわかりつつも、佳蓮はおずおずと振り返ってしまう。

 その瞬間、黒目がちのその瞳が限界まで開かれた。

「……どうし……て」

 ──あなたが、こここにいるの?

 佳蓮は最後まで言葉を紡ぐことができなかった。それほどに、怖かった。

 そして全く理解ができなかった。北の領地に視察に行っている彼が、今ここにいるなんて。

 飛行機も新幹線もないこの世界で、短時間で長距離を移動できるなんて使できっこないのに。

 混乱と恐怖で、佳蓮は現状を受け止めきれず頭が真っ白になる。セリオスとリュリュも絶望の表情を浮かべている。

 けれど、突如現れた彼だけは至極冷静だった。

 眉間に皺を寄せてはいるけれど、激昂している様子はない。美麗な顔を動かすことはせず、視線だけでこの状況を把握していた。

 そして長い間の後、佳蓮にこう言った。微笑みさえ浮かべて。

「ずいぶん騒がせてくれたな。これまでの意趣返しでもしたかったか?カレン……どうだ、これで満足したか?」
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