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第2章:ダンジョン攻略編(王都ダンジョン)
第46話 驚きの事実
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僕は夢を見た。竜と戯れる二人の少女。そのうちの一人の少女が、竜に草花で作った冠を差し出している。竜は優し気に頭を下げてあげると、少女は竜の頭に草花の冠をのせ、竜の首に抱き着いて無邪気に笑っている。
場面が変わる。夢の中で僕は竜と対峙している。その竜が何かを訴えかけているのだけど、それが何なのか解らない。なんだか、すごくもどかしいのですが。そんな僕を竜は悲し気に見つめているだけなのです。
そして、目が覚めた。
海を望む高台から水平線が見える。そこから朝日が昇りかけている様だ。これって黎明期《れいめいき》って言うんだよね。朝日が昇るごとにだんだんと神殿を浮かび上がらせ、それがとても神秘的で綺麗だと思った
今日これから、この神殿での最後の難関であるドラゴンゾンビ戦となる。だけど、見た夢を思い出して、僕は本当に戦っていいのだろうか?なんか違うように思えて来たのだ。
二柱の神からの恩恵を与えられる場であったはずの神殿。竜にとっては、その神殿とそこに集う者達を守るのが神命であったはずなのだ。だがそれは、邪神となったベルディエルが魔物を嗾《けしか》けて、民側についた女神アルフォーニスと戦った事で、神殿の秩序は崩壊し、その存在意義も失われた。
そして守らなければいけないと思っていた存在から受けた無情。その暴虐は竜の理性と崇高な魂を壊してしまったのだ。
下層にある一つの島。それ全体が大きな巣になっている。その真ん中に禍々しいオーラを纏った骨が散乱していた。
リッチは僕に守護竜を助けてくれって言ったんだ。助ける?どうしたら助けられる?浄化したら?いやいや、それじゃ傷ついた心は癒せない。
そう言えば、リッチは最初、僕になんと言った?僕は自問自答する。
『よく来た。待っていたぞ、異界の者よ。悠久の時を経て、ようやく我が望み果たされる時がきたか。さぁ、参られよ』
リッチはとても理性的だった。ここで長い時を一人待っていたんだ。
「誰を?何の為に?」
望みって、守護竜を助ける事?いや、それだけじゃないよね。
『…抗えない我らをどうか御救い……』
リッチは僕がここに来た事を理解していたんだ。本当は戦いたくなかったのではないだろうか?だけど、抗えなかった…。何に?
僕は、勇気を出して、一旦解除していた<シンクロ>を同期させた。昨日は、神殿ダンジョンからの残留思念が洪水のように頭に入って来たことで、戸惑っておもわず解除してしまったのだ。だけど、何故か今はとても静かだった。きっと、オーカスやリッチに凝縮していたものが解放されたからだろうか。
リッチは『暗黒の闇に囚われて、理性を失った守護竜』を助けてくれって言ってたけど、今、僕の中に暗黒の思念は入ってこないのは何でだろう?
すると、頭の中に声が響いて来たのだ。
『ようやく繋げてくれたな。なかなか繋げないのをもどかしく思っておった』
「え?どなた様ですか?」
『我はこの神殿の守護竜であったものよ。今は、ゾンビへと成り果ててはおるがの。』
そう言ったかと思うと、僕の頭の中に映像が入ってくる。それは濃い紫のオーラを纏《まと》ったドラゴンゾンビだった。
「えええ?理性を失ってるって聞いてたんですけど」
そのドラゴンゾンビは普通だった。見た目は禍々しいのだけど、話す声は理性的だったのだ。どうやったら救えるとか、あれほど悩んで自問自答したのは何だったんだよー!
『ああ、懐かしい匂いを感じてな。その気配のお陰で我に返ったわ』
「懐かしい匂い?」
『そうだ、そこにいるのは聖女クロフォーネの双子の妹、その末裔よ』
竜はそう言うと、まだ寝息を立てているアリシアを指し示したのだった。
◇◇◇
聖女クロフォーネには双子の妹がいた。名をアルフィーネという。二人はこの神殿で竜と一緒に育ったのだ。だが、姉のクロフォーネに聖女としての才能がある事が解ると、二人は引き離されてしまった。妹に才能がなかったわけじゃなく、姉が一人その重荷を背負った形だったのだ。二人はとても仲がよく、姉がこの神殿からどこかへ連れて行かれた後、姉の行方を探しに妹はここから出て行ってしまった。その後、彼女はここへ帰る事はなかった。
ドラゴンゾンビは昔話を淡々と語った。妹から姉の行く先を聞かれたが、どうしても話せなかった。『ベルディエル様を封印するために、命を捧げに行くのだ』なんて、そんな事言えるはずがない。
だから、その後、民衆がここに押し寄せてきた時も、民に手出しする事はできなかった。逃げるなら出来たかもしれない。だけど、あの幸せだった時はもう戻って来ないのだ。そして私の役割も終わった。我が主であったベルディエル様のやった事の償いをする思いもあったろうか。そう思えば、ここで民の手にかかり生涯を終えるのも悪くない。とも語った。
我には民衆への怒りは無かったはずだった。だがしかし、クロフォーネを止める事が出来なかった己の無力さへの憤り、後悔と罪悪感がこのダンジョンへと取り込まれてしまったようだ。しかし、
『妹アルフィーネの末裔にも会えたのだ。あの娘のその後が心残りでもあったのだが、幸せであったのだろう』
アリシアを見ているとアルフィーネが幸せだった事が読み取れるらしい。
『もう思い残す事はない。後は、我を倒して解放してほしい』
