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王家、夜会開くってよ!
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「わぁ、アナスタシア奥様! お綺麗です!」
夜会用のバッチリメイクを施され、王都の最新流行のエンパイアラインのドレスに身を包んだ私を、侍女達が口々に褒めてくれる。
前回の夜会では流行を追わない王道クラシカルのドレスで攻めたので、今回のドレスは最新の流行を随所に盛り込んである。
……ダリアが。
もちろん布はハミルトンシルクを使い、色は緑だ。流行色を取り入れる案もあったが、やはりそこは譲れなかった。
メイクも担当したダリアはやり切った感で満足気だし、マリーは最終チェックに余念がない。
アイリスとデズリーは準備が整った事の報告をする為に部屋から出て行った。
今日はフェアランブル王国に籍を置く貴族にとって、一年に一回の超ビックイベント。
王家主催の夜会の日なのだ。
あれだけ色々なゴタゴタがあった後だ。
正直、『夜会開いてる場合か?』とも思うのだが、こんな時だからこそ通常通りの夜会を開き、王家が盤石だという事を国内外に知らしめたいのかもしれない。
「あら? そう言えば、旦那様が来られないわね?」
いつも、私の支度が終わる頃になるとソワソワと現れる旦那様の姿が見えない。
もしかしてまだ準備が整っていないのだろうか?
「先程、奥様の飲み物を用意する為に部屋を出た時は、廊下でソワソワしてる伯爵様をお見かけしましたよ?」
私の全身をくまなくチェックし終わり、満足気に頷いていたマリーがそう答える。
……という事は、旦那様の支度ももう出来ているはずだ。
旦那様の正装姿、早く見たいんだけどなー。
つい私もソワソワとドアの方を気にしてしまう。
「……ねぇ、ドレスやメイクが崩れる様な事はしないから、旦那様を探して来てもいい?」
おずおずと尋ねると、マリーとダリアは顔を見合わせた後、生暖かい笑顔で頷いてくれた。
領地で行われた成婚記念パレードから半年。
私と旦那様はすっかりラブラブ夫婦の地位を確立してしまった。
「よし、いいか? アナに近付く男がいたら?」
『『『即座に威嚇!!』』』
「それでも近付かれたら?」
『『『軽く電撃!!』』』
「万が一にも触れられた場合?」
『『『毛根死滅!!』』』
「よし!」
「……よし! じゃありませんよ、旦那様。うちの可愛い精霊トリオに何て事を吹き込んでるんですか」
姿を現さないと探してみれば、旦那様は中庭の片隅で3人の契約精霊とコソコソ何やら企んでいた。
ユージーン・ハミルトン。
私の愛しの旦那様で、国一番とも言われる資産家でもある名家、ハミルトン伯爵家の若き当主だ。
ちなみに美形。超美形。
未だに社交の場に出ればご夫人方やご令嬢方に熱い視線を注がれる。
……私は声を大にして言いたい。
既婚者だぞ! ちっくしょーう!!
白磁の様な肌に整った目鼻立ち。
生い茂った樹々の様に深い緑色の髪は艶やかで、髪色より明るい緑の瞳はまるでエメラルドの様に輝いている。
ただでさえ超絶美形の旦那様がさらに正装をしているのだ、そりゃあもうカッコいいに決まってる。
はぁー、私の旦那様の顔が良過ぎる。眼福眼福。
『ちょっとアナー、表情で惚気るのやめてくれる?』
『何考えてるか、手に取る様に分かるよね……』
『ひゅーひゅー! アナとユージーンひゅーひゅー!!』
…………。
いつもの様にふよふよと飛び回りながら私達を冷やかしてくるのは、私の契約精霊のフォスとクンツとカイヤだ。
精霊トリオは、半年前のパレードの時にしばらく伯爵領に滞在していたカーミラ王女殿下の契約精霊のユーフォリア(通称リアちゃん)から、契約精霊についてのイロハを学んだらしく成長が著しい。
今まで感覚的に使っていた魔法の力もしっかり意図して使える様になったそうだ。
特にカイヤは細かく魔法の力を操ったり応用するのが得意なようで、リアちゃんの得意技である『毛根死滅』の光魔法を応用して『育毛増進』という技を編み出した。
精霊の力を公にしていいなら、これは凄いビジネスになると思う。うーん、もったいない。
最近マーカスが頭のてっぺんが少し淋しくなってきたのを気にしているらしいので、こっそり技をかけてあげようかと思ったのだが、ダリアが
『あれはマーカスさんのチャームポイントです』
と言うので、どちらの意見を汲むか悩み中である。
実に平和な悩みだ。
「何もおかしな事など言っていないぞ! 本当はアナを王家主催の夜会へなど連れて行きたくないのだ。ああ、ほらこんなに可愛い! 心配するなと言う方が無理がある!!」
私を見つけるなり駆け寄って来た旦那様は、私をギュウギュウ抱きしめながらそう力説する。
相変わらず過保護だなぁ。
「もう! 旦那様、ドレスが乱れたら私がミシェルに怒られるんですよ?」
そう言って旦那様をペリッと剥がした。
名残惜しそうに手だけは意地でも離さない旦那様を、子供みたいで可愛いな、と思ってしまう辺り私も随分毒されたと思う。
私の脳内を侵略しようとしていたあの花畑の花は、どうやら毒花だった様だ。
ちなみにまだポエマーデビューはしていない。
ポエム駄目、絶対。
「あ、そうだ! フォス、クンツ、カイヤ、夜会で旦那様に近付くご令嬢やご夫人がいたら、容赦なくやっちゃっていいからね!」
『『『出たよ、似た者夫婦……』』』
夜会用のバッチリメイクを施され、王都の最新流行のエンパイアラインのドレスに身を包んだ私を、侍女達が口々に褒めてくれる。
前回の夜会では流行を追わない王道クラシカルのドレスで攻めたので、今回のドレスは最新の流行を随所に盛り込んである。
……ダリアが。
もちろん布はハミルトンシルクを使い、色は緑だ。流行色を取り入れる案もあったが、やはりそこは譲れなかった。
メイクも担当したダリアはやり切った感で満足気だし、マリーは最終チェックに余念がない。
アイリスとデズリーは準備が整った事の報告をする為に部屋から出て行った。
今日はフェアランブル王国に籍を置く貴族にとって、一年に一回の超ビックイベント。
王家主催の夜会の日なのだ。
あれだけ色々なゴタゴタがあった後だ。
正直、『夜会開いてる場合か?』とも思うのだが、こんな時だからこそ通常通りの夜会を開き、王家が盤石だという事を国内外に知らしめたいのかもしれない。
「あら? そう言えば、旦那様が来られないわね?」
いつも、私の支度が終わる頃になるとソワソワと現れる旦那様の姿が見えない。
もしかしてまだ準備が整っていないのだろうか?
