上 下
114 / 131
第4章:帝国編

第114話 待ち伏せ

しおりを挟む
 蓮とS級勇者たち、バッファチームで帝都へ軍用トラックで移動していると、前方に何やら集団が待ち伏せをしている。

 近づいてみると、それは冒険者の一団だった。そして、その一団の中から、ぴよーんと何だか小さくてかわいい者が飛び出て来たのだ。

「にゃー!誰がなんと言おうとラーナも一緒に行くからにゃ!」
 と鼻息も荒いラーナ先生だった。ラーナ先生だけじゃなく、魔の森の攻略に参加した冒険者たちも一緒だった。

 何故か、ターランド冒険者ギルドのギルドマスターまでがその中にいたりするのだ。

「ここにいない冒険者はすでにモントヴル王国軍に援軍として合流している。ここで待っていた者たちはお前たちと一緒に帝国まで行くと言って聞かなかった奴らだよ」

 ギルマスは『仕方ないだろ、諦めろ』と言った感じで強引にトラックに乗り込もうとするが、人数が多すぎて全員が乗るのはちょっと無理そうだ。

「あまり人数が多いと目立つんだがな」
 と、アランは愚痴ると……。

「まぁまぁ、こいつレンがいたら何てことないじゃろうて」
 と、バッファは蓮の頭を抱えてグリグリしてくるのを必死で振り払おうとバタバタしている。
「ちょー、痛い痛い、やめてー!」

 バッファと蓮が戯れているのを見つつ、仕方ないなぁと言った風にアランはモーリッツに依頼をした。

「今のトラックだけじゃ、これだけの人数は運べないな。先は長い、女性は別の車両にした方がいいよな。モーリッツ、装輪装甲車をよろしく。それとトイレはつけれるか?」
「任せとけ。ドイツのボXサーはトイレ標準装備だ。洗浄便座は付いてないけどな」
「ハハハ、日本の96式は洗浄便座どころかトイレもないよ。ついでにアメリカもだけどな」
 本城は肩をすくめて苦笑いをする。そして、フランソワに女性たちを集めてもらい後を任せた。

 装輪装甲車の運転はモーリッツ、トラックは本城が運転し、ガリオンとクライドには交代で隣に乗ってもらっての運転を覚えてもらう事にして、男どもは全員トラックでの移動にしてもらったのだが…。野郎ばかりでむさ苦しいと、ほざいていたのは無視をした。

「そう言えば、アーヴィンはすでに偵察に出発したんだろ?あいつは何を利用して行ったんだ?」

 本城がモーリッツに問いかけると、モーリッツは呆れながら答えた。

「ああ、あいつは『ニンジャ』で行くと言い張ったんだが、空を飛べる方がいいだろうと、ランディと『グリフィン』で出かけていったよ」

「『ニンジャ』で行けないのは残念だけど、だが『グリフィン』を見て、ガキのように、はしゃいではいたぞ。もちろん『ニンジャ』は、収納には入れて行ったがな。それと高性能のドローンも持っていったな」

 ヤレヤレといった風にモーリッツは笑う。アーヴィンはドローンを飛ばして、情報をこちらへ送ると言ってたようだ。


 ◇◇◇


「あれ、帝国軍か?」

 アーヴィンは一足先にランディと二人で帝国へと向かっていた。かなりのスピードがでているようで、意外にも早く帝国に着ける感じだった。

 『グリフィン』で空を進ん帝国の近くまで近づいて行くと、帝国兵らしき総勢二万ほどの一団と、その半数ほどの軍団と対峙しているのが見えた。

「あれって、何してるんだ?」
 アーヴィンはランディに問い掛ける。

「あのエンブレムからして、どうも、どちらも同じ帝国軍のようですね。それなのに、何ですかね?ピリピリとした喧嘩ごしでの、異様な感がしますね」
 と答えるランディ。

「それって、もしかして、ルキウス側とハウザー側との、互いの取り巻きによる兄弟喧嘩ってところかもな?」
 まぁ、ここはモーリッツたちに”ポチっ”と映像を送ってと……。面倒に巻き込まれないように先に進みますか~ って事で、クレマント公爵の親派によっての足止めに期待しつつアーヴィンたちは帝都へと向かう事にした。

「それにしても、帝国はこの寒い時期によく攻め込もうって思ったよな」
「まぁ、今が一番いい時期ではあるんですよ。もう少ししたら大地は凍るんで、大地が凍らない内って事でしょうね」
「そうは言っても野営は大変そうだけどな……」

 そんな会話をしつつ帝都へと向かって行くと、帝都方面から不穏な感覚が立ち込めてくる。

「おい、あれを見ろ!」
「ちょっとあれなんだ!煙が立ち上ってるじゃないですか!?」
「なんだよアレ。ちょっとアレを急いで飛ばしてみるよ!」

 帝都から、いくつもの煙が立ち上っているではないか!アーヴィンは慌てて全速力でのドローンを帝都方面に向かい飛ばしたのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。

ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの? ……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。 彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ? 婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。 お幸せに、婚約者様。 私も私で、幸せになりますので。

悪役令嬢は、初恋の人が忘れられなかったのです。

imu
恋愛
「レイラ・アマドール。君との婚約を破棄する!」 その日、16歳になったばかりの私と、この国の第一王子であるカルロ様との婚約発表のパーティーの場で、私は彼に婚約破棄を言い渡された。 この世界は、私が前世でプレイしていた乙女ゲームの世界だ。 私は、その乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった。 もちろん、今の彼の隣にはヒロインの子がいる。 それに、婚約を破棄されたのには、私がこの世界の初恋の人を忘れられなかったのもある。 10年以上も前に、迷子になった私を助けてくれた男の子。 多分、カルロ様はそれに気付いていた。 仕方がないと思った。 でも、だからって、家まで追い出される必要はないと思うの! _____________ ※ 第一王子とヒロインは全く出て来ません。 婚約破棄されてから2年後の物語です。 悪役令嬢感は全くありません。 転生感も全くない気がします…。 短いお話です。もう一度言います。短いお話です。 そして、サッと読めるはず! なので、読んでいただけると嬉しいです! 1人の視点が終わったら、別視点からまた始まる予定です!

