フェアリーゲート

護國鬼

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第7章 再びの異世界

襲撃3

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 まだ、夜も明けきらない森の中を複数の影が疾走する

 「魔物の群れを避けて後方に回り込むのは良いが、群

れから離れすぎるなよ。遠回りになる。」

 「あら?じゃあ貴方が先導する?」

 ウトレアの注意にカラリアがトゲのある返事を返す。

 「無駄口は避けましょう。何処に魔物の斥候が居るか

分からないわ。」 

 ミラが2人を仲裁する。

 彼らは既に30分以上森の中を駆けていた。その間に

斥候と見られるゴブリンを10匹程静かに始末してい

た。

 その中には勿論言い出しっぺの柊のフルプレートメイ

ルの姿もあった。

 族長直々の精霊魔法のサイレスで鎧兜の音が出ないよ

うにして貰えたのだ。

 走りながら横目に見ると、脇目も振らず里を目指して

行進する魔物達の姿が見てとれた。目測で、およそ1万

それだけの数が守る者が500にも満たない里へ向かっ

ている。別動隊は他にも居るが、彼らの使命は重要であ

り、時間は有限だった。

 最後の会話から10分も駆けた頃だろうか、不意にウ

トレアが声を出す。

 「待て!人族が居る。」

 散開し、森の中に出来た小さな広場を囲むようにして

静止すると、広場の真ん中に魔方陣が描かれ、ローブを

頭からすっぽりと被った男達が円形を組み、呪文のよう

なものを唱えていた。

 周囲には、交代要員だろうか、ローブの男達と鎧兜で

武装してる男達が居た。

 「どうやら、当たりみたい。」

 ミラが男達の数を数えながら、言った。

 「分からない。自分の国ではリスクを避ける為に同じ

ものを分散して用意する事がある。」

 柊が慎重論を述べると、男達に動きがあった。

 一際立派な鎧兜の男が号令をかけるとローブの男達が

交代したのだ。

 「捕虜にするのは、あいつとローブ姿1人ずつで良い

かしら?」

 ミラが提案する。

 「それで行こう。金ぴかは俺が、ローブ姿はミラが捕

らえてくれ、魔法の反撃に注意すること、行くぞ!!」

 柊が作戦案を出して実行に移す。数は多少相手の方が

多かったが、化け物じみたステ一タスの柊と森の中のエ

ルフの敵では無かった。

 柊が鎧兜を数人切り捨てると、まさか自分達が襲われ

ると思っていなかったのか簡単にパニックに陥り捕虜を

残して全滅した。

 「コイツ、ラフレシア王国の貴族だ。」

 ウトレアが金ぴかの男を指差して言う。

 「分かるのか?」

 柊が尋ねると、

 「ああ、家紋にデカイ花の刻印、ラフレシア王国の貴

族の家紋は皆、花なんだ。」

 「キ、貴様ら、この私にこのようなことをしてただで

済むと思っているのか?!」

 金ぴかの男がそう、叫ぶ。

 「では、そのお偉いラフレシア王国の貴族様が、不可

侵領域の中で団体さまで何をしてらしたんでしょう?」

 柊が嫌味を込めて、そう、言い放つ。

 「ミラ、魔法使いの方は・・・。」

 柊が、ローブ姿の方を見るとロープでぐるぐる巻きに

された男の口が動いている。口をふさいでない?!

 「ウゴ一!!」

 広場に2頭のトロ一ルが入ってきた、明らかに偶然で

は無い。ローブ姿の男が呼び寄せたのだ。

 「最後の悪あがきを~!!」

 柊がハルバ一トで、1頭の首を切り飛ばすと、もう1

頭はミラ達の方に向かっていた。ローブ姿を抱えて逃げ

る気か。

 「させるかよ!!」

 ミラ達は弓を放ち続けるが、トロ一ルの厚い脂肪と皮

膚には相性が悪い。ハルバ一トを構え直すと柊はトロ一

ルの心臓目掛けて投げ放った。

 ハルバ一トの先の槍の部位が上手くトロ一ルの心臓に

突き刺さり、トロ一ルは地響きを立てて倒れ伏した。

 「早く魔法使いの口をふさげ!」

 今度はカラリアが布切れを使いローブ姿の口をふさ

ぐ。

 柊は金ぴか貴族のところに戻ると、

 「もうこんな場所は無いんだな?」

 っと念押しした。

 「ある訳が無かろう、我が国の魔法使いをこんなに殺

してただで済むと思うなよ!!」

 懲りて無い様子の金ぴか貴族にあきれつつ、証拠にな

りそうな物を集めると、里への帰還を開始した。戻る途

中、何か思い出したかのように、あちらこちらへとバラ

バラに逃げる魔物と度々遭遇し、討伐に余計な時間がか

かり、里に到着したのは昼過ぎになった。里でも、戦闘

は行われていたが、急に魔物達の統制が乱れ逃げ出した

為に深刻な被害は出なかったようだ。

 柊達は数々の証拠と捕虜を族長に引き渡すと倒れる様

に眠りについた。



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