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第1章:異世界転移編
第9話 森の案内人
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小屋まで戻ってくると、肉が焼けたいい匂いがする。それにアリシアは気が付いたようだ。
「何か、いい匂いがするのだが?」
ハーブソルトが利いた、焼けた野ウサギの肉の、スパイシーで美味しそうな匂いが漂ってくる。
「アリシアは、肉は食べますか?」
「肉か?肉は結構好きだが。だが、肉にしては、刺激的な匂いがするが、何の肉なのだ?」
「えっとウサギです。ハーブが利いているので口に合うかは解りませんが、食べられますか?」
「喜んで。いいのか?しかし、ウサギとは中々珍しいな。魔素が充満するようになってから、弱い小動物達は、ダンジョンの近くから逃げ出したからな。迷ってきたのかもしれないな。それにしても肉とは久しぶりだ。」
さっき作った、キノコと野ウサギの香草焼きと、野菜たっぷりコンソメスープをテーブルへ出した。
「ちょっと待っててくれ。」
そう言うと、アリシアは小屋に入って行き、中からバスケットに入ったパンとチーズを持って来てくれた。
そして、それをテーブルに乗せると、悪いと言いながら、僕が作った料理を鑑定したようだ。やはり、会ったばかりの人間が作ったものだ、それは仕方ない。鑑定し終わると、とても嬉しそうに、席に着いた。
「レンも、一緒に食べないか?一応、鑑定が出来るなら、こっちも鑑定をしておけ。しかし、誰かとの食事は久々だ。」
お言葉に甘え、鑑定させてもらった。
パンは固めのライ麦パンで、チーズは、グリュイエールに似ていてトロリと焼いてライ麦パンに乗せて食べれば、最高に美味しかった。ヨーデルを聞きながら、大きなブランコに乗ってる気がした。同じようにして、香草焼きを乗せて食べても言うことない。また、コンソメスープに付けて食べれば、柔らかくなり、スープの味がしみてこっちも申し分なかった。
僕の作った料理を口にすると、驚いた顔をして、僕にすり寄ってきた。
「おい、これはなんだ、これはハーブなのか?変わった味だが、とてもスパイシーで美味しいじゃないか!胡椒も利いているとは、香辛料なんて貴重な物なんだぞ。こんなに使って大丈夫なのか?」
本当に美味しそうに勢いよく食べてくれた。作った物を美味しい美味しいと食べてくれるのが料理する者にとって、一番嬉しいことなのだ。
僕は一人暮らしなので、ずっと一人飯だ。たまにダンジョンで作る料理は、高位シーカー達は、偉そうな態度で、当たり前のように食う姿を見るだけだったから、アリシアのように、本当に幸せそうに食べてくれる姿をみて、美味しいは正義なのだと真摯に思った。
二人で、食事を堪能しながら、色々と話した。僕が日本の事を話し、アリシアからはこの国の事を教えてもらった。また、この森が、以前はどんなに美しかったかと言う事も、嬉しそうに話してくれた。
僕は、そのお返しに、スマホに入ってる日本の景色とか、両親や二人が飼ってる犬の写真を見せた。アリシアは、色んな写真を見て感嘆しているが、スカイツリーから見た東京の夜景に驚いて眼を回した。
折角なので、スマホに入ってる日本の音楽も聴いてもらったが、軽快なポップや、哀愁漂う静かな曲は、とてもいい曲だと長い耳を傾け喜んでくれたが、しかし、ロックには、驚いてまたまた眼を回した。
それから、ゲームをしてもらったら、音ゲーに夢中になってしまい、ハマったようで、なかなか返してもらえなかった。エルフの動体視力恐るべし。
スマホの充電器は、ソーラーパネルでも蓄電出来るものを使用している。この世界でも使える事は確認しているので、気兼ねなく使えるのだ。
アリシアから聞いた話、この森の見回り以外に、たまにやって来る冒険者達に、寝泊りする小屋を貸したり、この森とダンジョンの案内役もしているそうだ。僕はそれを聞いて、山小屋の管理者及びレスキュー隊のような存在なんだなと思った。
ここから西に馬車で二日ほど行った所に、ターラントという名のそこそこ大きな街があり、その街の冒険者ギルドのマスターが、アリシアの知り合いで、身元のはっきりした信用のおける冒険者をこの森に派遣してくるらしい。その時に、一緒に食料やら日用品を持って来てくれるのだそうだ。
彼らは、このダンジョンで魔物の魔石やドロップした素材を求めてやってくるパーティーで、この森やダンジョンは、高品質な装備やアイテムを落としてくれるのだとか。
ただ、かなりの高難易度な為、高位の冒険者でないと攻略は無理なのだとか。
ここより先、精霊樹までの道は、魔素量がとても多く、かなり狂暴な魔物や魔獣が多くいるのだ。ゴブリンやオーク、オーガの集落もあり、キングも存在している。また、サイクロプスやトロール、ドラゴン級の魔物も生息している。かなり危険な森なのだということ。
ただ、ダンジョンは消滅し、ダンジョンから供給されていた魔素も、徐々に減っていくだろう。そうなると、魔物はこの森に存在出来なくなる。特に、多くの魔素が必要な巨大な魔物から弱体していくはずだと。
アリシアは、精霊樹を復活させるため、色んな人たちの力が必要になってくる。そのために、この森を出て、ターランドへ向かおうと思っている事を僕に告げた。
「どうだ?良かったら、ターラントへ一緒に行かないか?あそこのギルドマスターは信用がおける。きっと君の助けになってくれると思うぞ。」
「私も、この森の恩人であるレンが、自分の世界に帰られるよう、何とか助力したいんだ。」
