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最終章
最終話【本編完結】
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リディアの陣痛が夜半に始まり、レオナルドは慌ててトラフィスを妖精宮に呼びつけた。
「リディ、大丈夫か?苦しいのだな………」
「レニー、だ、大丈夫。少しお水が飲みたい」
「み、水か!」
まだ陣痛が始まったばかりだというのにオロオロする王太子に侍女リールーが吸い飲みを手渡す。リディアに気遣い乍ら水を飲ませるレオナルド。
時折襲ってくる陣痛の間隔が、少しずつ短くなっていくのをトラフィスは時計を見ながら確認していた。
「トラフィス、何時産まれるのだ!リディアはこんなに辛そうなのに大丈夫なのか!」
「レオ殿、少し落ち着きなされ。奥方様は大丈夫でございますよ。
今は未だ潮が引いております、満潮の時刻になれば無事に産まれます」
「そうなのか、潮の満ち引きに関係しておるのか?」
「はい、自然の摂理にございます」
「そ、そうか………しかし、満潮まで……おい、誰か!満潮は何時だ?」
「ですから、レオ殿落ち着いて大きな声を出さないで下さい。大人しく奥方様の手を握っているか、騒ぐようでしたら外に放り出しますぞ」
「あっ、いや分かった」
陣痛の合間、リディアは額に薄っすら汗を滲ませながら、二人の会話を聞いて思わず吹き出してしまう。
「レニー、自分から立ち会うと言い出したのだから大人しく見守っていてくださいね」
「悪かった……」
レオナルドはリディアの傍らに置いた椅子に腰を下ろし、ほっそりとした指先に口づけを落とす。
と、同時にまた陣痛がリディアを襲い、その度に彼女の腰を大きな手で摩りながら、声を掛けエールを送る。
「あまり痛みが酷いようなら魔力で和らげるか?」
リディの歪める顔を見てレオナルドが麻酔効果のある魔力を流そうかと提案するがリディアは、
「ううん。お母様たちもこの痛みに耐えて私たちを産んでくれたんだもの。私も頑張る」
「リディ……」
レオナルドは弱いと思っていた人族である番が、母になるという使命でこれ程強くなれるのかと驚いていた。
数時間が過ぎ、いよいよという時が迫って来た。
「ひっ、ひっ、ふぅー。いっ、痛い……」
「奥方様、体の力を抜いて」
「リディア様、頑張って下さい!」
子宮口が開き、赤ん坊の頭が見え隠れする。
リディアは外の世界に出ようとする新しい命の為に必死に頑張っていた。
レオナルドの手を握る彼女の手に力が籠る。
そして潮が満ちるように大きな陣痛の波がリディアに押し寄せて来た。
「リディ、頑張れ、もう少しだ」
「はい、そこでいきんで!まだもう少し、そうです、リディア殿。そのまま……」
小さな赤ん坊の頭がくるりと回りながらリディアの体からずるりと出て来た。
「はぁ――――――」
最後のいきみで力を使い果たしたリディアが大きく息を吐く。
「おめでとうございます。王女様でございますよ」
「女の子」
「リディよく頑張ってくれた。ありがとう、愛している」
小さな背中を叩かれ元気な産声をあげる。
我が子の声を聞き、目尻から流れる生理的な涙が大事を成し遂げた安堵の涙へと変わる。
部屋の外からも待機していた両陛下とお付きの者、ミルミルの上げる感嘆の声が聞こえて来た。
その間に臍の緒は切り離され、血で汚れた胎児の体が布で綺麗に拭われていった。
――王女……王子ではなかった。けれど、二人の間に黒竜の鱗を持つ子が出来ないのなら王女で幸せだわ。
無事に産まれて来てくれてありがとう。
精霊様、感謝いたします。
汗でびっしょりになっていたリディアは、レオナルドに拭ってもらいながら精霊に感謝していたのだった。
「こ、これは……」
竜人助産婦がトラフィスの顔を見ながら、綺麗になった赤子をタオルに包み見せた。
「何と、信じられん……」
無事に出産を終え安心していた二人は、動揺するトラフィスの声を背で聞いて赤子に何かあったのかと不安を覚える。
「先生、「トラフィス?」」
「殿下、鱗が……」
「鱗がどうしたというのだ?」
