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そんなのってアリ?!
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※本日は陛下視点でのお話です。
藁にも縋りたい気持ちで、最愛の妻と同じラベンダー色の髪と濃い藍色の瞳を持つメイドからの神託をじっと待っていた国王陛下ことルーファスは、窓越しに人の気配を感じてそっと移動した。
そしてあと3歩で窓に手が届こうとした瞬間、驚愕した。
あろうことか黒ずくめの男がひらひらと手を振りながら、賓客を現す紋章をこちらに見せつけていたからだ。
声を出さなかったことが奇跡だった。
たださすがに、紛い物かもしれないという疑いから、食い入るように紋章を見つめた。……本物だった。しかも見知った顔だった。
夜伽の最中に乱入してくれた客人の名はアサギという。
はるか遠く東の島国、ムサシ国の第14王子である。
遊学の為にかれこれ13年もこの国に居座り、現在は稀少なムサシ国の産物を取り扱う商人だったりもする。
そんな男がなぜこんな場所に?
その疑問を問う前に、アサギはメイドをチラリとみてから口を開いた。
『バラシタラ、コロス』
ルーファスは夜の方はポンコツであるが、現役国王陛下であるから頭は冴えている。
だからすぐに、それが誰に向けてのメッセージなのか瞬時に悟った。そして、”突然この部屋に乱入した不審者を警戒する陛下”を演じることを選んだ。
その結果、アサギはメイドに対して特別な感情を抱いていることがわかった。
ただ何故に? という疑念は持ってしまったが、仲睦まじい二人の様子を見て聞くだけ野暮だという結論に達した。
それよりもルーファスは、アサギの想い人を夜伽相手にしてしまった事実に冷や汗をかいた。
ヤバイという感情はものの見事に顔に出ていたのだろう。
アサギはロッタに気付かれぬよう、顔だけをルーファスに向けると再び口パクをした。
『ヤッテナイカラ、コンカイダケミノガス。ツギハ、ナイ』
ルーファスはムサシ国の礼節に則り、両手を合わせて頭を下げた。
しかしそんな状況にいながらも、ルーファスはアサギの登場に手を打ち鳴らしたいほど内心喜んでいた。
なぜならムサシ国の現国王の二つ名は、『絶倫王』。
側室を8人抱えているムサシ国の王は、王子15人、王女7人。計22人の子供をこしらえている。
しかも、アサギ曰く、来年には8人目の王女が誕生する予定らしい。
なんと羨ましいことだろうか。
ルーファスは男として本気で憧れ、またその精力に嫉妬した。
そんな絶倫王の息子の知識はすさまじかった。
ここで記すのは倫理上できないが、兎にも角にも、奇抜で大胆で驚愕する内容だった。
ちなみに内容が内容だけにメイドは早々に自室に戻ってもらった。未婚の女性には、絶対に聞かせられないものであったから。
その後もアサギは商人として、ルーファスに数々の品を与えた。
”男性機能を回復させるお茶”
”女性の身体を整えるお茶”
”夜の営みをスムーズにするお香”
”縛っても後に残らない摩訶不思議の縄”
”卑猥な言葉で女性を煽るセリフ集”
あまりに実用的で、望むものであった為、ルーファスは思わずアサギに向けて『さすが絶倫王のご子息だ』と賛辞を口にした。
本気で嫌な顔をされたことは心外だった。だが、そんなことは些末なことである。
─── それから3ヶ月後、王妃マルガリータは懐妊した。
医師からそれを伝えられた時、ルーファスとマルガリータは手と手を取り合って涙した。
ただその涙の種類が、同じものだったかどうかは定かではない。
藁にも縋りたい気持ちで、最愛の妻と同じラベンダー色の髪と濃い藍色の瞳を持つメイドからの神託をじっと待っていた国王陛下ことルーファスは、窓越しに人の気配を感じてそっと移動した。
そしてあと3歩で窓に手が届こうとした瞬間、驚愕した。
あろうことか黒ずくめの男がひらひらと手を振りながら、賓客を現す紋章をこちらに見せつけていたからだ。
声を出さなかったことが奇跡だった。
たださすがに、紛い物かもしれないという疑いから、食い入るように紋章を見つめた。……本物だった。しかも見知った顔だった。
夜伽の最中に乱入してくれた客人の名はアサギという。
はるか遠く東の島国、ムサシ国の第14王子である。
遊学の為にかれこれ13年もこの国に居座り、現在は稀少なムサシ国の産物を取り扱う商人だったりもする。
そんな男がなぜこんな場所に?
その疑問を問う前に、アサギはメイドをチラリとみてから口を開いた。
『バラシタラ、コロス』
ルーファスは夜の方はポンコツであるが、現役国王陛下であるから頭は冴えている。
だからすぐに、それが誰に向けてのメッセージなのか瞬時に悟った。そして、”突然この部屋に乱入した不審者を警戒する陛下”を演じることを選んだ。
その結果、アサギはメイドに対して特別な感情を抱いていることがわかった。
ただ何故に? という疑念は持ってしまったが、仲睦まじい二人の様子を見て聞くだけ野暮だという結論に達した。
それよりもルーファスは、アサギの想い人を夜伽相手にしてしまった事実に冷や汗をかいた。
ヤバイという感情はものの見事に顔に出ていたのだろう。
アサギはロッタに気付かれぬよう、顔だけをルーファスに向けると再び口パクをした。
『ヤッテナイカラ、コンカイダケミノガス。ツギハ、ナイ』
ルーファスはムサシ国の礼節に則り、両手を合わせて頭を下げた。
しかしそんな状況にいながらも、ルーファスはアサギの登場に手を打ち鳴らしたいほど内心喜んでいた。
なぜならムサシ国の現国王の二つ名は、『絶倫王』。
側室を8人抱えているムサシ国の王は、王子15人、王女7人。計22人の子供をこしらえている。
しかも、アサギ曰く、来年には8人目の王女が誕生する予定らしい。
なんと羨ましいことだろうか。
ルーファスは男として本気で憧れ、またその精力に嫉妬した。
そんな絶倫王の息子の知識はすさまじかった。
ここで記すのは倫理上できないが、兎にも角にも、奇抜で大胆で驚愕する内容だった。
ちなみに内容が内容だけにメイドは早々に自室に戻ってもらった。未婚の女性には、絶対に聞かせられないものであったから。
その後もアサギは商人として、ルーファスに数々の品を与えた。
”男性機能を回復させるお茶”
”女性の身体を整えるお茶”
”夜の営みをスムーズにするお香”
”縛っても後に残らない摩訶不思議の縄”
”卑猥な言葉で女性を煽るセリフ集”
あまりに実用的で、望むものであった為、ルーファスは思わずアサギに向けて『さすが絶倫王のご子息だ』と賛辞を口にした。
本気で嫌な顔をされたことは心外だった。だが、そんなことは些末なことである。
─── それから3ヶ月後、王妃マルガリータは懐妊した。
医師からそれを伝えられた時、ルーファスとマルガリータは手と手を取り合って涙した。
ただその涙の種類が、同じものだったかどうかは定かではない。
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