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【番外編】花嫁の小休止と、花婿の本気

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 本日のデュアロスの寝間着は、初夜仕様の大変ゆったりとしたもの。

 言い換えると、目を覚ました息子を押さえつけることができないデザインなのである。

(頼む。頼むから大人しくなってくれっ)

 デュアロスは必死に我が息子に懇願する。

 だがしかし息子はツーンと上を向いたまま。それどころか更に元気いっぱいになりやがる。反抗期の子供ですら、ここまで親を困らすことはないだろう。

(くそっ、馬鹿と罵った仕返しをしているつもりか!?お前、わかっているのかっ。今、こんな状態をアカネに見られたら一生、お前は封印されることになるんだぞ!それでいいのか!?俺は嫌だ!!)

 自分の持ち物に必死に呼びかける絵面えづらは大変シュールである。しかし新郎は、そんなもん気にしてなんかいられない。

 万が一アカネが目を覚ましてしまって、この光景を見られたらと考えるだけで冷や汗が止まらないのだ。

 だから一刻も早く、息子をニュートラルな状態に戻さなくてはならない。これは神が己に与えた最後のミッションなのだ。 

 なぁーんていう、他人が聞いたらひどく馬鹿馬鹿しいことをデュアロスはかなり真剣に考えていたのだが。

「んぁ……ん??………あれぇー、デュアロスさん?」

 あろうことかデュアロスが必死にどうミッションをこなすか頭を悩ましている最中にアカネが目を覚ましてしまった。

 デュアロスは、バラ色の新婚生活がモノクロに変わると確信した。

 だがしかし、実際はそうではなかった。

「へへっ、寝ちゃってました」
 
 アカネはデュアロスの上半身と下半身の温度差にまったく気付かぬ様子で、へにゃりと笑う。次いでベッドから身体を起こすと、デュアロスにぎゅっと抱きついた。

 対してデュアロスは、慌てて腰を引く。

「……デュアロスさん、あのぅ。寝ちゃったの怒ってます?」
「い、いや」

 自分でもみっともないほど硬い声で否定した途端、アカネはぎょっとした顔をして口を開く。

「違うんです!こんなにがっつり寝るつもりはなかったんです!!メイドさんたちが、これから朝まで眠れないと思うから、ちょっと仮眠を取った方が良いって言われて……はい。私も頑張るつもりだったから、元気を充電するつもりで……あ、でもこんなの言い訳ですね。本当に……ごめんなさい」

 怒涛のように語り出したアカネであるが、デュアロスの表情が一向に柔らかくならないのを見てしゅんと肩を落とした。

 しかし実際のところ、デュアロスは怒ってなんかない。

 嬉しすぎるアカネの言葉で、心身共に充電していただけ。ちなみに今はフル充電完了。ついでに予備バッテリーも3個ストックしている状態だ。

 そんな彼は、俯く花嫁の頬に手を伸ばす。

「……アカネ、もし私が怒っていたなら”ごめんなさい”じゃなくって、違うやり方があるだろう?」

 デュアロスは、ついさっきまで元気すぎる息子を持て余して頭を抱えていたくせに、それをさらっと無かったことにしてニヤリと笑う。

 反対に遠回しに口付けを強請られたアカネは、デュアロスの策中にハマってしまったことを知る。

 しかし今日は初夜。どのみちイタす過程でいくらでもする予定である。

 だからアカネは顔を赤くしながらも、デュアロスの望み通り彼の唇に自分の唇を押し当てた。それが合図となり、デュアロスはアカネをそっとベッドに横たえる。

 部屋の明かりがデュアロスの手によって落とされる。それから衣擦れの音と、互いの息遣いが薄暗い部屋に響く。

 フル充電したデュアロスは、これまで以上に本気を出してしまいーーその結果、アカネが目を覚ましたのは翌日の昼過ぎだった。



 余談だが、ヘロヘロになりながら朝昼ごはんを食べるアカネの世話をしたのは、メイドではなくデュアロスで。

 尻に敷かれるというより自ら尻に敷かれに行く主を見る使用人たちの目は皆、揃って生温い。そうして、こんな光景が日常となるのは、時間の問題で。


 そんなこんなで、アカネを妻に迎えたラーグ邸は、今日も穏やかに時を刻んでいく。



★【番外編】おわり★

 読んでいただきありがとうございました(o*。_。)oペコッ
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