レオナルドは不安に目を潤ませるリディアの額に口づけ、心配するなと席を立ち赤ん坊のところへと向かった。
「…………」
レオナルドは自分の子の姿を見て息を呑む。
産まれて産声を上げたばかりの我が子は全身を鱗で覆われていたのだった。
しかも、皮膚と同じくらい柔らかいその鱗は真っ白に光り輝いていた。
「雌の神竜……だと言うのか」
まだ薄い髪は白銀である。
まだ開かぬ目の瞳の色は分からないが、神々しく光る全身の鱗は神竜の化身であることに間違いはなかった。
赤子はふかふかのタオルに包まれ、リディアの元に届けられた。
「まぁ、鱗が……真っ白で……なんて可愛いの!」
「リディ、この娘は私と同じ神竜の化身だ」
「えっ、女の子なのに?黒竜の鱗ではないわ」
「ああ、それでも間違いない」
「レニー……」
リディアは産まれたばかりの娘を優しく抱きしめ頬を撫でる。
「これはきっと、精霊殿の秘薬を飲まれた愛し子であるリディア殿の血と神竜の化身であるレオ殿の血が一つになったからでございましょう」
「まあ、信じられないけど、嬉しいわ」
リディアは小さな手を取り自分の指を握らせる。
そこへ部屋へ招き入れられた両陛下が入って来た。
「リディア、大儀であったな」
「お疲れ様、よく頑張ったわ。ありがとうリディちゃん」
「お義父様、お義母様」
「女の子ですって、早くお顔を見せて頂戴な」
二人はリディアの胸に抱かれた赤子の顔を覗きこみ絶句する。
「レニー、この子は!」
「はい、私と同じく全身を鱗で覆われて産まれて参りました」
「信じられん。女子で神竜の化身とは前代未聞であるぞ」
「はい」
前例がない王女が化身として産まれて来たことに驚きが隠せない竜王ダグラス。
「そんなことどうでも良いじゃない!こんな可愛い孫を産んでくれたのだから。ねっ、リディちゃん?」
そんな二人をよそに王妃がリディアにねぎらいの言葉をかけた。
「ありがとうございます。お義母さま」
「ん、そうであるな。どれ儂に抱かせてもらえるかな」
「はい、お義父様」
二メートルを超える竜王の手に抱かれるにはあまりに小さすぎる赤子だが、当人はスヤスヤと眠ったままである。
次に王妃アメリアの腕に抱かれると少し口元を動かした。
「可愛いわねー、貴女はどんな名前が付くのでしょうね」
「父上と母上が付けくてくれるのでは?」
「あら、あなた達の子供よ。二人で相談してつけるべきよ」
そう言いながら、はいとレオナルドの腕に赤子託すと、安心したように体を伸ばし欠伸をした。
「欠伸……か?」
レオナルドは不思議な気持ちで腕の中の我が娘を見ていた。
「リディ、この子の名はミューズ、どうだろうか?」
「ミューズですか……可愛い名前」
リディアの腕に戻された娘の顔を見ながら母となったリディアが微笑む。
「あなたの名前はミューズよ。よろしくね、愛しい私のミューズ」
「さぁ、皆様方。リディア様もお疲れですので、休ませて差し上げて下さい」
トラフィスの一声でレオナルド以外の全員が退出していった。
「可愛いわね」
「ああ、私達の宝物だ」
「ええ」
「リディ、改めて言う。ありがとう」
「レニー、私もお礼が言いたいわ。ミューズを授けてくれてありがとう」
二人の娘ミューズは真っ白な鱗を持つ神竜の化身であると認められた。
初代神竜は女神と結ばれ化身となる子が数百年おきに生まれて来た。
化身とされるレオナルドは人であるリディアを番とし、結ばれる。
その番であるリディアは水と光の精霊によって作られた秘薬(精血)によって、化身の子を宿すことが出来た。
秘薬を飲み続けていたリディアは愛し子から、より精霊に近い存在、身体となっていたのだった。
その二人から生まれた子は紛れもない神竜の化身なのだ。
二人の間に王女であるが化身が授かった事により、弟であるサミュエルは跡継ぎのための側妃を迎えずに済み喜ぶ。
ミューズが一歳になる頃には鱗は全て肌に吸収された。透き通るような肌、髪は白銀のまま瞳はレオナルドの紫とリディアの薄いブルーを受け継ぐオッドアイだった。
その愛くるしさはリディアの幼女の頃と見間違うほどで、皆に愛される王女となっていく。
妖精宮の庭にある池では妖精のロロとララが良い遊び相手となってくれた。
