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彼女が選んだ復讐とは⑤

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「やれやれ、君は被害者なのに、蚊帳の外にいるね。……やっぱり、二人っきりになれる場所に行った方が有意義な時間を過ごせたね」

 そっと囁いたラヴィエルの言葉は、甘い響きを持っていたけれど、その眼は物騒に光っていた。

 そんな彼に向かいフローレンスは薄く笑う。

「お見苦しいものを見せてしまって、お許しください。でも、こんなもの……いつものことですわ」

 フローレンスが父親からずっと優等生を求められていたのは、見栄と体裁だけじゃない。優秀でいてくれれば、その分リコッタに割く時間が増えるから。

 そして継母が血の繋がらない娘が優秀でいることに不満を持たなかったのは、平民出身の自分でもこれだけの娘を育てられたのだと吹聴できるから。

 要は、利己主義な両親にフローレンスはずっといいように使われていたのだ。

 けれどもそんな両親の手を焼かせ続けてきたリコッタは、髪を振り乱しながら金切り声を上げる。

 その内容は信じられないものだった。

「私は殺そうとしてなんかいないわよっ!あんたが私に頼んだんじゃないっ。背中を押してくれって」

 苦し紛れにも程があるその言葉に、ここにいる全員が目を丸くした。フローレンスさえ。

 それを手ごたえだと受け取ったリコッタは、言葉を続ける。

「あんたはラヴィエル様と結婚したくないって言ってたじゃないっ。怪我をすれば、それを理由に婚約破棄ができるって。私だってそんなことしたくなかったけれど、あんたに脅されてやったのよ!? 急に良い子ちゃんぶって、被害者面するのやめてよね!!」

 バンッと両手を床に叩きつけて、リコッタは一気にまくし立てた。

 そして、あまりに突拍子もないリコッタの発言に、居間は沈黙に包まれる。

「───……そ、そうなのか?」

 長い沈黙の後、最初に口を開いたのはアールベンだった。

「そうなの。お父様、酷いでしょ?……ねえ、お父様は私のこと信じてくださいますよね?」
「ああ、もちろんだ」
「嬉しいですわ。お父様ならそう言ってくれると思ってました。……お母様も、お父様と同じ気持ちですよね?」
「……ええ、まぁ……そうね」

 計算高いヴェラッザは、ちらりと公爵家嫡男を見てから曖昧に頷いた。自分の横にいるラヴィエルは今、どんな表情を浮かべているのかわからない。

「ねえ、酷いのはどっちよ。私を悪者にして、あんた何様なの? どう責任取ってくれるのよっ」

 二人の味方を得たリコッタは、フローレンスに向かって挑むような眼差しを向けた。

(……へぇ、なるほど。とことん、遣り合う気なのね)

 フローレンスは信じられないといった感じで大きく目を見開き、両手を口元に当てているが、内心、受けて立つ気満々だった。 
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