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4.女神の一本釣りと、とある軍人の涙
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先ほどまで未知なる生物ことフローチェに翻弄され、狼狽えていたベルだが、今度は居心地悪さまで追加されてしまった。
この部屋には、現在進行形でベルとレンブラントの二人しかいない。
そんな中、今頃になって思い出してしまったのだ。
色々なことが起こりすぎてしまったせいですっかり忘れていたが、自分はこの男と口付けなるものをしてしまったことを。
無論、あれは騒ぐ自分を黙らせたかった最終手段に過ぎない。
だがしかし、唇と唇を合わせるという行為をしたことは間違いなく、悔しいがあれがベルにとって初めてのものだった。
(まぁ。私は初めてだったけれど、あの人はそうじゃないだろうな。手慣れていたし。年上だし)
そんなことを思いながら、自分の唇を奪った不埒な男をチラ見する。
不埒な男ことレンブラントは、ぴったりと閉じられた扉に視線を固定して、長い前髪をかき上げながら何か聞き取れない言葉をブツブツと呟いている。
その表情には怒りや苛立ちは無く、何かを取り繕うために必死に自分の気持ちを落ち着かせているように見えた。
(彼もきっと居心地が悪いのだろう。しゃーない、ここは私が大人になってあげるか)
ベルは小さく咳払いをしてから、口を開いた。
「まさかとは思いますが……、森の中での接触行為について気まずさを覚えているなら、気にしないで良いですよ」
「は?」
言われて傷付くくらいなら、いっそ自分から言ってしまおうという思いで口にしたけれど、レンブラントは「何言っているんだ?」という表情を浮かべた。
どうやらこの軍人は、自分とキスしたことなど、どうでも良いことだったようだ。「責任を取ってやるとか」言っていたくせに。なんなんだ。
ただそんな不満よりも、自分だけが動揺していたのを知り、ベルは一瞬できまりが悪くなってしまった。
さりとて、この変な空気を一瞬で変えることができる話題も話術も持ち合わせていない。
ベルは動かない頭を必死に働かせながら、カラッカラに乾いてしまった喉を叱咤するように咳ばらいをして、当たり障りの無い会話をすることを選んだ。
「あのう、傷……大丈夫ですか?」
「傷?」
なぜか全て疑問形で返されることに、ベルは思わず「出て行け」と怒鳴りたくなる。
しかし口から出た言葉は、違うものだった。
「いや……だって、まだ3日しか経っていないのに、動き回って良いのかって思って。余計なお世話かもしれませんが、ちょっとは休んだらどうですか?」
「あー……大丈夫だ」
気のない返事をされ、ベルは完全に心が折れた。
そして不貞腐れたベルは、もう何を言われても聞かれても全部無視してやると心に堅く誓い、毛布を鼻まで引っ張り上げて目を閉じる。
「……寝るのか?」
(黙れ)
「ベル、寝てしまったのか?」
(さすがに秒で寝れるわけないじゃん。馬鹿なの?……あ、失礼。この人馬鹿だった)
「仕方が無いな」
(は? 何が仕方が無いの? 妙に上から目線のソレ、むかつく)
レンブラントの独り言に対して、ベルはぐぐぐっと毛布を握りしめながら心の中で答えていた。
しかし、次の言葉は無視することができなかった。
「ま、眠っているなら俺が着替えさせるか」
「何を言ってるんですか?!」
ガバッと毛布を跳ね除けながら、半身を起こしたベルにレンブラントは心底驚いた顔をした。
「なんだ、起きていたのか。まぁ良い、寝てろ。あんたの寝間着は、俺が着替えさせておくから」
「なに戯けたことを言ってるんですか!?ド変態軍人さん。寝言は寝てから言ってください。あと、自分で着替えますから、今すぐ出て行って下さい」
「それは無理だな」
「……なっ」
あっさりとベルの要求を却下したレンブラントは、カツカツと靴音を響かせながらベッドの前で膝を付いた。
この部屋には、現在進行形でベルとレンブラントの二人しかいない。
そんな中、今頃になって思い出してしまったのだ。
色々なことが起こりすぎてしまったせいですっかり忘れていたが、自分はこの男と口付けなるものをしてしまったことを。
無論、あれは騒ぐ自分を黙らせたかった最終手段に過ぎない。
だがしかし、唇と唇を合わせるという行為をしたことは間違いなく、悔しいがあれがベルにとって初めてのものだった。
(まぁ。私は初めてだったけれど、あの人はそうじゃないだろうな。手慣れていたし。年上だし)
そんなことを思いながら、自分の唇を奪った不埒な男をチラ見する。
不埒な男ことレンブラントは、ぴったりと閉じられた扉に視線を固定して、長い前髪をかき上げながら何か聞き取れない言葉をブツブツと呟いている。
その表情には怒りや苛立ちは無く、何かを取り繕うために必死に自分の気持ちを落ち着かせているように見えた。
(彼もきっと居心地が悪いのだろう。しゃーない、ここは私が大人になってあげるか)
ベルは小さく咳払いをしてから、口を開いた。
「まさかとは思いますが……、森の中での接触行為について気まずさを覚えているなら、気にしないで良いですよ」
「は?」
言われて傷付くくらいなら、いっそ自分から言ってしまおうという思いで口にしたけれど、レンブラントは「何言っているんだ?」という表情を浮かべた。
どうやらこの軍人は、自分とキスしたことなど、どうでも良いことだったようだ。「責任を取ってやるとか」言っていたくせに。なんなんだ。
ただそんな不満よりも、自分だけが動揺していたのを知り、ベルは一瞬できまりが悪くなってしまった。
さりとて、この変な空気を一瞬で変えることができる話題も話術も持ち合わせていない。
ベルは動かない頭を必死に働かせながら、カラッカラに乾いてしまった喉を叱咤するように咳ばらいをして、当たり障りの無い会話をすることを選んだ。
「あのう、傷……大丈夫ですか?」
「傷?」
なぜか全て疑問形で返されることに、ベルは思わず「出て行け」と怒鳴りたくなる。
しかし口から出た言葉は、違うものだった。
「いや……だって、まだ3日しか経っていないのに、動き回って良いのかって思って。余計なお世話かもしれませんが、ちょっとは休んだらどうですか?」
「あー……大丈夫だ」
気のない返事をされ、ベルは完全に心が折れた。
そして不貞腐れたベルは、もう何を言われても聞かれても全部無視してやると心に堅く誓い、毛布を鼻まで引っ張り上げて目を閉じる。
「……寝るのか?」
(黙れ)
「ベル、寝てしまったのか?」
(さすがに秒で寝れるわけないじゃん。馬鹿なの?……あ、失礼。この人馬鹿だった)
「仕方が無いな」
(は? 何が仕方が無いの? 妙に上から目線のソレ、むかつく)
レンブラントの独り言に対して、ベルはぐぐぐっと毛布を握りしめながら心の中で答えていた。
しかし、次の言葉は無視することができなかった。
「ま、眠っているなら俺が着替えさせるか」
「何を言ってるんですか?!」
ガバッと毛布を跳ね除けながら、半身を起こしたベルにレンブラントは心底驚いた顔をした。
「なんだ、起きていたのか。まぁ良い、寝てろ。あんたの寝間着は、俺が着替えさせておくから」
「なに戯けたことを言ってるんですか!?ド変態軍人さん。寝言は寝てから言ってください。あと、自分で着替えますから、今すぐ出て行って下さい」
「それは無理だな」
「……なっ」
あっさりとベルの要求を却下したレンブラントは、カツカツと靴音を響かせながらベッドの前で膝を付いた。
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