その後ふたりの間には残念ながら子供が出来ることは無かった。
そして年に一度成長していく第二の妖精姫と呼ばれた愛娘ミューズと、女神のように美しさを保つ愛妻リディアを背に乗せた黒竜レオナルドが大空を駆け、竜の山とリディアの母国へ飛ぶ姿が見られるようになる。
美しく成長したミューズ王女は黒竜の番を見つけ婚姻を結んだ。
そして二人の間には黒竜の王子が二人生まれる。
竜王となっていたレオナルドは孫王子が成人を迎えると、王の座を娘のミューズに譲り表舞台から降りた。
竜王国サザーランドにおいて初の女王の誕生であった。
レオナルドとリディアはかつて神竜の化身であった祖父母、セルジオとレニアーテルと同じく、人々に見送られながらそのまま竜の山へと向かい飛んで行った。
レオナルド七十才、リディア六十一歳。
二人の人生はまだ二百年近くある。
竜の山で野生竜とのんびり過ごし、時にはレオナルドの背に乗り世界中を旅してまわり余生を満喫していた。
百を超えても見目変わらぬ美しい二人は、その生涯を終えるまで共にした。
これ以降竜人族や獣人族と人族の間にも番を見つけ一緒になる事も増える。
だが、後世の神竜の化身が人族に番を見出すことは無かった。
美し過ぎる神竜の化身黒竜レオナルドと精霊の愛し子であり、妖精の魔法に掛けられ幼女の姿になってしまったオーレア王国末っ子第三王女の話は絵本となり広く語り継がれる事となっていく。
END
**********
※長らくお付き合い下さり感謝したします。
最終章は少し更新に間が空いたり致しましたが、何とか最終話までこぎつけることが出来ました。
ブクマや栞を挟んで下さったみなさま、本当にありがとうございます。
すごく元気付けられ励みにもなりました。
本文は完結ですが、続話が出来ましたらまた更新したいと思っておりますので、まだ完結設定にはいたしません。
更新お知らせが届く来ますようにブクマ、栞をそのままにしていて頂けると嬉しいです。
次作も書き始めているのですが、転生?転移もの?R15にしようかR18にしようかまだ悩んでいる際中であります。
またお目に留まりましたら宜しくお願い致します。
ありがとうございました*遥*
「リディ、大丈夫か?苦しいのだな………」
「レニー、だ、大丈夫。少しお水が飲みたい」
「み、水か!」
まだ陣痛が始まったばかりだというのにオロオロする王太子に侍女リールーが吸い飲みを手渡す。リディアに気遣い乍ら水を飲ませるレオナルド。
時折襲ってくる陣痛の間隔が、少しずつ短くなっていくのをトラフィスは時計を見ながら確認していた。
「トラフィス、何時産まれるのだ!リディアはこんなに辛そうなのに大丈夫なのか!」
「レオ殿、少し落ち着きなされ。奥方様は大丈夫でございますよ。
今は未だ潮が引いております、満潮の時刻になれば無事に産まれます」
「そうなのか、潮の満ち引きに関係しておるのか?」
「はい、自然の摂理にございます」
「そ、そうか………しかし、満潮まで……おい、誰か!満潮は何時だ?」
「ですから、レオ殿落ち着いて大きな声を出さないで下さい。大人しく奥方様の手を握っているか、騒ぐようでしたら外に放り出しますぞ」
「あっ、いや分かった」
陣痛の合間、リディアは額に薄っすら汗を滲ませながら、二人の会話を聞いて思わず吹き出してしまう。
「レニー、自分から立ち会うと言い出したのだから大人しく見守っていてくださいね」
「悪かった……」
レオナルドはリディアの傍らに置いた椅子に腰を下ろし、ほっそりとした指先に口づけを落とす。
と、同時にまた陣痛がリディアを襲い、その度に彼女の腰を大きな手で摩りながら、声を掛けエールを送る。
「あまり痛みが酷いようなら魔力で和らげるか?」
リディの歪める顔を見てレオナルドが麻酔効果のある魔力を流そうかと提案するがリディアは、
「ううん。お母様たちもこの痛みに耐えて私たちを産んでくれたんだもの。私も頑張る」
「リディ……」
レオナルドは弱いと思っていた人族である番が、母になるという使命でこれ程強くなれるのかと驚いていた。
数時間が過ぎ、いよいよという時が迫って来た。
「ひっ、ひっ、ふぅー。いっ、痛い……」
「奥方様、体の力を抜いて」
