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第4章:帝国編
第99話 勇者との会合
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とうとうS級さんたちとの遭遇を果たしたわけだが、女神様から流れて来た懸念材料を彼らはどう捉えて、何を感じるだろうか?そこが一番の問題だと思っている。
まぁ、はっきり言って『勇者召喚』?なんて、完全に拉致事件だからね。
僕の場合は、犯罪に巻き込まれそうになっての、(良く言ったら)助かったって言う事案だった。最初こそは戸惑ったけど、いい出会いと経験のお陰で大きく成長出来たわけだから、感謝こそすれ文句はないんだけど。
突然、ボス部屋に放込まれて「これ死んだかも?」って言う経験をさせられたと言うのは、この際、横に置いておこう。
だが、彼らは違う。
本来、地球であっても、最高の評価を受け、最強の人たちだったわけだから、そこのところは僕との大きな相違点なわけで。
彼らには、望むなら、今すぐにでも”地球に帰る権利”があるわけだ。
ただ、彼らの協力が得られないと、難易度が爆上がりし、不可能な状況になるかもと言う案件なので、そこはここの住人たちがお願いしての理解を促すしかないように思う。地球だって、ダンジョンのお陰で潤ったと言う事はあるんだけど、それは副次的効果って事だろうし。
そこで、関係者全員を食堂に集めたうえで、僕の口から説明しないといけないだろう。オッサンたち一同をS級さんたちに紹介し、皆に食後のコーヒーを出すことにした。
もちろんそこはケーキもつける。今日のケーキはフランソワの折り入っての願いでクレームブリュレだ。
砂糖を混ぜた卵黄に、牛乳と生クリームを温めたものを注ぎバニラビーンズを加える。こしながら容器に入れて、窯に入れての湯煎焼きにした。オーブンがないので温度調整は大変だ。
それを氷魔法で冷やし、固まったカスタードの表面をグラニュー糖で覆い、炎魔法で焦がす。
焦がしたグラニュー糖が香ばしい、甘くクリーミーなプリンのようなお菓子の出来上がり。そこにラズベリーを乗せて完成だ。
フランソワやアリシア、女の子達が大喜びしてくれた。それほど喜んでくれたら、作った僕も嬉しい。
そして、食堂に集めた、関係者全員の前で僕はこう言ったのだった。
「謎はすべて解けた。犯人はこの中にいる!」(一度言ってみたかった)
の訳なく……。
皆がコーヒーを飲みながら和んでいる所で、女神の言葉を伝える事にしたのだった。
◇◇◇
「三千年前の神魔大戦の時、聖女クロフォーネが邪神と差し違える形で封印した場所と言うのが、現在、帝都の城が建っている場所なのだそうです」
封印された場所の上に建てられた神殿が朽ち、それが取り払われて城が建てられた。
帝国は人族中心の国だ。それ以外の種族を排除している。
三千年という時の流れは人族の寿命にして、余りにも長かった。また焚書《ふんしょ》も一因だろう。その為、彼らの記憶から、故意か偶然だったのかは今となっては分からないが、その事がすっかり忘れ去られてしまったのだ。
帝国が他種族の意見を聞く耳があったとしたら、もしかしたらこうはならなかったかもしれない。それは、あくまでもIF論なのだ。
そこで女神は精霊樹の根を張って、封印の力が弱まらないように守っていたのだ。 が、その精霊樹に危機が迫った。
その事が今回、僕たちを地球から呼び寄せた真相だった事、僕のスキルを使えば、望むなら地球へ送り届けることができる事をS級さんたちに伝える。そして、彼らがどういう結論を出すかを待つことにしたのだった。
「そうだな、乗りかかった船と言う事もあるが、最初は国同士の戦争を止めると言う事案だと思ってたからな。それももちろん大変な問題ではあるんだが…。話が少しばかり、いや、かなり壮大なものになってしまったって感じか」
「そうだな、僕たちが勇者として、この世界全体を救うという事案に発展したわけだ」
「それが、わたくしたちに託されたって事かしら?」
S級さんたちは、うーんと唸りだした。彼らは互いに厳しい顔を突き合わせて、英語で話し合いを始めたようだ。その光景を息を凝らして見守るこの世界の住人たち。
しばらく話し合いが続いた後、アーヴィンが僕の顔をしっかりと見据えて、代表して話し出した。
「すこし時間をくれないか。やはり話のスケールが大きすぎる。それとレン君、君を入れての六人でじっくりと話し合いたいと思っているんだ。いいだろうか?」
「はい、もちろんです」
「この件は一旦置いておく事にして、囚われていたエルフたちの事の解決を先に済ませた方がいいだろうな。もしかしたら、それがこの件に大きく関わってきているかもしれないからね」
