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第2章:ダンジョン攻略編(王都ダンジョン)

第38話 お金持ちになりました

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 孤高ダンジョンを消滅させたあと、村へ戻り、もう魔物に怯えることはないだろうと報告すると、とても感謝された。盛大なお祝いが催され、僕が成人だと殊更《ことさら》強調してたら、オッサンにお酒を飲まされそうになって、困ってしまった。

「坊主、今日は祝いじゃ祝い!ホレホレ」っと、お酒を僕の顔に押し付けてくるオッサン。

「坊主じゃなくって、僕は成人なんですって!」

「だったら、飲めるじゃろ!」

「だから、僕の国では、お酒は二十歳からなんですぅ」

「めんどくさい国じゃな。ここは、お前の国じゃないんじゃ、大丈夫、大丈夫。ホレ、ホレ」

 なにが大丈夫だよ。このオッサンの方が面倒なんだよ。ただ、僕に絡みたいだけみたいだろうが。

 そこで、オッサンに何故二十歳未満でお酒を飲むのがダメなのかを、脳の発達とか臓器に悪いとかを、コンコンと説教していると、「面倒くさい奴じゃ!」と、グローブのような手で、アイアン・クローをかけられた。

「ギブギブ!」(いい子はマネしないでね。)

 そんなこんなでオッサンと、ほのぼのとした師弟の会話をしていると、アリシアが、甘いものをクレクレ!してきたので、オッサンが飲んでた酒をかっさらって、簡単に出来るので、お酒で作る、リンゴ風果実のコンポートを作ってみたら、これが意外に美味しくて、村の皆に配ったら、大喜びされた。パイに乗せても美味しいのだ。

「そう言えば、お前さん。怪我してないけど、なんでだ?ポーションも使ってないだろ?」

 って、不思議そうな顔で聞いてきたので、「回復持ちっス!」って元気に答えてみた。

「それ早く言え!」って再び、アイアンクローされた。(絶対に、いい子はマネしないでね。痛いし、顔が変形するって。)

 この村が魔物に襲われた後、『青天の翼』の人たちでターラントのギルドに連絡を入れてくれたようだ。そこで、村の復興の為に領主が人員を送ってくれたのだとか。ほぼ、復興も終わったという事で、明日、皆でターラントに帰る事になった。

 それで、最後の宴は盛大なものになって、村中が歌い踊り、夜通し飲んで騒いでいた。

 僕は、そんな光景を見ながら、今までの自分の生き方を思ったんだ。日本では、なるべく人との関わりは持たず、周りの目が怖くて、いつも下を向いてた。心を傷つけられるのが、傷つくのが怖かったから。

 だけど、ここでは、そんな事言ってられない。この世界を生き抜くために、顔を上げて、前を向いて行かなきゃって思うんだ。


 ◇◇◇


 村を出てから、ターラントへは何事もなく、無事、到着する事が出来た。キルドに報告し、報酬を貰ったのだ。野盗の件でも、奴らに掛かっていた懸賞金があって、その分け前も貰ったから、結構なお金になったらしい。

 僕の取り分はと言うと、ダンジョン攻略依頼で、金貨30枚、野盗懸賞金は、14人で分けるから、一人金貨35枚、オルロープ商会のエラルドさんからの礼金で、金貨30枚。その上、ダンジョンでの収穫での分け前が金貨25枚。領主から村を守ってもらったと、金貨10枚。合計、金貨130枚。日本円で言ったら、金貨1枚が10万円位だから、

「ええええ!1,300万円!!!!」

 日本で一日の稼ぎが、1~2万ほどだった事を考えると、雲泥の差だ。それにだ、ここは物価も安いときた。

「もう働かなくても、悠々自適できんじゃねぇ?」
 今日から遊んで暮らせるって、小躍りしてたら、アリシアに腹パンされた。ぐへ、、、

 ギルドが銀行の変わりをしてくれてるようだ。この国の中だったら、ギルドカードでの出し入れが出来るようなので、一安心だ。

 少し身体を休めるために、次の依頼までこの街でのんびりしろってことなので、ベッドでゴロゴロと言うのも何なので、街へ一人出かける事にした。アリシアは。ランディさんとデートだそうだ。リア充爆発しろ!

「一人で出かけるのはいいけど、スリには気をつけなさいよ」ってアリシアに注意されたが、僕は収納持ちなので、大丈夫なんですよーだ。

 街は相変わらず、色とりどりで、活気があって、見ているだけで楽しい。お店や出店が立ち並び、大勢の人が往来を行き来している。掘り出し物はないかと、鑑定しながら散策してたら、美味しい匂いに釣られて、肉串を2本買ってしまった。

「異世界での肉串は、あるあるっしょ。」という事で、この肉を食べられるとこを探してウロウロする。

 お約束だと、ここでスリに遭遇し、そのボク少女と仲良くなっての、うふふハーレムへと直行って事にならないかなぁ。ってことを考えながら、場所を探していたら、少し開けた場所にベンチを見つけた。

「おお、いいところがあった。」

 噴水がある公園風の所にいくつかのベンチが置いてあり、そこに一か所空いている所を見つけて、座る事にした。下を向いて眠ってそうな子供に、「ここ空いてる?」って聞いてみると、その子は顔を上げたのだった。

「あれ?」

「にゃ?」

 どっかで見た事があると思ったら、その子は、ネコの耳を持つ、ネコ獣人の先生だったのだ。

「あ、こんにちわ。お久しぶりです。あの時以来ですね。傷はもう大丈夫ですか?」

 僕がそう聞くと、ネコ先生は、僕の持ってる肉串を見て、グーーー!という盛大な音を立てたのだ。そこで、

「食べます?」

 と言いながら、その1本をネコ先生の前に差し出すと、引っ掴むやいなや、すごい勢いで、かぶり付いた。相当、お腹が空いてたようだ。

 ネコ先生は、結局、肉串を2本食べた後、涙ながらに僕に言ったのだ。生徒をさらわれた事で、責任を取らされ、学校をクビになったのだとか。無一文になってしまい、露頭に迷っている所に僕と遭遇したとのこと。

「先生も、大変ですね」
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