と言うドラゴンゾンビ。
『正気を保っていられるのもあと僅かなのだ。頼んだぞ、異界の者よ』
『では、島で待っておるぞ』
ドラゴンゾンビがそう言うと、接続は切れてしまった。
場面が変わる。夢の中で僕は竜と対峙している。その竜が何かを訴えかけているのだけど、それが何なのか解らない。なんだか、すごくもどかしいのですが。そんな僕を竜は悲し気に見つめているだけなのです。
そして、目が覚めた。
海を望む高台から水平線が見える。そこから朝日が昇りかけている様だ。これって黎明期《れいめいき》って言うんだよね。朝日が昇るごとにだんだんと神殿を浮かび上がらせ、それがとても神秘的で綺麗だと思った
今日これから、この神殿での最後の難関であるドラゴンゾンビ戦となる。だけど、見た夢を思い出して、僕は本当に戦っていいのだろうか?なんか違うように思えて来たのだ。
二柱の神からの恩恵を与えられる場であったはずの神殿。竜にとっては、その神殿とそこに集う者達を守るのが神命であったはずなのだ。だがそれは、邪神となったベルディエルが魔物を嗾《けしか》けて、民側についた女神アルフォーニスと戦った事で、神殿の秩序は崩壊し、その存在意義も失われた。
そして守らなければいけないと思っていた存在から受けた無情。その暴虐は竜の理性と崇高な魂を壊してしまったのだ。
下層にある一つの島。それ全体が大きな巣になっている。その真ん中に禍々しいオーラを纏った骨が散乱していた。
リッチは僕に守護竜を助けてくれって言ったんだ。助ける?どうしたら助けられる?浄化したら?いやいや、それじゃ傷ついた心は癒せない。
そう言えば、リッチは最初、僕になんと言った?僕は自問自答する。
『よく来た。待っていたぞ、異界の者よ。悠久の時を経て、ようやく我が望み果たされる時がきたか。さぁ、参られよ』
リッチはとても理性的だった。ここで長い時を一人待っていたんだ。
「誰を?何の為に?」
望みって、守護竜を助ける事?いや、それだけじゃないよね。
『…抗えない我らをどうか御救い……』
リッチは僕がここに来た事を理解していたんだ。本当は戦いたくなかったのではないだろうか?だけど、抗えなかった…。何に?
僕は、勇気を出して、一旦解除していた<シンクロ>を同期させた。昨日は、神殿ダンジョンからの残留思念が洪水のように頭に入って来たことで、戸惑っておもわず解除してしまったのだ。だけど、何故か今はとても静かだった。きっと、オーカスやリッチに凝縮していたものが解放されたからだろうか。
リッチは『暗黒の闇に囚われて、理性を失った守護竜』を助けてくれって言ってたけど、今、僕の中に暗黒の思念は入ってこないのは何でだろう?
すると、頭の中に声が響いて来たのだ。
『ようやく繋げてくれたな。なかなか繋げないのをもどかしく思っておった』
「え?どなた様ですか?」
『我はこの神殿の守護竜であったものよ。今は、ゾンビへと成り果ててはおるがの。』
そう言ったかと思うと、僕の頭の中に映像が入ってくる。それは濃い紫のオーラを纏《まと》ったドラゴンゾンビだった。
「えええ?理性を失ってるって聞いてたんですけど」
そのドラゴンゾンビは普通だった。見た目は禍々しいのだけど、話す声は理性的だったのだ。どうやったら救えるとか、あれほど悩んで自問自答したのは何だったんだよー!
『ああ、懐かしい匂いを感じてな。その気配のお陰で我に返ったわ』
「懐かしい匂い?」
『そうだ、そこにいるのは聖女クロフォーネの双子の妹、その末裔よ』
竜はそう言うと、まだ寝息を立てているアリシアを指し示したのだった。
◇◇◇
聖女クロフォーネには双子の妹がいた。名をアルフィーネという。二人はこの神殿で竜と一緒に育ったのだ。だが、姉のクロフォーネに聖女としての才能がある事が解ると、二人は引き離されてしまった。妹に才能がなかったわけじゃなく、姉が一人その重荷を背負った形だったのだ。二人はとても仲がよく、姉がこの神殿からどこかへ連れて行かれた後、姉の行方を探しに妹はここから出て行ってしまった。その後、彼女はここへ帰る事はなかった。
ドラゴンゾンビは昔話を淡々と語った。妹から姉の行く先を聞かれたが、どうしても話せなかった。『ベルディエル様を封印するために、命を捧げに行くのだ』なんて、そんな事言えるはずがない。
だから、その後、民衆がここに押し寄せてきた時も、民に手出しする事はできなかった。逃げるなら出来たかもしれない。だけど、あの幸せだった時はもう戻って来ないのだ。そして私の役割も終わった。我が主であったベルディエル様のやった事の償いをする思いもあったろうか。そう思えば、ここで民の手にかかり生涯を終えるのも悪くない。とも語った。
我には民衆への怒りは無かったはずだった。だがしかし、クロフォーネを止める事が出来なかった己の無力さへの憤り、後悔と罪悪感がこのダンジョンへと取り込まれてしまったようだ。しかし、
『妹アルフィーネの末裔にも会えたのだ。あの娘のその後が心残りでもあったのだが、幸せであったのだろう』
アリシアを見ているとアルフィーネが幸せだった事が読み取れるらしい。
『もう思い残す事はない。後は、我を倒して解放してほしい』
と言うドラゴンゾンビ。
『正気を保っていられるのもあと僅かなのだ。頼んだぞ、異界の者よ』
『では、島で待っておるぞ』
ドラゴンゾンビがそう言うと、接続は切れてしまった。
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