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05『君に好きだと叫びたい』
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一目見たその時から、君はどんな宝石よりも輝いていた。
「元気がないけど大丈夫? 良かったら、私とお話しましょ!」
あれは五歳の時だったかな。病気がちの俺は、良く風邪を引いては寝込んでいた。
王宮で開かれた舞踏会。あの時も、少しダルくてぼーっとしていた。
そんな姿を見た君は、小さな体でトコトコやって来て、俺を元気づけてくれたね。
次に再開したのは、五年後の春。俺を見ても、あの舞踏会の事は覚えていない様子だった。
「お、お、俺はっ、ライル様だ!」
緊張し過ぎて挨拶すらまともに出来なかった苦い思い出だ。
そして空回りした俺は、
「おい間抜け! 俺の子分になる事を許してやる!」
「結構です!」
横柄な態度で馬鹿な事を口走っていた。
つい言ってしまった言葉のせいで、俺の印象は最悪だっただろう。
ああ、何度会っても意地悪をしてしまうこの口と体を呪ってやりたい。
本当は、素直に好きだと言いたいんだ。
「ライル殿下、お暇なら私と踊りませんか?」
あの時も、本当は飛び上がりたいほど嬉しかった。素直な気持ちを伝えられたら、どんなに楽か。
まあ、今さら愛の言葉を囁いた所で、君は信じてくれないかもな……。
母親譲りの素敵な笑顔。
困っている人を見捨てられない優しい心。
強くて逞しい姿。
君の全てが大好きだ。
だから、君の父上が死刑判決を受けて家がお取り潰しになった時、いてもたってもいられず、全速力で君の元へ走っていた。
「お前ら、侍女になれ」
強くて逞しい君だから、俺の助けなんていらなかったのかもしれない。
でも、君は俺の手を取ってくれた。
弱った心につけ込むようで男らしくないが、これはチャンスだと思った。
なのに、俺は相変わらず意地悪な口を止められない。唯一出来た事は、君に剣を教わる時間を貰った事。
爽やかな笑顔で剣を振るう君と二人だけの時間。
いつまでもこうしていたい。そう思っても、時は止められないのが悔しかった。
俺は一体、君に何をしてやれるだろうか。
考えても良案なんて浮かばず、時間だけが過ぎていく。
この時ばかりは、頭の切れるフレデリックが恨めしい。
あいつもアリアに気があるっぽい。なんせ、将来の側室なんて話があったぐらいだ。
そうなったら、刺し違えても止めるけどな。
そんなフレデリックは、アリアのために裏でこそこそ動いていた。
気に入らないが、それがアリアのためになるならと、勝手にやらせておくのが良いと思った。
全く気に入らない。君がフレデリックを見る目は、俺を見る目と全然違うんだから。
俺だって、アリアのためならなんでもしてやりたい。それで死んだとしても、愛する者のために死ねるなら本望だ。
だが、馬鹿な俺にはどうしたら良いのか分からない。
そんな時ーー
応接室の前を通りかかると、深刻そうなフレデリックの声とアリアの悲しそうな声が聞こえてきた。
何事かと、よくよく聞いて見ると、それはアリアの父上の件だった。
フレデリックは、アリアの為に公務を前倒しで休みなくこなし、事件を調べる時間を作っていたらしい。
「出発は明日。今日は旅支度をしておいてくれ。その間に、暫く居なくなるアリアちゃんの事は僕の方から話をつけておくよ」
「はい! ありがとうございます!」
旧サウザンド領へ事件を調べるために、アリアと二人旅に行く計画を立てている。
そんなの許せるか! いくらアリアが強くても、もしアリアの身になにかあったらっ!
そう思うと、俺の体は勝手に動いていた。
「その話、ちょっと待ったぁぁっっ!」
兄貴と二人きりになんて絶対させない。
アリアは、俺が護るんだ!
「元気がないけど大丈夫? 良かったら、私とお話しましょ!」
あれは五歳の時だったかな。病気がちの俺は、良く風邪を引いては寝込んでいた。
王宮で開かれた舞踏会。あの時も、少しダルくてぼーっとしていた。
そんな姿を見た君は、小さな体でトコトコやって来て、俺を元気づけてくれたね。
次に再開したのは、五年後の春。俺を見ても、あの舞踏会の事は覚えていない様子だった。
「お、お、俺はっ、ライル様だ!」
緊張し過ぎて挨拶すらまともに出来なかった苦い思い出だ。
そして空回りした俺は、
「おい間抜け! 俺の子分になる事を許してやる!」
「結構です!」
横柄な態度で馬鹿な事を口走っていた。
つい言ってしまった言葉のせいで、俺の印象は最悪だっただろう。
ああ、何度会っても意地悪をしてしまうこの口と体を呪ってやりたい。
本当は、素直に好きだと言いたいんだ。
「ライル殿下、お暇なら私と踊りませんか?」
あの時も、本当は飛び上がりたいほど嬉しかった。素直な気持ちを伝えられたら、どんなに楽か。
まあ、今さら愛の言葉を囁いた所で、君は信じてくれないかもな……。
母親譲りの素敵な笑顔。
困っている人を見捨てられない優しい心。
強くて逞しい姿。
君の全てが大好きだ。
だから、君の父上が死刑判決を受けて家がお取り潰しになった時、いてもたってもいられず、全速力で君の元へ走っていた。
「お前ら、侍女になれ」
強くて逞しい君だから、俺の助けなんていらなかったのかもしれない。
でも、君は俺の手を取ってくれた。
弱った心につけ込むようで男らしくないが、これはチャンスだと思った。
なのに、俺は相変わらず意地悪な口を止められない。唯一出来た事は、君に剣を教わる時間を貰った事。
爽やかな笑顔で剣を振るう君と二人だけの時間。
いつまでもこうしていたい。そう思っても、時は止められないのが悔しかった。
俺は一体、君に何をしてやれるだろうか。
考えても良案なんて浮かばず、時間だけが過ぎていく。
この時ばかりは、頭の切れるフレデリックが恨めしい。
あいつもアリアに気があるっぽい。なんせ、将来の側室なんて話があったぐらいだ。
そうなったら、刺し違えても止めるけどな。
そんなフレデリックは、アリアのために裏でこそこそ動いていた。
気に入らないが、それがアリアのためになるならと、勝手にやらせておくのが良いと思った。
全く気に入らない。君がフレデリックを見る目は、俺を見る目と全然違うんだから。
俺だって、アリアのためならなんでもしてやりたい。それで死んだとしても、愛する者のために死ねるなら本望だ。
だが、馬鹿な俺にはどうしたら良いのか分からない。
そんな時ーー
応接室の前を通りかかると、深刻そうなフレデリックの声とアリアの悲しそうな声が聞こえてきた。
何事かと、よくよく聞いて見ると、それはアリアの父上の件だった。
フレデリックは、アリアの為に公務を前倒しで休みなくこなし、事件を調べる時間を作っていたらしい。
「出発は明日。今日は旅支度をしておいてくれ。その間に、暫く居なくなるアリアちゃんの事は僕の方から話をつけておくよ」
「はい! ありがとうございます!」
旧サウザンド領へ事件を調べるために、アリアと二人旅に行く計画を立てている。
そんなの許せるか! いくらアリアが強くても、もしアリアの身になにかあったらっ!
そう思うと、俺の体は勝手に動いていた。
「その話、ちょっと待ったぁぁっっ!」
兄貴と二人きりになんて絶対させない。
アリアは、俺が護るんだ!
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