「異世界で始める乙女の魔法革命」

 (笑)
恋愛
高校生の桜子(さくらこ)は、ある日、不思議な古書に触れたことで、魔法が存在する異世界エルフィア王国に召喚される。そこで彼女は美しい王子レオンと出会い、元の世界に戻る方法を探すために彼と行動を共にすることになる。 魔法学院に入学した桜子は、個性豊かな仲間たちと友情を育みながら、魔法の世界での生活に奮闘する。やがて彼女は、自分の中に秘められた特別な力の存在に気づき始める。しかし、その力を狙う闇の勢力が動き出し、桜子は自分の運命と向き合わざるを得なくなる。 仲間たちとの絆やレオンとの関係を深めながら、桜子は困難に立ち向かっていく。異世界での冒険と成長を通じて、彼女が選ぶ未来とは――。

ダンジョン経営初心者の僕は、未来の俺の力を借りてでも君を絶対に幸せにしてみせる

紺色ツバメ
ファンタジー
魔王の息子であるクレフ=クレイジーハートは、十四歳の誕生日を迎えたその日から、この世界にある一つのダンジョンの運営を任せられていた。 父から派遣された二人の側近、妹のミルメア=クレイジーハート、そして何人かの昔からの仲間とともに、ダンジョンに攻め入る勇者の相手をする、少し退屈で、しかし平穏な日々を送っていた。 そう、その日までは。 これは、彼が縁もゆかりもなかった世界の姫君を勇者よろしく守ることになるまでの、 七十二時間ほどの、短い、お話。

【読み切り版】婚約破棄された先で助けたお爺さんが、実はエルフの国の王子様で死ぬほど溺愛される

卯月 三日
恋愛
公爵家に生まれたアンフェリカは、政略結婚で王太子との婚約者となる。しかし、アンフェリカの持っているスキルは、「種(たね)の保護」という訳の分からないものだった。 それに不満を持っていた王太子は、彼女に婚約破棄を告げる。 王太子に捨てられた主人公は、辺境に飛ばされ、傷心のまま一人街をさまよっていた。そこで出会ったのは、一人の老人。 老人を励ました主人公だったが、実はその老人は人間の世界にやってきたエルフの国の王子だった。彼は、彼女の心の美しさに感動し恋に落ちる。 そして、エルフの国に二人で向かったのだが、彼女の持つスキルの真の力に気付き、エルフの国が救われることになる物語。 読み切り作品です。 いくつかあげている中から、反応のよかったものを連載します! どうか、感想、評価をよろしくお願いします!

異世会男子の聖女物語〜能力不足の男として処刑放逐した召喚者は実は歴代最強勇者(男の娘判定)だった!〜変装の為の女装だ!男の娘言うな!

KeyBow
ファンタジー
召喚時に同名の幼馴染と取り違えられ、勇者と聖女がテレコになった。男と言うだけで処刑の為追放される。初期に与えられたギフトは異空間収納と一日一度限定の時間遡行のみ。生き延びられるか?召喚される前に、異世界で知り合った謎の美少女達と逃避行をする為に女装している夢を見たのだが・・・

Shapes of Light

花房こはる
ファンタジー
この世界の人間達は皆魔力を所有している。その魔力の保有量は人それぞれ差があり、魔力が多いものほど人生に於て優位な立場に立てる。 また、他の者の魔力を奪い自分のモノにする事も可能だ。いわゆる弱肉強食の世界。 ここ、『アシオン』の現王も他の魔力を奪うことで、力を増大させこの王の座に着いた。 人の道として他のモノを奪うなど道徳的にも御法度と言えるのだが、この王の即位後、王自らの行為を正当化するため『他の者から魔力を奪うことを可とする』と言う新たな法を立法した。 そのため今の王になってから、いったいどれほどの人の命が魔力の奪い合いで消えてしまったのか。 そんな悪王に半ば強制的に仕えさせられている「カイル」は、勅令により赴いた地で樹木の魔物に襲われている「シン」と言う少年を助ける。 シンは、この国では見たこともない風貌と紫の瞳を持った異国の少年だった。 そのシンは魔力量が桁違いに多く、その力を欲する王に目を付けられてしまう。そしてシンは、魔力を魔石として取り出されそうになる。 魔石とは、奪い取った魔力を石のように具現化したものだ。その魔石を服用すれば、魔力を奪ったときと同じようにその魔力を使うことができる。 だが、その魔石を作るためにはかなりの魔力を濃縮して作るため、通常なら数人分の魔力で魔石は1個から2個ほどしか作ることが出来ない。 魔力をすべて魔石に変えられた者の末路は、消滅しかない。

罪咎《ざいきゅう》の転移者 ~私の罪と世界の咎~

曇天
ファンタジー
女子高生、七峰 凛《ななみね りん》は超能力者だった。 ある予知で能力を使い目覚めると、モンスターに襲われる少年トレアと出会いそこが魔法のある異世界だとしる。 凛はその世界で生き自らの過去と能力に向かい合っていく。

処理中です...