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6.他称ロリコン軍人は、毒舌少女の願いを叶える
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レンブラントの問いに答えた後、恥ずかしさを覚えたベルは俯く。でも彼は何も言わない。
しばらくの間のあと、ベルは不安になり顔を上げた。
そうすればレンブラントは、とても優しい目をして自分を見下ろしていた。
「……あんたは頑張ったんだな」
その口調は、深い慈愛に溢れたものだった。
「あんたが過ごした環境で軍人嫌いになるのは当然で、他人なんか信じられないって思うのも当然で……でも、あんたは変わってくれた」
「あなたかがそうさせたんじゃないですか」
ため息交じりそう言ったベルの声は酷く掠れていた。
薄暗い明かりの中で、レンブラントの瞳が包み込むように優しくて、それでいて全てを飲み込まれてしまいそうなほど情熱的で───
「そうだ、俺が変えた。あんたを欲したから」
知恵熱ではない溺れるようなような強い愛の熱が伝わってくる。
「ベル」
低く心の芯を震わすような声でレンブラントが名を呼ぶ。
ベルはこの後に続く彼の言葉がまったくもって予想できなくて、ただただ小さく「はい」と答える。
そうすればレンブラントはおもむろに顔を近付けると、コツンと額を合わせた。
「あんたは俺を好いている。これに間違いはないか?」
「……はい」
「よし。じゃあ手始めに、俺になんか甘えてみろ」
(は?)
「は?」
ベルは思ったままを口にした。
これだけ甘い空気になったのだから、もしかして今以上の触れ合いをされるのだと覚悟していた。
でも、そうじゃなかった。絶対に口には出せないが何だか肩透かしを食らった気分だ。
そんなふうにがっかりして良いのか、安堵して良いのかわからず妙な表情になったベルをどう思ったのかわからないが、レンブラントはちょっとだけムッとした顔で口を開いた。
「俺は愛妻家になる予定だ。妻のワガママなら何でも受け入れる甲斐性のある男になる予定だ。ああ、言っておくがアレ買ってとか、コレ食べたいなんていうちゃっちい願いは却下だ。初めてのおねだりなんだから、ド派手に頼む」
「……っ!?」
(この人、愛妻家になるって言った!)
そしてプロポーズすら受けていないのに、レンブラントは自分を娶る気満々だ。
「……あ、あの」
「なんだ?」
「レンブラントさんは、私と結婚するつもりなですか?」
「当たり前じゃないか」
なんでそんなことを聞くんだと言いたげな彼に向け、ベルは返す言葉が見つからなかった。
「先に言っておくが、俺を好いた時点であんたは俺の妻になることは決まっていたんだぞ」
「……な、なんで?」
「俺があんたを手放す気がないから」
「もし、好きにならなかったら?」
「さあな。ただ俺は諦める気は無かったら、最終的にはどんな手を使ってでもあんたを好きにさせていただろうな」
あっけらかんとした口調であったが、レンブラントの目は本気だった。
しばらくの間のあと、ベルは不安になり顔を上げた。
そうすればレンブラントは、とても優しい目をして自分を見下ろしていた。
「……あんたは頑張ったんだな」
その口調は、深い慈愛に溢れたものだった。
「あんたが過ごした環境で軍人嫌いになるのは当然で、他人なんか信じられないって思うのも当然で……でも、あんたは変わってくれた」
「あなたかがそうさせたんじゃないですか」
ため息交じりそう言ったベルの声は酷く掠れていた。
薄暗い明かりの中で、レンブラントの瞳が包み込むように優しくて、それでいて全てを飲み込まれてしまいそうなほど情熱的で───
「そうだ、俺が変えた。あんたを欲したから」
知恵熱ではない溺れるようなような強い愛の熱が伝わってくる。
「ベル」
低く心の芯を震わすような声でレンブラントが名を呼ぶ。
ベルはこの後に続く彼の言葉がまったくもって予想できなくて、ただただ小さく「はい」と答える。
そうすればレンブラントはおもむろに顔を近付けると、コツンと額を合わせた。
「あんたは俺を好いている。これに間違いはないか?」
「……はい」
「よし。じゃあ手始めに、俺になんか甘えてみろ」
(は?)
「は?」
ベルは思ったままを口にした。
これだけ甘い空気になったのだから、もしかして今以上の触れ合いをされるのだと覚悟していた。
でも、そうじゃなかった。絶対に口には出せないが何だか肩透かしを食らった気分だ。
そんなふうにがっかりして良いのか、安堵して良いのかわからず妙な表情になったベルをどう思ったのかわからないが、レンブラントはちょっとだけムッとした顔で口を開いた。
「俺は愛妻家になる予定だ。妻のワガママなら何でも受け入れる甲斐性のある男になる予定だ。ああ、言っておくがアレ買ってとか、コレ食べたいなんていうちゃっちい願いは却下だ。初めてのおねだりなんだから、ド派手に頼む」
「……っ!?」
(この人、愛妻家になるって言った!)
そしてプロポーズすら受けていないのに、レンブラントは自分を娶る気満々だ。
「……あ、あの」
「なんだ?」
「レンブラントさんは、私と結婚するつもりなですか?」
「当たり前じゃないか」
なんでそんなことを聞くんだと言いたげな彼に向け、ベルは返す言葉が見つからなかった。
「先に言っておくが、俺を好いた時点であんたは俺の妻になることは決まっていたんだぞ」
「……な、なんで?」
「俺があんたを手放す気がないから」
「もし、好きにならなかったら?」
「さあな。ただ俺は諦める気は無かったら、最終的にはどんな手を使ってでもあんたを好きにさせていただろうな」
あっけらかんとした口調であったが、レンブラントの目は本気だった。
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