「リディア様、頑張って下さい!」
子宮口が開き、赤ん坊の頭が見え隠れする。
リディアは外の世界に出ようとする新しい命の為に必死に頑張っていた。
レオナルドの手を握る彼女の手に力が籠る。
そして潮が満ちるように大きな陣痛の波がリディアに押し寄せて来た。
「リディ、頑張れ、もう少しだ」
「はい、そこでいきんで!まだもう少し、そうです、リディア殿。そのまま……」
小さな赤ん坊の頭がくるりと回りながらリディアの体からずるりと出て来た。
「はぁ――――――」
最後のいきみで力を使い果たしたリディアが大きく息を吐く。
「おめでとうございます。王女様でございますよ」
「女の子」
「リディよく頑張ってくれた。ありがとう、愛している」
小さな背中を叩かれ元気な産声をあげる。
我が子の声を聞き、目尻から流れる生理的な涙が大事を成し遂げた安堵の涙へと変わる。
部屋の外からも待機していた両陛下とお付きの者、ミルミルの上げる感嘆の声が聞こえて来た。
その間に臍の緒は切り離され、血で汚れた胎児の体が布で綺麗に拭われていった。
――王女……王子ではなかった。けれど、二人の間に黒竜の鱗を持つ子が出来ないのなら王女で幸せだわ。
無事に産まれて来てくれてありがとう。
精霊様、感謝いたします。
汗でびっしょりになっていたリディアは、レオナルドに拭ってもらいながら精霊に感謝していたのだった。
「こ、これは……」
竜人助産婦がトラフィスの顔を見ながら、綺麗になった赤子をタオルに包み見せた。
「何と、信じられん……」
無事に出産を終え安心していた二人は、動揺するトラフィスの声を背で聞いて赤子に何かあったのかと不安を覚える。
「先生、「トラフィス?」」
「殿下、鱗が……」
「鱗がどうしたというのだ?」
レオナルドは不安に目を潤ませるリディアの額に口づけ、心配するなと席を立ち赤ん坊のところへと向かった。
「…………」
レオナルドは自分の子の姿を見て息を呑む。
産まれて産声を上げたばかりの我が子は全身を鱗で覆われていたのだった。
しかも、皮膚と同じくらい柔らかいその鱗は真っ白に光り輝いていた。
「雌の神竜……だと言うのか」
まだ薄い髪は白銀である。
まだ開かぬ目の瞳の色は分からないが、神々しく光る全身の鱗は神竜の化身であることに間違いはなかった。
赤子はふかふかのタオルに包まれ、リディアの元に届けられた。
「まぁ、鱗が……真っ白で……なんて可愛いの!」
「リディ、この娘は私と同じ神竜の化身だ」
「えっ、女の子なのに?黒竜の鱗ではないわ」
「ああ、それでも間違いない」
「レニー……」
リディアは産まれたばかりの娘を優しく抱きしめ頬を撫でる。
「これはきっと、精霊殿の秘薬を飲まれた愛し子であるリディア殿の血と神竜の化身であるレオ殿の血が一つになったからでございましょう」
「まあ、信じられないけど、嬉しいわ」
リディアは小さな手を取り自分の指を握らせる。
そこへ部屋へ招き入れられた両陛下が入って来た。
「リディア、大儀であったな」
「お疲れ様、よく頑張ったわ。ありがとうリディちゃん」
「お義父様、お義母様」
「女の子ですって、早くお顔を見せて頂戴な」
二人はリディアの胸に抱かれた赤子の顔を覗きこみ絶句する。
「レニー、この子は!」
「はい、私と同じく全身を鱗で覆われて産まれて参りました」
「信じられん。女子で神竜の化身とは前代未聞であるぞ」
「はい」
前例がない王女が化身として産まれて来たことに驚きが隠せない竜王ダグラス。
「そんなことどうでも良いじゃない!こんな可愛い孫を産んでくれたのだから。ねっ、リディちゃん?」
そんな二人をよそに王妃がリディアにねぎらいの言葉をかけた。
「ありがとうございます。お義母さま」
「ん、そうであるな。どれ儂に抱かせてもらえるかな」
「はい、お義父様」
二メートルを超える竜王の手に抱かれるにはあまりに小さすぎる赤子だが、当人はスヤスヤと眠ったままである。
次に王妃アメリアの腕に抱かれると少し口元を動かした。
「可愛いわねー、貴女はどんな名前が付くのでしょうね」
「父上と母上が付けくてくれるのでは?」
「あら、あなた達の子供よ。二人で相談してつけるべきよ」
