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2.他称ロリコン軍人は不遇な毒舌少女を癒したい
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「ベル、ほらっ急げ。肉が無くなるぞ」
「ラルク、落ち着きなさい。肉は無くなりませんし、ベルさんの腕を掴んではなりませんっ」
「いや、だって肉の屋台んところ、すげー列だぞ……あっまた2人並びやがったっ。俺、先行って並んでるわっ」
「こらっ、ラルク。待て!」
「……ちっ、なんて奴だ」
ロヴィーの制止を振り切って、ラルクは全速力で肉串が売っている屋台へと向かってしまった。
みるみるうちに小さくなっていく赤毛の少年を見て、ベルは「さすが軍人。足が速い」と感嘆の息を漏らした。
ちなみに現在ベルの両端には、ロヴィーとマースがぴったりと張り付いている。
片側は真っ赤な顔で怒り狂っているし、もう片側は静かに怒っている。そしてベルは、自分の身体がきっちり半分に寒暖で割れているという貴重な体験をしている。感想としては、あまり良いとは言えない。
ただこの居心地悪さを解消する方法は至極簡単で、自分の足の速度を早めるだけ。
「ベルさん、急がなくても良いですよ」
「あ……いえ。……私も早く食べたいですから」
本音半分、ラルクへの擁護半分といった感情でそう言えば、ロヴィーは「わかりました」と言ってにこりと笑った。
反対側にいるマースも声こそ出さないけれど、冷たい怒りを鎮めてくれた。
このやり取りの通り、ベルは結局市場に足を向けることになった。
もちろん不安要素が多々ある状況なのだから、宿屋で大人しくするのが一番安全だとわかっている。
なのだけれど、断る理由を考えている内に、マースがレンブラントに交渉して変装するならという条件付きで外出の許可をもぎ取ってきてしまったのだ。
といっても、マース達が女装をしているわけではない。老人にもなっていない。私服姿に変わっただけ。けれど日頃軍服しか目にしていないベルからしたら、随分と印象が違った。
特にラルクはすっかり町に溶け込んでいる。
誰がどう見たって、肉好きの少年にしか見えない。逆に軍人といっても信じてもらえないだろうと思わせる変身ぶりだった。……いや、多分、こっちが素の姿なのだろう。
ちなみに御者のモーゼスは、昔、足を怪我して以来、長時間歩くことができないという理由で留守番となった。
「湿布とか売っていれば良いんだけれど……」
ベルは歩きながら、きょろきょろと辺りを見渡した。
イマナの町は、まるでお祭りのように沢山の屋台が並び、嵐で足止めを食らった人々で溢れ返っている。
噴水がある広場をぐるりと囲むように屋台が軒を連ね、買ったものをすぐに食せるようにテーブルや椅子が並べられていた。
ただよく見れば、雑貨やアクセサリーを売っている屋台は片づけを始めている。これから賑わうのは飲食を扱うところだけというのを知っているのだろう。
ベルは更に視線を忙しなく動かす。
モーゼスの足が悪いのを知ったのは今日だった。
ログディーダ砦に滞在していた時は、カードゲームに夢中になってまったく気付くことができなかったことが悔やまれる。
モーゼスはベルにとって人生で二人目の師匠だ。
そして、一見、白髪交じりの厳つい顔は人を寄せ付けない雰囲気があるのに、ひとたび笑えばふわっと柔らかい印象に変わるところが、一人目の師匠と同じだった。身体の一部に支障をきたしているところも。
ベルはモーゼスに対して、恋慕の情ではないが特別な感情を持っている。そして、がっつりカードゲームで稼いだお金はポケットにある。
王都までは、長い道のりだ。御者であるモーゼスは、凍てつく季節でも車内で暖を取ることができない。
だからせめて張り薬や、身体を温めることができる何かを贈ろうとベルは考えていた。
「ラルク、落ち着きなさい。肉は無くなりませんし、ベルさんの腕を掴んではなりませんっ」
「いや、だって肉の屋台んところ、すげー列だぞ……あっまた2人並びやがったっ。俺、先行って並んでるわっ」
「こらっ、ラルク。待て!」
「……ちっ、なんて奴だ」
ロヴィーの制止を振り切って、ラルクは全速力で肉串が売っている屋台へと向かってしまった。
みるみるうちに小さくなっていく赤毛の少年を見て、ベルは「さすが軍人。足が速い」と感嘆の息を漏らした。
ちなみに現在ベルの両端には、ロヴィーとマースがぴったりと張り付いている。
片側は真っ赤な顔で怒り狂っているし、もう片側は静かに怒っている。そしてベルは、自分の身体がきっちり半分に寒暖で割れているという貴重な体験をしている。感想としては、あまり良いとは言えない。
ただこの居心地悪さを解消する方法は至極簡単で、自分の足の速度を早めるだけ。
「ベルさん、急がなくても良いですよ」
「あ……いえ。……私も早く食べたいですから」
本音半分、ラルクへの擁護半分といった感情でそう言えば、ロヴィーは「わかりました」と言ってにこりと笑った。
反対側にいるマースも声こそ出さないけれど、冷たい怒りを鎮めてくれた。
このやり取りの通り、ベルは結局市場に足を向けることになった。
もちろん不安要素が多々ある状況なのだから、宿屋で大人しくするのが一番安全だとわかっている。
なのだけれど、断る理由を考えている内に、マースがレンブラントに交渉して変装するならという条件付きで外出の許可をもぎ取ってきてしまったのだ。
といっても、マース達が女装をしているわけではない。老人にもなっていない。私服姿に変わっただけ。けれど日頃軍服しか目にしていないベルからしたら、随分と印象が違った。
特にラルクはすっかり町に溶け込んでいる。
誰がどう見たって、肉好きの少年にしか見えない。逆に軍人といっても信じてもらえないだろうと思わせる変身ぶりだった。……いや、多分、こっちが素の姿なのだろう。
ちなみに御者のモーゼスは、昔、足を怪我して以来、長時間歩くことができないという理由で留守番となった。
「湿布とか売っていれば良いんだけれど……」
ベルは歩きながら、きょろきょろと辺りを見渡した。
イマナの町は、まるでお祭りのように沢山の屋台が並び、嵐で足止めを食らった人々で溢れ返っている。
噴水がある広場をぐるりと囲むように屋台が軒を連ね、買ったものをすぐに食せるようにテーブルや椅子が並べられていた。
ただよく見れば、雑貨やアクセサリーを売っている屋台は片づけを始めている。これから賑わうのは飲食を扱うところだけというのを知っているのだろう。
ベルは更に視線を忙しなく動かす。
モーゼスの足が悪いのを知ったのは今日だった。
ログディーダ砦に滞在していた時は、カードゲームに夢中になってまったく気付くことができなかったことが悔やまれる。
モーゼスはベルにとって人生で二人目の師匠だ。
そして、一見、白髪交じりの厳つい顔は人を寄せ付けない雰囲気があるのに、ひとたび笑えばふわっと柔らかい印象に変わるところが、一人目の師匠と同じだった。身体の一部に支障をきたしているところも。
ベルはモーゼスに対して、恋慕の情ではないが特別な感情を持っている。そして、がっつりカードゲームで稼いだお金はポケットにある。
王都までは、長い道のりだ。御者であるモーゼスは、凍てつく季節でも車内で暖を取ることができない。
だからせめて張り薬や、身体を温めることができる何かを贈ろうとベルは考えていた。
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