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28いつかは露天風呂に
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メアリーアンから本婚約の話がでたので、私もいい機会だと思い付き合おうと言ってから十日程たった。
ユリカの様子が少しよそよそしくなったように思う。
私の気持ちはもうとうに決まっており、次の夜会では婚約者としてユリカをエスコートするつもりでいる。
周り者たちもそのつもりで動いている。
キャステルには早く求婚しろと言われているのだが、ユリカの前世の話を聞くと今は婚約迄持っていければ十分だ。いきなり求婚は有り得ないと思い、恋人同士のお付き合いというものをしてみようと思った。
しかし、どうすればよいのか?
「城外へデートに誘われては如何ですか?」
「いや、今の時期それは難しいだろう」
「では宮中内でお散歩されるとか」
「散歩か」
「普通にお茶をされるとか」
「普通に……」
「お花を贈られるのも良いかもしれません。思いを寄せる方に花を贈られるのは普通でございますよ」
「花は……そうか、贈った事はなかったな」
それから私はユリカの部屋に王宮の庭園で、その朝に咲いた花を届けるように命じた。
執務の間に彼女の部屋を訪ね、お茶をするようにもした。
ユリカはそんな私の行動に戸惑いを見せていたが、庭に誘うと少し照れながらも一緒に散歩に出てくれた。
侍女であるメアリーアンとクロ―ディアからそれとなく、ユリカの言っていたお付き合いがどういうものかを聞き出して貰った。
どうやらデートでは手を繋いだり肩を抱いて街中を歩いたりするらしい。
手を繋ぐ?子供でもあるまいしと思う。
普通は肘を軽く曲げればそこに女性が軽く手を添える物だ。
肩を抱く?
背中や腰に手を添えエスコートするものだろう。
違うのか?
するとエスコートは貴族として女性に対応するもので、それとはまた別の特別な女性にする行為だと彼女たちは言う。
そして恋人繋ぎという繋ぎ方を教わる。
私はそれを実行すべくユリカを中庭へと散歩に誘った。
肘ではなく手を差し伸べると、彼女は自然とその手に自分のを重ねて来た。
その手を私はしっかりと握り二人の体の間に下ろす。
「えっ?」
と、彼女は驚き手を離そうとしたが、そのまま私は歩き始めた。
チラリと横目でユリカ顔を伺うと、頬を染めているようだが暫くするとやさしく握り返してきた。
恥じらう姿がなんとも初々しく思え、嬉しくなった。
私は繋いだままの手から伝わって来る熱に人の手の温もりというものはこんなに心地良いものだったのかと初めて気づいた。
しかし、教わった恋人繋ぎというものをする余裕までなかったのは、私にも羞恥心的なものがあったからだと思う。
婚約発表を終えた際には、城下へ出て手を繋ぎながら散策するのも良いかもしれないと密かに考えた。
その時には指を絡める恋人繋ぎというものをしてみたいものだ。
そうして少しずつ彼女のとの距離を縮めていった。
自分から女性にアプローチをしたことが無かった私が、相手の気持ちを自分に向けようといろいろと模索している姿など誰が想像できたであろうか。
しかし、それもまた何か嬉しくも思ってしまう自分がいる。
不思議と周りの者達の生暖かい目も次第に気にならなくなってきた。
だが、ユリカはと言えば。
「ユリカ、これからはなるべく晩餐は共にしよう」
と言えば、
「そんな、忙しいのに無理しなくていいよ」
そんなそっけない返事が返って来る。
もっと自分の方に関心を持って持って貰いたい。
私は彼女の気を惹きたくてしょうがない衝動に駆られしまう。
少し時間が出来たので、久しぶりにキャンちゃんに行こうという事になった。
キャンちゃんに行く時には護衛を付けず、二人で馬で行く。
彼女には比較的大人しめの白馬を選んでみたが、どうやら相性も良いようでそつなく乗りこなしている。
これなら遠乘も行けそうだ。
「陛下は何を飲む?」
「そうだな、先日飲んだアイスコーヒーを貰おうか」
「えっ、もう冬なのに冷たいもので良いの?」
「ああ、この中は暖かいからな」
キャンちゃんの中は快適だった。
テレビという映像装置で映画というものを観る。
画面に出て来る文字は全く分からなかったが、発している言葉は不思議と理解できた。
映し出される画面の中の風景は全く別の世界で、大きな翼を持った乗り物で空を飛び、四角い乗り物で大勢の人々が移動している。
彼らの日常生活が、魔石を使わずとも快適で便利な生活を営めいていることが信じられない。
ユリカはこちらの世界が摩訶不思議というが、その言葉をそっくり返したい。
映画の中にラブシーンと呼ばれるものがあり、普通に口づけを交わし、睦み合うシーンを観て私は動揺してしまった。
この世界にも読み物として恋愛小説的な物や、色物の本も出回っており、挿絵もついていたりする。
閨教育でも図解したのがあるのだが……
映像には確かにそのものは映っていないが、流石に色付きで男女の行為が動いている画像を万人に普通に観られているとは思わかった。
やはり我々の世界とは違い過ぎると実感した。
男女の入浴シーンを平然と見ているユリカ。
隣でそわそわしていることに気付かれないように努めていた私に、彼女は気付いた様子もなく安堵したのだった。
自然とキャンの横にある露天風呂に意識がいく。
いつか二人であの風呂に入りたいものだと思ったのは言うまでもない。
その為にも…………
ユリカの様子が少しよそよそしくなったように思う。
私の気持ちはもうとうに決まっており、次の夜会では婚約者としてユリカをエスコートするつもりでいる。
周り者たちもそのつもりで動いている。
キャステルには早く求婚しろと言われているのだが、ユリカの前世の話を聞くと今は婚約迄持っていければ十分だ。いきなり求婚は有り得ないと思い、恋人同士のお付き合いというものをしてみようと思った。
しかし、どうすればよいのか?
