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第一章末っ子王女の婚姻

9/末っ子王女の決断

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※少し短め。

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 翌日も庭園の中には、レオナルドとリディアの姿があった。

 第三王女リディアは、竜王国の王太子レオナルドの大きな体に抱かれて、花々が咲き誇る庭園の小道を歩いている。
 王女は「おろして!」と叫んでいるが、王太子は一向に応じようとはしない。そのうち王女は諦めたのか、静かになった。
 見れば、王子の片腕に座り、短い腕を王子に首に回して耳元で何かを話している。そんな王女に彼は優しく微笑み、頬に口づけた。

 この様な光景が、竜王国サザーランドから来た使団が帰国するまで、毎日見られたのであった。
 外交の詰めはサミュエル第二王子に任せたままだと云う事は言うまでもない。

 この数日間で、リディアは心を決めていた。
 毎日レオナルドの優しさに触れてきた。お茶の時間にはリディアを膝に乗せ、自国について沢山の話を聞かせてくれた。様々な種族が暮らす国に、人族に対して偏見は無いことも。精霊はいないが妖精がいる事も教えてくれた。
 竜王国はこんな自分を王太子の『番』として温かく迎えてくれるという。
 ならば、自分が番だと言い、優しくしてくれるレオナルドに着いて行こうと。

「お父様、リディアは竜王国サザーランドに参ります」

 レオナルド達が帰国する二日前に、リディアは父王オーレアに伝えた。

「本当に良いのか?」
「はい、レオナルド様のところへ嫁ぎます」
「リディ、ありがとう。決心してくれたんだね」
 レオナルドが嬉しそうにリディアの小さな手を取る。
「はい、私には『番』というものが良く分かりませんが、レニー様の事はお慕いしています。国と国との繫がり、オーレア王国第三王女としてサザーランド王国へ嫁ぎたいと思います」

「リディ……」
「お母様……リールーのお陰でお母様の元へ戻って来れたのに、たった一年しかお傍に居れなくてごめんなさい」

 王妃がリディアを強く抱きしめる。

「ええ、せっかく戻ってくれたのに・・・でも。
 死んだと思って諦めていた子がこうして戻ってくれた。そして、またこの手で抱き締めることが出来たんですもの。他国へ嫁いだからと言って、会えなくなる訳ではないですものね。
 お母様はそれだけで幸せよ。リディを心から愛してくる人が現れたんですもの。幸せになって欲しいの」
「お母様」

「儂には三人の娘がいるが、一番先に嫁がせるのが末の娘と言うのも解せぬ。だが、仕方あるまい。
 レオナルド王太子殿下よ。
 リディアを番と言いながらも泣かせることがあれば、貴殿が大国の王太子であろうと、我がオーレアを加護する精霊と、国王のこの儂が許さんことを心して下され!」

「はっ、竜の魂を持って、お誓いいたします」

 レオナルドは左胸に拳をあててオーレア王に誓った。

「ああ、リディアの事が儂は本当に可愛いのだよ。大事にしてやってくれ」
「はい」 
 オーレア王は彼の肩を抱き、娘の幸せを切に願った。

「リディア、明後日おまえはサザーランドに旅立っていく。今夜は父と母とともに寝てくれるか?」
「お父様……」
「十五の娘ではそうはいかんが、幼い頃の体であれば当時を思い出し、リディアとともに眠りたいのじゃ。父の我儘を聞いてくれるか?」
「はい、喜んで」

 母の腕の中から父の腕の中に飛び込んでいくリディアを抱き上げ、六才児姿の娘と頬をすり合わす国王に、その場にいたすべての人が涙したのだった。


 サザーランドの使団が帰国する日、リディアも一緒に旅立っていった。
 国民には、今まで病に伏せており公の場に出ていなかった第三王女が回復をした。そして、十五才の成人を迎えて、竜王国サザーランド王太子の『番の妃』として嫁いだと伝えられた。




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※末っ子王女6歳児のカラダにて竜王国へお嫁入です!

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