そう言いながら、はいとレオナルドの腕に赤子託すと、安心したように体を伸ばし欠伸をした。
「欠伸……か?」
レオナルドは不思議な気持ちで腕の中の我が娘を見ていた。
「リディ、この子の名はミューズ、どうだろうか?」
「ミューズですか……可愛い名前」
リディアの腕に戻された娘の顔を見ながら母となったリディアが微笑む。
「あなたの名前はミューズよ。よろしくね、愛しい私のミューズ」
「さぁ、皆様方。リディア様もお疲れですので、休ませて差し上げて下さい」
トラフィスの一声でレオナルド以外の全員が退出していった。
「可愛いわね」
「ああ、私達の宝物だ」
「ええ」
「リディ、改めて言う。ありがとう」
「レニー、私もお礼が言いたいわ。ミューズを授けてくれてありがとう」
二人の娘ミューズは真っ白な鱗を持つ神竜の化身であると認められた。
初代神竜は女神と結ばれ化身となる子が数百年おきに生まれて来た。
化身とされるレオナルドは人であるリディアを番とし、結ばれる。
その番であるリディアは水と光の精霊によって作られた秘薬(精血)によって、化身の子を宿すことが出来た。
秘薬を飲み続けていたリディアは愛し子から、より精霊に近い存在、身体となっていたのだった。
その二人から生まれた子は紛れもない神竜の化身なのだ。
二人の間に王女であるが化身が授かった事により、弟であるサミュエルは跡継ぎのための側妃を迎えずに済み喜ぶ。
ミューズが一歳になる頃には鱗は全て肌に吸収された。透き通るような肌、髪は白銀のまま瞳はレオナルドの紫とリディアの薄いブルーを受け継ぐオッドアイだった。
その愛くるしさはリディアの幼女の頃と見間違うほどで、皆に愛される王女となっていく。
妖精宮の庭にある池では妖精のロロとララが良い遊び相手となってくれた。
その後ふたりの間には残念ながら子供が出来ることは無かった。
そして年に一度成長していく第二の妖精姫と呼ばれた愛娘ミューズと、女神のように美しさを保つ愛妻リディアを背に乗せた黒竜レオナルドが大空を駆け、竜の山とリディアの母国へ飛ぶ姿が見られるようになる。
美しく成長したミューズ王女は黒竜の番を見つけ婚姻を結んだ。
そして二人の間には黒竜の王子が二人生まれる。
竜王となっていたレオナルドは孫王子が成人を迎えると、王の座を娘のミューズに譲り表舞台から降りた。
竜王国サザーランドにおいて初の女王の誕生であった。
レオナルドとリディアはかつて神竜の化身であった祖父母、セルジオとレニアーテルと同じく、人々に見送られながらそのまま竜の山へと向かい飛んで行った。
レオナルド七十才、リディア六十一歳。
二人の人生はまだ二百年近くある。
竜の山で野生竜とのんびり過ごし、時にはレオナルドの背に乗り世界中を旅してまわり余生を満喫していた。
百を超えても見目変わらぬ美しい二人は、その生涯を終えるまで共にした。
これ以降竜人族や獣人族と人族の間にも番を見つけ一緒になる事も増える。
だが、後世の神竜の化身が人族に番を見出すことは無かった。
美し過ぎる神竜の化身黒竜レオナルドと精霊の愛し子であり、妖精の魔法に掛けられ幼女の姿になってしまったオーレア王国末っ子第三王女の話は絵本となり広く語り継がれる事となっていく。
END
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※長らくお付き合い下さり感謝したします。
最終章は少し更新に間が空いたり致しましたが、何とか最終話までこぎつけることが出来ました。
ブクマや栞を挟んで下さったみなさま、本当にありがとうございます。
すごく元気付けられ励みにもなりました。
本文は完結ですが、続話が出来ましたらまた更新したいと思っておりますので、まだ完結設定にはいたしません。
更新お知らせが届く来ますようにブクマ、栞をそのままにしていて頂けると嬉しいです。
次作も書き始めているのですが、転生?転移もの?R15にしようかR18にしようかまだ悩んでいる際中であります。
またお目に留まりましたら宜しくお願い致します。
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