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一部 おいとまさせていただきますが......何か?
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佳蓮を呼び止めたのは、聖職者の衣装を身に着けたセリオスだった。
「こんな寒い日にお散歩ですか?ですが、あいにく、この先は行き止まりです」
こちらに近付きながら肩をすくめる彼に、佳蓮は後退しながら唇を強く噛んだ。
まるで意図したかのようなタイミングで邪魔者が現れてしまうと、リュリュを疑わざるを得ない。
ずっと猜疑心を捨てられなかったはずなのに、いざリュリュに裏切られたと思ったら情けないほど傷付いている自分に佳蓮は泣きたくなる。
なんだかんだ言っても、佳蓮はリュリュを信じたかった。
「あなた達はご存じ無いかもしれませんが……ここ実は神殿のすぐ真下なんですよ。でもって、神殿には地下があったりするんです。我々聖職者の為の祭壇がね。ちなみに私は午後の祈りを捧げていたんですよ。そうしたら聖杯の水が揺れましてね、こんなこと今までなかったので天変地異の前触れか、有り難い神託を戴けるのかと思ってそりゃあ驚きましたよ。ま、でも念の為って思ってここに来てみれば可愛らしいお嬢さん二人が仲良くお散歩中。こっちのほうが驚きだ」
佳蓮の心情など無視して、セリオスは砕けた口調でそう言った。けれどその瞳は、聖職者なのかと疑うほど鋭い。
そんな視線を受けて佳蓮は押し黙る。
(あとちょっと、実行に移すのが早いか遅いかだったら!)
きっと無事にアルビスの元から逃げ出すことができただろう。でもそれは、あくまでタラレバの話。時間は巻き戻せない。最悪な状況は、どうあっても最悪なままだ。
そんな絶望の色に塗りつぶされた隠し通路に、耳を塞ぎたくなるほどの怒声が響いた。
「グダグダ喋ってんじゃないわよっ、このエセ聖職者!あんたのところにだけ天変地異が起きれば良かったのに!!」
セリオスに罵声を浴びせたのは、佳蓮ではなくリュリュだった。
思わず佳蓮はリュリュを見るが、鬼の形相を浮かべたリュリュが怖くて、すぐに視線を逸らした。
セリオスといえば、軽く眉をあげただけ。
「リュリュさん。あなたは相変わらず口が悪い。この寒空の下、離宮の外でお二人を必死に護衛しているお兄様を不憫だと思わないんですか?」
「はっ、そのまま凍死すればいいじゃない」
リュリュの言葉に、佳蓮はそうだそうだと強く共感し、セリオスは呆れ切った顔で額に手を当てた。
「まぁ、兄弟間のことについては私はノータッチということでお好きに。でも、この状況は見過ごすことはできませ──」
額から手を離したセリオスは、中途半端なところで言葉を止めた。
いや正確にいうと、リュリュがセリオスに刃を向けたから、これ以上言葉を続けることができなかったのだ。
リュリュが武器を隠し持っていたことも、剣を扱えることも佳蓮は知らなかっし、戦う姿なんて想像すらしたことがない。
けれどもここにいるリュリュは、素早い動きでセリオスとの距離を詰めて、構えた長剣で何の躊躇いもなく彼を切りつけようとしている。
平和な世界で生まれ育った佳蓮にとって、それは恐ろしい光景のはずだが、冷静に駆け出す準備をしている。
なぜならリュリュが地を蹴る瞬間、「わたくしが時間を稼ぎます。どうか合図をしたら、お逃げください」と囁いてくれたのだ。
「こんな寒い日にお散歩ですか?ですが、あいにく、この先は行き止まりです」
こちらに近付きながら肩をすくめる彼に、佳蓮は後退しながら唇を強く噛んだ。
まるで意図したかのようなタイミングで邪魔者が現れてしまうと、リュリュを疑わざるを得ない。
ずっと猜疑心を捨てられなかったはずなのに、いざリュリュに裏切られたと思ったら情けないほど傷付いている自分に佳蓮は泣きたくなる。
なんだかんだ言っても、佳蓮はリュリュを信じたかった。
「あなた達はご存じ無いかもしれませんが……ここ実は神殿のすぐ真下なんですよ。でもって、神殿には地下があったりするんです。我々聖職者の為の祭壇がね。ちなみに私は午後の祈りを捧げていたんですよ。そうしたら聖杯の水が揺れましてね、こんなこと今までなかったので天変地異の前触れか、有り難い神託を戴けるのかと思ってそりゃあ驚きましたよ。ま、でも念の為って思ってここに来てみれば可愛らしいお嬢さん二人が仲良くお散歩中。こっちのほうが驚きだ」
佳蓮の心情など無視して、セリオスは砕けた口調でそう言った。けれどその瞳は、聖職者なのかと疑うほど鋭い。
そんな視線を受けて佳蓮は押し黙る。
(あとちょっと、実行に移すのが早いか遅いかだったら!)
きっと無事にアルビスの元から逃げ出すことができただろう。でもそれは、あくまでタラレバの話。時間は巻き戻せない。最悪な状況は、どうあっても最悪なままだ。
そんな絶望の色に塗りつぶされた隠し通路に、耳を塞ぎたくなるほどの怒声が響いた。
「グダグダ喋ってんじゃないわよっ、このエセ聖職者!あんたのところにだけ天変地異が起きれば良かったのに!!」
セリオスに罵声を浴びせたのは、佳蓮ではなくリュリュだった。
思わず佳蓮はリュリュを見るが、鬼の形相を浮かべたリュリュが怖くて、すぐに視線を逸らした。
セリオスといえば、軽く眉をあげただけ。
「リュリュさん。あなたは相変わらず口が悪い。この寒空の下、離宮の外でお二人を必死に護衛しているお兄様を不憫だと思わないんですか?」
「はっ、そのまま凍死すればいいじゃない」
リュリュの言葉に、佳蓮はそうだそうだと強く共感し、セリオスは呆れ切った顔で額に手を当てた。
「まぁ、兄弟間のことについては私はノータッチということでお好きに。でも、この状況は見過ごすことはできませ──」
額から手を離したセリオスは、中途半端なところで言葉を止めた。
いや正確にいうと、リュリュがセリオスに刃を向けたから、これ以上言葉を続けることができなかったのだ。
リュリュが武器を隠し持っていたことも、剣を扱えることも佳蓮は知らなかっし、戦う姿なんて想像すらしたことがない。
けれどもここにいるリュリュは、素早い動きでセリオスとの距離を詰めて、構えた長剣で何の躊躇いもなく彼を切りつけようとしている。
平和な世界で生まれ育った佳蓮にとって、それは恐ろしい光景のはずだが、冷静に駆け出す準備をしている。
なぜならリュリュが地を蹴る瞬間、「わたくしが時間を稼ぎます。どうか合図をしたら、お逃げください」と囁いてくれたのだ。
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