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どんな精神状態でも美味しいと感じる食べ物は本当の好物だと言い切れる(検証済み)

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 リスラッドがヴァネッサを妻にする─── その利点は一つしか無い。

「……ウェルド、ずばり聞くけど」
「ん?どうした?」

 じっとティスタが口を開くのを待っていたウェルドは、優しく続きを促した。

「リスラッドは、お姉様を人体実験として使いたいのかな?」
「……っ」
「新薬って実用化するのに動物実験が必要なんでしょ? お姉様は人としての心は持ち合わせていないけれど、一応人間だし。ワイン飲んだら顔赤くなるし……」
「はぁ?」

 全く理解できないといった顔をされ、ティスタも同じように「はぁ?」と首を傾げてしまう。

 そうすればウェルドは、堪えきれないといった感じで吹き出した。

「長々と考えているなって思っていたけど、まさかそんな突拍子も無いことを言いだすとはな、驚きだ」
「そうかなぁ。お姉様の利用価値を考えたら、それしか無くって……。ただ、もしお姉様の命を糧にして新薬を作っても、絶対にヴァネッサの【ヴ】の字も入れない方が良いと思う。誰も使いたがらないと思うし。新薬を開発するまで結構研究費使うそうだから、それがおじゃんになるのは辛いよ」
「まぁ、そうだな。っていうか、吹っ切れた途端になかなかのことを言うんだな、ティスタは」

 そう言った後、ウェルドは声を上げて笑った。つられてティスタも笑ってみる。

 だが内心では、リスラッドがヴァネッサを気に入る理由がわからなくて、それが気になって仕方が無かった。

 はははと笑いながらも、ティスタはソワソワと落ち着かない。

 無論、隣にいるウェルドなら、その様子にすぐに気付く。そしてティスタを世界で一番愛している彼は、彼女の思考を読むのは造作も無いこと。

「ティスタは、リスラッドがヴァネッサ嬢の結婚相手になると思っているようだけど……んでもって、その理由を聞きたいみたいだけれど、まず先に言っておく。相手はリスラッドじゃない」
「……え゛、違うの?」
「ああ。彼女の相手はアランだ」
「……あらん、いやぁん。ウェルド様ったら、そんなご冗談を」
「冗談じゃない。本気だ」

 ティスタの言葉を遮って、ウェルドは真顔で言った。

 ただ彼の灰色の瞳をよく見れば「そのギャクつまらない」と語っている。それ婚約者に向ける目?と聞きたくなるくらい冴え冴えとしている。 

 言っておくがティスタだって、好きでこんな寒いギャグを口にしたわけでは無い。

 思わずクソつまらないことを言ってしまうほど、ウェルドの言葉が信じられなかったのだ。

 そう。赤っ恥をかいたのも、婚約者から冷たい視線を向けられたのも、全部ヴァネッサのせいなのだ。
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