アリシアは、僕の方を向いて、きっと、この国のダンジョンのどこかに、君の国と繋がっている場所があるはずだと、そう言ってくれた。
「何か、いい匂いがするのだが?」
ハーブソルトが利いた、焼けた野ウサギの肉の、スパイシーで美味しそうな匂いが漂ってくる。
「アリシアは、肉は食べますか?」
「肉か?肉は結構好きだが。だが、肉にしては、刺激的な匂いがするが、何の肉なのだ?」
「えっとウサギです。ハーブが利いているので口に合うかは解りませんが、食べられますか?」
「喜んで。いいのか?しかし、ウサギとは中々珍しいな。魔素が充満するようになってから、弱い小動物達は、ダンジョンの近くから逃げ出したからな。迷ってきたのかもしれないな。それにしても肉とは久しぶりだ。」
さっき作った、キノコと野ウサギの香草焼きと、野菜たっぷりコンソメスープをテーブルへ出した。
「ちょっと待っててくれ。」
そう言うと、アリシアは小屋に入って行き、中からバスケットに入ったパンとチーズを持って来てくれた。
そして、それをテーブルに乗せると、悪いと言いながら、僕が作った料理を鑑定したようだ。やはり、会ったばかりの人間が作ったものだ、それは仕方ない。鑑定し終わると、とても嬉しそうに、席に着いた。
「レンも、一緒に食べないか?一応、鑑定が出来るなら、こっちも鑑定をしておけ。しかし、誰かとの食事は久々だ。」
お言葉に甘え、鑑定させてもらった。
パンは固めのライ麦パンで、チーズは、グリュイエールに似ていてトロリと焼いてライ麦パンに乗せて食べれば、最高に美味しかった。ヨーデルを聞きながら、大きなブランコに乗ってる気がした。同じようにして、香草焼きを乗せて食べても言うことない。また、コンソメスープに付けて食べれば、柔らかくなり、スープの味がしみてこっちも申し分なかった。
僕の作った料理を口にすると、驚いた顔をして、僕にすり寄ってきた。
「おい、これはなんだ、これはハーブなのか?変わった味だが、とてもスパイシーで美味しいじゃないか!胡椒も利いているとは、香辛料なんて貴重な物なんだぞ。こんなに使って大丈夫なのか?」
本当に美味しそうに勢いよく食べてくれた。作った物を美味しい美味しいと食べてくれるのが料理する者にとって、一番嬉しいことなのだ。
僕は一人暮らしなので、ずっと一人飯だ。たまにダンジョンで作る料理は、高位シーカー達は、偉そうな態度で、当たり前のように食う姿を見るだけだったから、アリシアのように、本当に幸せそうに食べてくれる姿をみて、美味しいは正義なのだと真摯に思った。
二人で、食事を堪能しながら、色々と話した。僕が日本の事を話し、アリシアからはこの国の事を教えてもらった。また、この森が、以前はどんなに美しかったかと言う事も、嬉しそうに話してくれた。
僕は、そのお返しに、スマホに入ってる日本の景色とか、両親や二人が飼ってる犬の写真を見せた。アリシアは、色んな写真を見て感嘆しているが、スカイツリーから見た東京の夜景に驚いて眼を回した。
折角なので、スマホに入ってる日本の音楽も聴いてもらったが、軽快なポップや、哀愁漂う静かな曲は、とてもいい曲だと長い耳を傾け喜んでくれたが、しかし、ロックには、驚いてまたまた眼を回した。
それから、ゲームをしてもらったら、音ゲーに夢中になってしまい、ハマったようで、なかなか返してもらえなかった。エルフの動体視力恐るべし。
スマホの充電器は、ソーラーパネルでも蓄電出来るものを使用している。この世界でも使える事は確認しているので、気兼ねなく使えるのだ。
アリシアから聞いた話、この森の見回り以外に、たまにやって来る冒険者達に、寝泊りする小屋を貸したり、この森とダンジョンの案内役もしているそうだ。僕はそれを聞いて、山小屋の管理者及びレスキュー隊のような存在なんだなと思った。
ここから西に馬車で二日ほど行った所に、ターラントという名のそこそこ大きな街があり、その街の冒険者ギルドのマスターが、アリシアの知り合いで、身元のはっきりした信用のおける冒険者をこの森に派遣してくるらしい。その時に、一緒に食料やら日用品を持って来てくれるのだそうだ。
彼らは、このダンジョンで魔物の魔石やドロップした素材を求めてやってくるパーティーで、この森やダンジョンは、高品質な装備やアイテムを落としてくれるのだとか。
ただ、かなりの高難易度な為、高位の冒険者でないと攻略は無理なのだとか。
ここより先、精霊樹までの道は、魔素量がとても多く、かなり狂暴な魔物や魔獣が多くいるのだ。ゴブリンやオーク、オーガの集落もあり、キングも存在している。また、サイクロプスやトロール、ドラゴン級の魔物も生息している。かなり危険な森なのだということ。
ただ、ダンジョンは消滅し、ダンジョンから供給されていた魔素も、徐々に減っていくだろう。そうなると、魔物はこの森に存在出来なくなる。特に、多くの魔素が必要な巨大な魔物から弱体していくはずだと。
アリシアは、精霊樹を復活させるため、色んな人たちの力が必要になってくる。そのために、この森を出て、ターランドへ向かおうと思っている事を僕に告げた。
「どうだ?良かったら、ターラントへ一緒に行かないか?あそこのギルドマスターは信用がおける。きっと君の助けになってくれると思うぞ。」
「私も、この森の恩人であるレンが、自分の世界に帰られるよう、何とか助力したいんだ。」
アリシアは、僕の方を向いて、きっと、この国のダンジョンのどこかに、君の国と繋がっている場所があるはずだと、そう言ってくれた。
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