「城外へデートに誘われては如何ですか?」
「いや、今の時期それは難しいだろう」
「では宮中内でお散歩されるとか」
「散歩か」
「普通にお茶をされるとか」
「普通に……」
「お花を贈られるのも良いかもしれません。思いを寄せる方に花を贈られるのは普通でございますよ」
「花は……そうか、贈った事はなかったな」
それから私はユリカの部屋に王宮の庭園で、その朝に咲いた花を届けるように命じた。
執務の間に彼女の部屋を訪ね、お茶をするようにもした。
ユリカはそんな私の行動に戸惑いを見せていたが、庭に誘うと少し照れながらも一緒に散歩に出てくれた。
侍女であるメアリーアンとクロ―ディアからそれとなく、ユリカの言っていたお付き合いがどういうものかを聞き出して貰った。
どうやらデートでは手を繋いだり肩を抱いて街中を歩いたりするらしい。
手を繋ぐ?子供でもあるまいしと思う。
普通は肘を軽く曲げればそこに女性が軽く手を添える物だ。
肩を抱く?
背中や腰に手を添えエスコートするものだろう。
違うのか?
するとエスコートは貴族として女性に対応するもので、それとはまた別の特別な女性にする行為だと彼女たちは言う。
そして恋人繋ぎという繋ぎ方を教わる。
私はそれを実行すべくユリカを中庭へと散歩に誘った。
肘ではなく手を差し伸べると、彼女は自然とその手に自分のを重ねて来た。
その手を私はしっかりと握り二人の体の間に下ろす。
「えっ?」
と、彼女は驚き手を離そうとしたが、そのまま私は歩き始めた。
チラリと横目でユリカ顔を伺うと、頬を染めているようだが暫くするとやさしく握り返してきた。
恥じらう姿がなんとも初々しく思え、嬉しくなった。
私は繋いだままの手から伝わって来る熱に人の手の温もりというものはこんなに心地良いものだったのかと初めて気づいた。
しかし、教わった恋人繋ぎというものをする余裕までなかったのは、私にも羞恥心的なものがあったからだと思う。
婚約発表を終えた際には、城下へ出て手を繋ぎながら散策するのも良いかもしれないと密かに考えた。
その時には指を絡める恋人繋ぎというものをしてみたいものだ。
そうして少しずつ彼女のとの距離を縮めていった。
自分から女性にアプローチをしたことが無かった私が、相手の気持ちを自分に向けようといろいろと模索している姿など誰が想像できたであろうか。
しかし、それもまた何か嬉しくも思ってしまう自分がいる。
不思議と周りの者達の生暖かい目も次第に気にならなくなってきた。
だが、ユリカはと言えば。
「ユリカ、これからはなるべく晩餐は共にしよう」
と言えば、
「そんな、忙しいのに無理しなくていいよ」
そんなそっけない返事が返って来る。
もっと自分の方に関心を持って持って貰いたい。
私は彼女の気を惹きたくてしょうがない衝動に駆られしまう。
少し時間が出来たので、久しぶりにキャンちゃんに行こうという事になった。
キャンちゃんに行く時には護衛を付けず、二人で馬で行く。
彼女には比較的大人しめの白馬を選んでみたが、どうやら相性も良いようでそつなく乗りこなしている。
これなら遠乘も行けそうだ。
「陛下は何を飲む?」
「そうだな、先日飲んだアイスコーヒーを貰おうか」
「えっ、もう冬なのに冷たいもので良いの?」
「ああ、この中は暖かいからな」
キャンちゃんの中は快適だった。
テレビという映像装置で映画というものを観る。
画面に出て来る文字は全く分からなかったが、発している言葉は不思議と理解できた。
映し出される画面の中の風景は全く別の世界で、大きな翼を持った乗り物で空を飛び、四角い乗り物で大勢の人々が移動している。
彼らの日常生活が、魔石を使わずとも快適で便利な生活を営めいていることが信じられない。
ユリカはこちらの世界が摩訶不思議というが、その言葉をそっくり返したい。
映画の中にラブシーンと呼ばれるものがあり、普通に口づけを交わし、睦み合うシーンを観て私は動揺してしまった。
この世界にも読み物として恋愛小説的な物や、色物の本も出回っており、挿絵もついていたりする。
閨教育でも図解したのがあるのだが……
映像には確かにそのものは映っていないが、流石に色付きで男女の行為が動いている画像を万人に普通に観られているとは思わかった。
やはり我々の世界とは違い過ぎると実感した。
男女の入浴シーンを平然と見ているユリカ。
隣でそわそわしていることに気付かれないように努めていた私に、彼女は気付いた様子もなく安堵したのだった。
自然とキャンの横にある露天風呂に意識がいく。
いつか二人であの風呂に入りたいものだと思ったのは言うまでもない。
その為にも…………
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