「先程、奥様の飲み物を用意する為に部屋を出た時は、廊下でソワソワしてる伯爵様をお見かけしましたよ?」
私の全身をくまなくチェックし終わり、満足気に頷いていたマリーがそう答える。
……という事は、旦那様の支度ももう出来ているはずだ。
旦那様の正装姿、早く見たいんだけどなー。
つい私もソワソワとドアの方を気にしてしまう。
「……ねぇ、ドレスやメイクが崩れる様な事はしないから、旦那様を探して来てもいい?」
おずおずと尋ねると、マリーとダリアは顔を見合わせた後、生暖かい笑顔で頷いてくれた。
領地で行われた成婚記念パレードから半年。
私と旦那様はすっかりラブラブ夫婦の地位を確立してしまった。
「よし、いいか? アナに近付く男がいたら?」
『『『即座に威嚇!!』』』
「それでも近付かれたら?」
『『『軽く電撃!!』』』
「万が一にも触れられた場合?」
『『『毛根死滅!!』』』
「よし!」
「……よし! じゃありませんよ、旦那様。うちの可愛い精霊トリオに何て事を吹き込んでるんですか」
姿を現さないと探してみれば、旦那様は中庭の片隅で3人の契約精霊とコソコソ何やら企んでいた。
ユージーン・ハミルトン。
私の愛しの旦那様で、国一番とも言われる資産家でもある名家、ハミルトン伯爵家の若き当主だ。
ちなみに美形。超美形。
未だに社交の場に出ればご夫人方やご令嬢方に熱い視線を注がれる。
……私は声を大にして言いたい。
既婚者だぞ! ちっくしょーう!!
白磁の様な肌に整った目鼻立ち。
生い茂った樹々の様に深い緑色の髪は艶やかで、髪色より明るい緑の瞳はまるでエメラルドの様に輝いている。
ただでさえ超絶美形の旦那様がさらに正装をしているのだ、そりゃあもうカッコいいに決まってる。
はぁー、私の旦那様の顔が良過ぎる。眼福眼福。
『ちょっとアナー、表情で惚気るのやめてくれる?』
『何考えてるか、手に取る様に分かるよね……』
『ひゅーひゅー! アナとユージーンひゅーひゅー!!』
…………。
いつもの様にふよふよと飛び回りながら私達を冷やかしてくるのは、私の契約精霊のフォスとクンツとカイヤだ。
精霊トリオは、半年前のパレードの時にしばらく伯爵領に滞在していたカーミラ王女殿下の契約精霊のユーフォリア(通称リアちゃん)から、契約精霊についてのイロハを学んだらしく成長が著しい。
今まで感覚的に使っていた魔法の力もしっかり意図して使える様になったそうだ。
特にカイヤは細かく魔法の力を操ったり応用するのが得意なようで、リアちゃんの得意技である『毛根死滅』の光魔法を応用して『育毛増進』という技を編み出した。
精霊の力を公にしていいなら、これは凄いビジネスになると思う。うーん、もったいない。
最近マーカスが頭のてっぺんが少し淋しくなってきたのを気にしているらしいので、こっそり技をかけてあげようかと思ったのだが、ダリアが
『あれはマーカスさんのチャームポイントです』
と言うので、どちらの意見を汲むか悩み中である。
実に平和な悩みだ。
「何もおかしな事など言っていないぞ! 本当はアナを王家主催の夜会へなど連れて行きたくないのだ。ああ、ほらこんなに可愛い! 心配するなと言う方が無理がある!!」
私を見つけるなり駆け寄って来た旦那様は、私をギュウギュウ抱きしめながらそう力説する。
相変わらず過保護だなぁ。
「もう! 旦那様、ドレスが乱れたら私がミシェルに怒られるんですよ?」
そう言って旦那様をペリッと剥がした。
名残惜しそうに手だけは意地でも離さない旦那様を、子供みたいで可愛いな、と思ってしまう辺り私も随分毒されたと思う。
私の脳内を侵略しようとしていたあの花畑の花は、どうやら毒花だった様だ。
ちなみにまだポエマーデビューはしていない。
ポエム駄目、絶対。
「あ、そうだ! フォス、クンツ、カイヤ、夜会で旦那様に近付くご令嬢やご夫人がいたら、容赦なくやっちゃっていいからね!」
『『『出たよ、似た者夫婦……』』』
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