そう言うその事をご隠居や公爵、師匠たちにも了解を得て、ここは一旦お開きとなった。
まぁ、はっきり言って『勇者召喚』?なんて、完全に拉致事件だからね。
僕の場合は、犯罪に巻き込まれそうになっての、(良く言ったら)助かったって言う事案だった。最初こそは戸惑ったけど、いい出会いと経験のお陰で大きく成長出来たわけだから、感謝こそすれ文句はないんだけど。
突然、ボス部屋に放込まれて「これ死んだかも?」って言う経験をさせられたと言うのは、この際、横に置いておこう。
だが、彼らは違う。
本来、地球であっても、最高の評価を受け、最強の人たちだったわけだから、そこのところは僕との大きな相違点なわけで。
彼らには、望むなら、今すぐにでも”地球に帰る権利”があるわけだ。
ただ、彼らの協力が得られないと、難易度が爆上がりし、不可能な状況になるかもと言う案件なので、そこはここの住人たちがお願いしての理解を促すしかないように思う。地球だって、ダンジョンのお陰で潤ったと言う事はあるんだけど、それは副次的効果って事だろうし。
そこで、関係者全員を食堂に集めたうえで、僕の口から説明しないといけないだろう。オッサンたち一同をS級さんたちに紹介し、皆に食後のコーヒーを出すことにした。
もちろんそこはケーキもつける。今日のケーキはフランソワの折り入っての願いでクレームブリュレだ。
砂糖を混ぜた卵黄に、牛乳と生クリームを温めたものを注ぎバニラビーンズを加える。こしながら容器に入れて、窯に入れての湯煎焼きにした。オーブンがないので温度調整は大変だ。
それを氷魔法で冷やし、固まったカスタードの表面をグラニュー糖で覆い、炎魔法で焦がす。
焦がしたグラニュー糖が香ばしい、甘くクリーミーなプリンのようなお菓子の出来上がり。そこにラズベリーを乗せて完成だ。
フランソワやアリシア、女の子達が大喜びしてくれた。それほど喜んでくれたら、作った僕も嬉しい。
そして、食堂に集めた、関係者全員の前で僕はこう言ったのだった。
「謎はすべて解けた。犯人はこの中にいる!」(一度言ってみたかった)
の訳なく……。
皆がコーヒーを飲みながら和んでいる所で、女神の言葉を伝える事にしたのだった。
◇◇◇
「三千年前の神魔大戦の時、聖女クロフォーネが邪神と差し違える形で封印した場所と言うのが、現在、帝都の城が建っている場所なのだそうです」
封印された場所の上に建てられた神殿が朽ち、それが取り払われて城が建てられた。
帝国は人族中心の国だ。それ以外の種族を排除している。
三千年という時の流れは人族の寿命にして、余りにも長かった。また焚書《ふんしょ》も一因だろう。その為、彼らの記憶から、故意か偶然だったのかは今となっては分からないが、その事がすっかり忘れ去られてしまったのだ。
帝国が他種族の意見を聞く耳があったとしたら、もしかしたらこうはならなかったかもしれない。それは、あくまでもIF論なのだ。
そこで女神は精霊樹の根を張って、封印の力が弱まらないように守っていたのだ。 が、その精霊樹に危機が迫った。
その事が今回、僕たちを地球から呼び寄せた真相だった事、僕のスキルを使えば、望むなら地球へ送り届けることができる事をS級さんたちに伝える。そして、彼らがどういう結論を出すかを待つことにしたのだった。
「そうだな、乗りかかった船と言う事もあるが、最初は国同士の戦争を止めると言う事案だと思ってたからな。それももちろん大変な問題ではあるんだが…。話が少しばかり、いや、かなり壮大なものになってしまったって感じか」
「そうだな、僕たちが勇者として、この世界全体を救うという事案に発展したわけだ」
「それが、わたくしたちに託されたって事かしら?」
S級さんたちは、うーんと唸りだした。彼らは互いに厳しい顔を突き合わせて、英語で話し合いを始めたようだ。その光景を息を凝らして見守るこの世界の住人たち。
しばらく話し合いが続いた後、アーヴィンが僕の顔をしっかりと見据えて、代表して話し出した。
「すこし時間をくれないか。やはり話のスケールが大きすぎる。それとレン君、君を入れての六人でじっくりと話し合いたいと思っているんだ。いいだろうか?」
「はい、もちろんです」
「この件は一旦置いておく事にして、囚われていたエルフたちの事の解決を先に済ませた方がいいだろうな。もしかしたら、それがこの件に大きく関わってきているかもしれないからね」
そう言うその事をご隠居や公爵、師匠たちにも了解を得て、ここは一旦お開きとなった。
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