13 / 33
仮初めの恋人と過ごす日々※なぜか相手はノリノリ
7
しおりを挟む
ランラード学園は、毎年創立記念日の前に中期試験がある。
しかも補習と追試は、創立記念日当日に行われるのが伝統だ。
なんともえげつない日程である。だが、教師の狙い通りこの時期の中期試験は補習を受ける生徒は今のところゼロを更新中。
ちなみに成績は良くも悪くも無いアンナであるが、今回の試験はカイロスの顔に泥を塗るわけにはいかないから、これまで以上に頑張った。
おかげで少しだけ順位があがった。カイロスは安定の1位だった。マチルダはギリギリ補習を免れた。
そんなこんなで今年も例年通り、創立記念日は生徒は全員参加で迎えようとしていた。
「ーーねえねえ、アンナさん。お願いがあるんですけど......」
午後の授業を終えて、アンナが帰り支度をしていればクラスメイトの一人であるシェリーから声を掛けられた。
「なんでしょう?」
レポート用紙を纏めながら首をかしげれば、シェリーは制服のスカートをモジモジしながらこう言った。
「魔法科のニルバスさんにお話ししたいことがあって......その......無理は承知なんですけど」
頬を染めながら言葉尻を濁すシェリーが何を言いたいのかアンナはすぐに察した。なにせ、この手のお願いは、中間試験が終わって13人目だから。
創立記念日を1週間後に控えた学園は、皆、そわそわと落ち着きがない。
それは年に一度のお祭りだから浮き足立っている。……と、いうのもあるが、一年で一番多くのカップルが誕生する時期でもあるからで。
格式高いランラード学園の創立記念日のフィナーレは、伝統に則り公園で庭園パーティーが開かれる。
魔法科の生徒によって作り上げられる会場は、至るところに魔法灯が飾られとても幻想的で、青春の1ページを刻むのにはもってこい。またこんな素敵な空間を是非とも好きな人と一緒に過ごしたいと思うのは当然で。
そのため中間試験が終わると、成功率が普段よりちょっと高くなる今を狙って意中の相手がいる生徒達は勇気を出して告白をする。
めでたくカップルになった生徒達は、当日は互いのネクタイを交換してそれを身に付けるのが慣わしだ。
アンナに声を掛けてきたシェリーも、おそらく意中の相手がいるのだろう。そしてその相手はカイロスのクラスメイトのようだ。
そこまで推測したアンナが言えるのはこれだけだった。
「わかりました、殿下に伝えておきますね」
「ありがとう、アンナさん!」
アンナより100倍眩しい笑みを浮かべたシェリーは、アンナの手をぎゅっと握ってウルウルとした目で何度も礼の言葉を紡ぐ。
これもまた毎度のことであるが、アンナはささやかながら恋のお手伝いができて毎回とても嬉しい気持ちになる。
と、同時にこんなにも告白をしたい生徒がいることに驚きを隠せなかった。
しかも補習と追試は、創立記念日当日に行われるのが伝統だ。
なんともえげつない日程である。だが、教師の狙い通りこの時期の中期試験は補習を受ける生徒は今のところゼロを更新中。
ちなみに成績は良くも悪くも無いアンナであるが、今回の試験はカイロスの顔に泥を塗るわけにはいかないから、これまで以上に頑張った。
おかげで少しだけ順位があがった。カイロスは安定の1位だった。マチルダはギリギリ補習を免れた。
そんなこんなで今年も例年通り、創立記念日は生徒は全員参加で迎えようとしていた。
「ーーねえねえ、アンナさん。お願いがあるんですけど......」
午後の授業を終えて、アンナが帰り支度をしていればクラスメイトの一人であるシェリーから声を掛けられた。
「なんでしょう?」
レポート用紙を纏めながら首をかしげれば、シェリーは制服のスカートをモジモジしながらこう言った。
「魔法科のニルバスさんにお話ししたいことがあって......その......無理は承知なんですけど」
頬を染めながら言葉尻を濁すシェリーが何を言いたいのかアンナはすぐに察した。なにせ、この手のお願いは、中間試験が終わって13人目だから。
創立記念日を1週間後に控えた学園は、皆、そわそわと落ち着きがない。
それは年に一度のお祭りだから浮き足立っている。……と、いうのもあるが、一年で一番多くのカップルが誕生する時期でもあるからで。
格式高いランラード学園の創立記念日のフィナーレは、伝統に則り公園で庭園パーティーが開かれる。
魔法科の生徒によって作り上げられる会場は、至るところに魔法灯が飾られとても幻想的で、青春の1ページを刻むのにはもってこい。またこんな素敵な空間を是非とも好きな人と一緒に過ごしたいと思うのは当然で。
そのため中間試験が終わると、成功率が普段よりちょっと高くなる今を狙って意中の相手がいる生徒達は勇気を出して告白をする。
めでたくカップルになった生徒達は、当日は互いのネクタイを交換してそれを身に付けるのが慣わしだ。
アンナに声を掛けてきたシェリーも、おそらく意中の相手がいるのだろう。そしてその相手はカイロスのクラスメイトのようだ。
そこまで推測したアンナが言えるのはこれだけだった。
