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第2章:ダンジョン攻略編(王都ダンジョン)

第43話 魔王オーカス

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 今、僕たちは、王都から1時間ほど行った所、小高い岩山の地形を利用し建てられた広大な神殿を見上げていた。そればまるでお城のようであり、要塞のようでもあった。

 その神殿は、以前は相当立派な建物だったのだろう事が分かる。しかし、今は、あちこちが崩れ落ち、廃墟となり果てていた。そして、ぞっとする不気味な雰囲気を漂わせている。

「妙に神聖な空気は漂ってはいるけど、この気配に、この静けさ。とても不気味よね」

 廃墟から感じる異常な気配に、アリシアは身震いしている。ネコ先生も自分のしっぽをしっかりと握りしめ、足取りも重そうだ。

「以前来た時より、空気が重いな」
 ガリオンさんですら、この空気感に二の足を踏んでいた。

 僕はと言えば、なんか日本のコスプレーヤーの間で、絶対にバズるスポットだよね。なんて不敬な事をぼーっと考えていたら、オッサンに声をかけられた。

「坊主、これを渡しておく。以前渡したアームシールドより性能は上じゃ。対魔法防御も付加させた。ここに徘徊しているアンデッドは魔法を使ってくる。また、魔法でしか倒せない事を充分認識してろ」

 そういうと、以前の物よりも魔力の力を感じさせるアームシールドを渡してくれた。


 教会に向かう三本の道は、各階層へと向かっている。半透明のゴーストが徘徊する坂道を昇って行けば、その向こうに広がる海を眺める上層の教会跡に続いている。そこに向かう道の両側には、宿舎だったのだろうか、そこで神官達が生活していた事が伺えた。そして最上階の塔に、この教会での最高位であった司教が不死王リッチと成り果て、そこに縛られているのだ。

 そして、真っすぐに向かう参道は、中層へと続き、以前は一般の参拝者が訪れていた大聖堂だったのだろう、その壊れかけた建物には、いくつもの壊れた長椅子が並んでおり、その最奥の祭壇の両側に、巨大な像が建っていた。その像は女神アルフォーニスなのか?美しい女神像であった。しかし、その横にあったであろう像は、足だけになっていて、無残に壊されていたのだ。その像の前に、まるでそれを守るかのように、魔王オーカスが鎮座している。

 そして、下へと続く道は海へ向かい、その柱だけになった道は、一つの島に繋がっていた。その島は巨大な巣になっており、そこはかつて守護竜がいた場所なのだろう、今は、巨大な骨だけが転がっていた。

 ギルドの資料室で、今までの対戦記録を見ながら、皆で相談した所、まずは、中層の物理系である魔王オーカスに挑み、その後に上層、最後に下層で行こうと言う事となった。

 神殿の参道に行きつくと、僕のスキル<シンクロ>が発動した。解った事は、このダンジョンからのドロップはないようだ。しかし、下層の竜の巣の下に、ダンジョンとは違う、別の何かがあるようなのだが、それにシンクロする事は出来なかった。ただ、最初にシンクロした時に、このダンジョンから流れて来た感情のあまりの凄惨さに、思わず、シンクロを維持する事が出来なくなってしまった。

 とりあえず、僕たちは気合を込めて大聖堂へと足を進めたのだった。大聖堂の奥に鎮座した肉の塊であるオーカスが僕らの気配を察知したのか、ゆっくりと頭を上げた。そして憎しみが籠る目をこちらに向けてきたのだ。そして対峙する。

 するとオーカスは一声叫ぶ。その地獄の叫びを聞いた者は、足がすくみ、怯えて動けなくなるはずなのだが、それの対処は僕のスキル<状態異常回復>だ。それを前もって発動させていた事で即、全員を回復させた。

 オーカスの範囲攻撃が来る前に、俊足でオッサンが動く。片手で大楯を構え、己を防御しながら、オーカスにオッサンの斧スキル<アックスブレイク>で切りかかって行き、攻撃力と防御力を下げた。これで、範囲攻撃を食らっても、一撃で瀕死になる事なく耐えられるはずだ。

 そして、アリシアの狩人スキルである<ハンターの祈り>を発動する。それはパーティ全員の攻撃力と守備力を上げ、またブレス攻撃から守る効果だ。

 オッサンの陰から飛び出したガリオンさんが、短剣で切りかかり、オーカスに毒を付与し、体力を徐々に削って行く。ガリオンさんがスピードで翻弄しながら、オーカスの注意を引いてくれている。

 その隙に僕は、オーカスの魔石の位置を把握する為に、眼を凝らした。僕の手には、孤高の剣が握られている。相手が強者な場合、威力が倍化する剣だ。本当なら、僕の力でオーカスに傷一つ負わせられないはずなのだが、バフとデバフの効果も加算され、充分な威力を発揮している。

 鑑定が詳細になった事もあり、察知スキルも総動員し、オーカスの魔石の位置を探る。

「あった!」思わず叫んでしまった。

 見えたのだ、脂肪と肉に守られた中心部に、何かに遮られた僅かな灯が。僕はその位置をアリシアとネコ先生に伝え指し示す。ネコ先生の最大の火魔法とアリシアの雷を纏った矢、二人の全力の一撃がその一点に集中して突き刺さり穴を開けたのだ。

 その一瞬を見逃さず、僕は全力で飛び掛かる。しかし、オーカスも自分を守ろうとし、衝撃刃を全方位で飛ばして来た。それを僕は右へ左ヘとステップで避けながら、逃げられない刃は剣で弾きオーカスの空いた穴まで突き進んだ。そしてオーカスの魔素だまりに守られた魔石に浄化をかけたのだ。

 そしてオーカスは、苦しげな悲鳴を上げると、ゆっくりと消えていった。
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