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33新しい仲間と成就

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 令嬢たちの一件の後、友梨香はシリウスの執務に呼ばれた。
 今回呼ばれたのは私にもう一人護衛を付けることになったかららしい。
「失礼します」
 と部屋に入るとあのジュノアール・オルトランが満面の笑みで友梨香に突進をしてきた。

「久しぶり、ユリカちゃん」

 オルトランは前に進み出て、ユリカの両手を取った。

「あっ、その節は髪色の事で魔石を下さりありがとうございました」

 慌てて頭を下げると「いいの、いいの」と言いながら下げた頭をヨシヨシと撫でるオルトラン。
 シリウスは苦虫を噛み潰したような表情を一瞬だけすると、ユリカの手を引き自分の方へと寄せた。

「なにそれ~。僕はユリカちゃんに挨拶してるだけじゃん」
 オルトランはシリウスの行動に呆れながらふて腐れた様に言うと、元いた場所に戻りドサッと長椅子に腰を下ろした。

「過剰な挨拶は要らん!大人しく座って置け。

 ユリカ、今日からオルトランも君の護衛に就く事になった」

「えっ、オルトランさんて。魔塔お仕事され……」

「ユリカ嬢、城内のお騒がせ令嬢たちは夜会が終わるまで謹慎処分になりましたが、ローザリー王女の事あるから護衛を増やすことになったんです」
 眉を顰めながらキャステルが付け足す。

「でも、オルトランさんは忙しいのでは?」

「ん、僕暇だから良いの」
「暇?ですか」
「うん、今度来るあの王女は大したことないけど一応魔力持ちだしね。僕がいた方が安心だよ。ていうか、ユリカちゃんのあのお風呂の傍に置いてある物に興味があるんだ」

――ああ、そうか。オルトランさんは護衛よりキャンちゃんに興味があるんだと分かった。
 陛下から聞いたのかしたら?魔術師だからそのくらいの情報は筒抜け?

「護衛に就けばそこにも連れてってもらえると思ってね。陛下に頼み込んだんだよ」

「そ、そうなんですね。じゃあ、陛下がキャンちゃんへ行くことを許可したんですね」
 友梨香が隣にいるシリウスを見上げると

「仕方がなかったのだ。こいつは一度目を付けた物を決して諦めないからな。認めなければ魔法で忍び込むとまで言われては。ユリカが一人で温泉に入っている時に忍び込まれてはそれこそ大問題になる」

――シリウス様はキャンの中身より、私のことを心配してくれていたという事なのね。
 ちょっと、嬉しいかも。

「はぁ、そういう事なら仕方ありませんね。オルトランさんよろしくお願い致します」
「えへへ、よろしくね。僕の事はジュノでいいからね。楽しみだなー。あの箱事態に魔力の気配はないのに、不思議な物を感じるんだよね。目に見えないなにかを。ねぇねぇ、すぐ行く?行きたい!」

 オルトランの頭の中にはもう護衛という言葉は消えているのだろう。キャンちゃんの事しか眼中にないようで一人テンションアゲアゲ状態だ。

「駄目だ、今日は執務で友梨香の手伝いが必要なのだ」

 シリウスの言葉に「えっ?」と、思ったキャステルだったが、意をくみ取りそれに合わせた。

「そうそう、婚約発表を含め夜会の打ち合わせをするんでしたね」

「婚約発表……」

 友梨香が戸惑うようなそぶりを見せるとシリウスが屈むように彼女の顔を退き込んできた。

「もう、多少なりとも思いが通じ合って、私のことを受け入れてくれたのであろう?」

 突然のシリウスの言葉に友梨香は戸惑う。
 そして、みんなのいる前でそんな甘い声で言わないで欲しいと真っ赤になって俯いてしまう。

「まだ、ダメなのか?」

 きゅーんと胸が締め付けられ痛いくらいだ。

「い、いえ、大丈夫……です」

「いいのだな?」

「はい……」

 シリウスが顔を綻ばせ、友梨香の身体をぎゅうっと抱きしめる。

 二人の成り行きを唖然として見ていたオルトラン。

「はぁ、キャステル。僕たち何を見せられてるワケ?」

「ふふ、いい年をしてやっと実らせた貴重な恋の成就の瞬間ですよ、ジュノ」

「えっ、そうなの?」

 オルトランが振り向くと、壁際に控えていたメアリーアンが瞳を潤ませ、ポケットからハンカチを取り出している最中だった。

「うわぁー、ナニコレ!なんか居たたまれないわー」

 オルトランの声に我に返った二人が気まずそうにお互いの体を離した。

「なんか、あれだけど。まっ、とりあえずおめでとうシリウス陛下」

「あ、ああ」

「ユリカちゃんもとんでもないのに掴まっちゃったみたいだけど、おめでとう。今日は二人の世界に嵌りそうだから諦めるよ。明日、例のところに連れて行ってね」

「あっ、はい」

 オルトランはウィンクをして執務室から出て行ってしまう。

「あいつ、護衛の仕事は!」

「まっ、いいんじゃない。護衛は王女が到着してからでさ」

 照れ隠しなのかオルトランを責めるシリウスにキャステルが宥めるように言うと、壁際からくすくすと笑うメリーアンの声が聞こえたのだった。




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