「わかりました、殿下に伝えておきますね」
「ありがとう、アンナさん!」
アンナより100倍眩しい笑みを浮かべたシェリーは、アンナの手をぎゅっと握ってウルウルとした目で何度も礼の言葉を紡ぐ。
これもまた毎度のことであるが、アンナはささやかながら恋のお手伝いができて毎回とても嬉しい気持ちになる。
と、同時にこんなにも告白をしたい生徒がいることに驚きを隠せなかった。
0
お気に入りに追加
499
あなたにおすすめの小説
本を返すため婚約者の部屋へ向かったところ、女性を連れ込んでよく分からないことをしているところを目撃してしまいました。
四季
恋愛
本を返すため婚約者の部屋へ向かったところ、女性を連れ込んでよく分からないことをしているところを目撃してしまいました。
前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る
花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。
その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。
何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。
“傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。
背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。
7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。
長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。
守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。
この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。
※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。
(C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
泣き虫令嬢は自称商人(本当は公爵)に愛される
琴葉悠
恋愛
エステル・アッシュベリーは泣き虫令嬢と一部から呼ばれていた。
そんな彼女に婚約者がいた。
彼女は婚約者が熱を出して寝込んでいると聞き、彼の屋敷に見舞いにいった時、彼と幼なじみの令嬢との不貞行為を目撃してしまう。
エステルは見舞い品を投げつけて、馬車にも乗らずに泣きながら夜道を走った。
冷静になった途端、ごろつきに囲まれるが謎の商人に助けられ──
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
交換された花嫁
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉さんなんだから我慢なさい」
お姉さんなんだから…お姉さんなんだから…
我儘で自由奔放な妹の所為で昔からそればかり言われ続けてきた。ずっと我慢してきたが。公爵令嬢のヒロインは16歳になり婚約者が妹と共に出来きたが…まさかの展開が。
「お姉様の婚約者頂戴」
妹がヒロインの婚約者を寝取ってしまい、終いには頂戴と言う始末。両親に話すが…。
「お姉さんなのだから、交換して上げなさい」
流石に婚約者を交換するのは…不味いのでは…。
結局ヒロインは妹の要求通りに婚約者を交換した。
そしてヒロインは仕方無しに嫁いで行くが、夫である第2王子にはどうやら想い人がいるらしく…。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
いつか彼女を手に入れる日まで
月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?
踏み台令嬢はへこたれない
三屋城衣智子
恋愛
「婚約破棄してくれ!」
公爵令嬢のメルティアーラは婚約者からの何度目かの申し出を受けていたーー。
春、学院に入学しいつしかついたあだ名は踏み台令嬢。……幸せを運んでいますのに、その名付けはあんまりでは……。
そう思いつつも学院生活を満喫していたら、噂を聞きつけた第三王子がチラチラこっちを見ている。しかもうっかり婚約者になってしまったわ……?!?
これは無自覚に他人の踏み台になって引っ張り上げる主人公が、たまにしょげては踏ん張りながらやっぱり周りを幸せにしたりやっと自分も幸せになったりするかもしれない物語。
「わたくし、甘い砂を吐くのには慣れておりますの」
ーー踏み台令嬢は今日も誰かを幸せにする。
なろうでも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる